第三話
体調不良のためお休みしておりました。
明日次話投稿予定です。
それから、少しクラスを見ていて彼女の事がわかってきた。
藤原友香。
僕に話しかけてくる彼女は、思った通りクラスの人気者。
男女ともに人気があり、裏表がない感じ。
活発で、いつも大声で笑っている。
とても上品な笑い方とはいえないが、彼女が笑っているとなぜかつられてしまうような笑い方。
人当たりが良く、どんなタイプでも仲良くなってしまうような嫌味がない人。
清楚で落ち着いた感じの見た目なのに、気取ってなくてさっぱりとした感じ。
学年総会などがあると、周りの男子がチラチラと横目に彼女を見たりなんかしている。
身長も少し高め。
ですらっとして、何より仕草・姿勢が綺麗だった。
同級生ではなく、少し大人な雰囲気があるが、話すと同い年なんだなと納得するような。
プラスなのかマイナスなのかは分からないギャップがある。
そして、隣の席の加藤大地。
クラスのムードメーカーでスポーツ万能。
少し勉強が苦手みたいだが、先生からも好かれる人気者。
あれから僕にも都度声をかけてくれる。
部活は空手部。
詳しくは知らないが、かなりの腕前らしい。
ゲームが好きみたいで、時々学校にゲーム機を持ってくる。
いつも先生に見つかりそうになり、ヒヤヒヤしている。
他のクラスの女子からも人気があり、休憩時間など度々女子が尋ねてくる。
男子からも冷やかされるが、頬を赤くし素直に恥ずかしがる。
藤原と一緒で嫌味がない人。
そして、そんな2人はクラスだけでなく学年でも人気が高い。
そんな2人が僕にちょくちょく声をかけてくる。
知れば知るほど不思議でたまらなかったが、人気者の2人が普通に接してくれているからか、他の生徒から陰口を言われたりは、今のところされていはい。
だが、相変わらず2人以外と話すことは一切ない。
というのも、2人にも僕から話しかける事はない。
高校に入学して2週間が過ぎた。
中学のように影で何かを言われることも、男子から囲まれることもない平穏な日々だが、もちろん友人はいない。
「今日は学級委員とか色々決めるぞー」
とホームルームで言う先生。
担任は男性で35歳。
名前は佐藤祐介。
身長は恐らく180cm前後くらいだろうか。
バスケ部顧問。
ベビーフェイスのため女子生徒からの人気が高い。
「沖田は部活とか入らねーの?」
隣の席の加藤が声をかけてきた。
「…入らないかな」
実は小学生まで剣道をしていた。
母親が "武道精神を持ってほしい" と、小学2年生の時に始めた。
剣道は好きだった。
あの防具についた汗の独特な匂いが割と好きだった。
そして何より、面で少し視界が狭くなり相手だけを集中して見ることができるあの感覚が好きだった。
それも中学と同時にやめてしまった。
今思うと唯一熱中してやれた事かもしれない。
「中学とかも何も入ってなかったん?」
加藤から初めて昔の事を聞かれたなと思った。
「…中学は何も」
「小学校は?」
「…小学校は剣道してた」
「へー!剣道!俺今空手部なんだけど剣道場隣!
やらないの?」
「…やらないよ」
そもそもブランクあるし、
部活動は中学でもやっていた人達がそのまま入部する事が多い。
中学の時、県大会などで顔見知りだったり、中学エピソードなどがあるだろう。
そんなコミュニティができあがってる中に入りづらい。
「そっかー、まぁ中学やってなかったら少し入りづらいよなぁ」
意外だと思った。
加藤なら"ノリとテンションでいけるでしょ!"というタイプかと思った。
「…意外だね」
「え?」
また思った事をすぐに言ってしまったと思った。
「いやっノリでいけそうって思うかと思って…」
しまったと思った。
中学の時も、思った事をすぐ口にしてしまう事で最初やらかしたからだ。
「そお?俺結構意外と周り見て動くタイプだからな?」
そう言いながら彼はニカッと笑った。
そしてなんともなさそうに話しを続けた。
「だったら沖田さ、小説好きだし図書委員とかは?」
部活じゃなくて委員会。
それはアリだと思った。
今思うと、僕に色々と関わりを作ってくれていたのは、この時から加藤だったなと思う。
まず学級委員きめるぞー」
佐藤先生がそう言いながら教室に入ってきた。
朝のホームルームで言っていた委員決めだ。
「学級委員も他の委員会も男女1人ずつ決めてもらう。
まず学級委員決めて、早速学級委員に司会してもらって、他の委員決めするからな。
じゃー、やりたい人!立候補まずいる?」
バスケ部の顧問なだけあって、硬い感じでなくラフな雰囲気が佐藤先生のいいところだ。
畏まった雰囲気を出すと立候補は出づらいからだろう。
ザワザワとする教室内。
みんな前後左右の生徒と顔を見合わせ、"委員何かする?""けど部活もあるしなー"等と話している。
必然的にこういった委員は帰宅部に振り分けられやすい。
だが委員をすると内申点にも繋がる。
部活生は頭を悩ませるところだろう。
「はい!加藤がいいと思います!」
手を挙げながらそう言ったのは、サッカー部の小林翔太。
部活は違えど加藤と仲が良いイメージ。
授業にも積極的で万人と仲良い印象。
さすが団体競技をしているだけあるなと思う。
「俺!?翔太おまえやれよ!」
そう小林に言う加藤。
「加藤が適任だって!俺推薦しますー!」
「俺それだったら体育委員がいい!」
そのやり取りをわちゃわちゃと楽しそうにクラス全員が聞いている。
やはり加藤が会話に入るとクラス全員がまとまっているような雰囲気がする。
小林が言うように適任だろう。
その会話を聞いていた佐藤先生が、
「他に立候補とかいなかったら加藤にやってもらうけど、誰かいるー?」
と言った。
この雰囲気から立候補する人はなかなかいないだろう。
「じゃあ他にいなかったら加藤にお願いしようかな!
加藤いいか?」
「まじっすかー…他いないならじゃあやります」
加藤はそう言いながらも顔は"まじかよー"といった表情をしていた。
僕はその顔を見て少し面白くなり、口角が上がった。
「じゃあ男子は決定で、女子誰か立候補いる?
推薦でもいいけど」
と言う佐藤先生。
「男子が加藤くんなら女子は友香がいいんじゃない?」
と1人の女子が言った。
"たしかに!"と数人が同調した。
「私!?やりたい人いなかったらいいよ!
私部活も入ってないし」
と案外すんなりと了承した藤原。
たしかに適任だなと僕でさえ思った。
「立候補ほかいる?
いなかったら藤原にお願いしようかな!
よかったーすんなり決まって!ありがたい!
じゃあ早速、加藤と藤原、他の委員決めよろしく頼むー」
と、佐藤先生が言った。
たしかに、学級委員決めが普通だと1番時間がかかるだろう。
特に何もなくすんなりと決まったのは、やはりこの2人がいるのが大きいだろう。
その後の委員決めは更に早く決まっていった。