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1 ポンコツ令嬢は相談する

1 ポンコツ令嬢は相談する


「ふんぬっ。ふんぬっ」

ここは王宮。美しい庭園には不似合いな声が響いていた。

「レオナード!何やってるだ、この残念王子っ」

「マルク。何って鍛錬だが?」

「パンツ一枚で?素手で木を押すのが鍛錬か?!場所考えろ」

「気にするな。俺の家だ」

「仮にも王太子が庭園でそんな格好になるな!ここは王宮だぞ。王宮のメイドたちは未婚のレディも多いんだぞ」

「む、それもそうだな」


レオナード王太子は14歳。黒髪のブラウンの瞳で一般的な少年より少し背が高い。

レオナード王太子は弟王子に比べ、勉強も剣技も不出来であった。賢妃と言われる母、エリカ王妃の怒りをしょっちゅう買い、周りの人からはこう言われた。

 

 残念王子。



 レオナード王太子の従兄弟、マルク・シオーデン公爵令息はため息をついた。14歳のこの従兄弟はいつもこんな調子で騒ぎを起こす。レオナードより1歳上の自分はいつもその尻拭いさせられる。

 これでもオレは王位継承権3位なんですけど?

レオナードが服を着ていると、遠くから

「レオナードさまー!レオナード様どちらですのー?」

と女の子の声が聞こえてきた。

「また、あの女は前触れもなく!あれほど、前もって来る時は伝えろと言っているのに」

 マルクが怒っていてもレオナードは気にしていない様だった。

「こんな朝早く来るならそれなりに事情があるのだろう。ここだ!エリザベート」

「レオナード様!」

 金髪に縦ロールの令嬢が駆け寄ってきた。

泣き出しそうなエリザベート嬢を見て、マルクはレオナードの言う通り何か事情があったのかもしれないと思い直した。


ペシッ!


エリザベートはレオナード王太子を平手打ちした。

 マルクがあまりのことに呆気にとられた。

「レオナード様!この浮気者!男爵令嬢とやらを婚約者にするためにこのわたくしを処刑するなんて」

「はあ?」

と横で見ていたマルクは言った。

「エリザベート嬢、何不敬やらかしてるんですか!

王太子を平手打ちなど」

普通なら不敬罪で即投獄である。

「あら、マルク。いらしたの?」

「いらしたのではないですよ!」

オレは一応王位継承権ある公爵令息でエリザベートより身分は上なのに!呼び捨てされるのを許した覚えもない。

「まあ、マルク。エリザベートの話を聞こう」

良くない。オレの話も聞きやがれ。とマルクは思った。


「ーで、その預言書によるとエリザベートは婚約破棄されて処刑で国が乱れて俺も処刑。そのあと時間が舞い戻りエリザベートがオレを王宮から追放するだと?」

「よくエリザベート嬢の話を聞いてそこまでまとめられましたね。オレにはさっぱり意味が分かりませんでしたよ」

「俺もどこかでその話を聞いたことある気がするのだ」

「レオナード様も!ではこの本は預言書で間違いないのですわ」

「いやいや、そうと決まったわけではないと思いますよ。エリザベート嬢」

「だって、マルク。この本に出てくる公爵令嬢はわたくしそっくりなんですもの」

「いやいやいや、ただの偶然では。その本をお貸しください」

 マルクはエリザベートから借りた本をレオナードと一緒に見る。

 

「…エリザベートそっくりだな。」

「本当ですね、レオナード」

「いやぁー!やっぱりそうなんですのね。わたくしどうしたらいいんですの?婚約破棄なんていやですわ!処刑なんてまっぴらよ」

 マルクは思った。また面倒くさいことを持ってきた。

 いや、しかし待てよ。これは使えるかもしれない。

どうせ今流行りの恋愛小説をエリザベートが真に受けただけである。

「エリザベート嬢。婚約破棄はいつされるんですか。」

「18歳の卒業パーティーですわ」

「エリザベート嬢もレオナードもまだ14歳。それなら今からエリザベート嬢は悪役令嬢と言われるようなことをやめて完璧な淑女になればいい。そして王太子妃として支持を得られるようなことをすればいいので」

「ふーむ、なるほどですわ。この預言書でも二度目の人生では心を入れ替えてそのように行動してましたわ」

「レオナード。お前もだ。」

「俺?」

「国が乱れるよう良い王太子をめざし、浮気も婚約破棄もしなければこの本のように破滅することはない。」

「俺は浮気などしてないぞ」

 く・う・き 読め。この残念王子。

マルコはレオナードに目で訴えた。

 レオナードも、と言うのは口実だ。

 オレはわがまま放題のエリザベート嬢がこれを機に、少しでもマシになって欲しいんだよ。

 評判の良くないエリザベート公爵令嬢だが、それでも王太子婚約者でいられるのは身分が釣り合い年齢の合う他の令嬢がいないからだ。

 他の公爵家には令嬢はいない。侯爵家は何人か令嬢がいるが通常なら公爵家のエリザベートを差し置いて婚約者にするわけにはいかないのである。通常なら。

 しかし、このままではあまりの評判悪さにエリザベート嬢が王太子の婚約者には不適切とされかねない。国を1番に考える王妃ならやりかねない。

 その場合、どこかの令嬢が公爵家へ養子となり嫁ぐことになるが、エリザベート嬢が預言書などと言っている本にあるように処刑されることなどはない。公爵家の面目を保つため、エリザベートには身分のふさわしい別の婚約者があてがわれるだけである。

 問題はその別の婚約者は誰か。王位継承順にエリザベートの婚約者が選ばれるとしたら次は第二王子のパルティだ。それならいい。だがもしパルティが断ったら。次の王位継承権は誰だ?

 このオレだ!

王族のパルティは断ることができても、公爵家のオレは王命を断れない。

 エリザベート嬢と結婚なんてしたくない。そんなことになればうちの公爵家破産没落しかねない。それなら修道院に入って修道僧になった方がましだ!

 よし決めた。エリザベート嬢更生計画だ。

 オレの平穏な人生のために。

「私はエリザベート嬢に全面協力します。このままでは国が乱れるとなれば、公爵家跡取りとして何もせずにはいられないのです。これを機に立派な王太子妃を目指しましょう、エリザベート嬢」

キリッと公爵令息らしくマルコは言った。

「マルコはわたくしと婚約したくないから協力するんですのね。でも、わたくしが王太子妃相応しくなればというのは案としてはまあまあいいので採用ですわ」

 なんで普段ポンコツ令嬢なのにそこは鋭いんだよ。

「いや、そういうことではないですよ。私はシオーデン家の跡取りとして」

「エリザベートの言う通りだ。マルコではエリザベートを持て余すからな。でもエリザベートが王太子妃として認められるのは必要だからマルコの案に賛成だ」

オレのフォローしろよ、レオナード。まさかお前まで預言の書だと信じちゃってんの?

「では、わたくし目指しますわ。王太子妃として相応しい素晴らしい淑女を。そしてニホンの知識を使ってちーとをかまし、各地で支持を得るんですわ」

「ちーととは何か分からないが、良い心意気だ。エリザベート。」

「それで何からするんですか?エリザベート嬢」

「海にレモンかライムをもっていけば良いらしいですわ」


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