第二話
次話は、10/8夜投稿予定です。
次の日。
ギリギリに登校してきた僕に、隣の席の男子生徒が声をかけてきた。
「おはよっ」
「・・・おはよう」
びっくりして、少し戸惑ってしまった。
「なぁなぁ、昨日藤原に声かけられてただろ?
知り合い?」
藤原?
誰のことかと思ったが、昨日僕に声をかけてきた生徒は1人しかいない。
彼女は藤原というのか。
「・・・いや」
「へー!かわいいよな〜藤原」
そう言いながら隣の男子生徒は、彼女を見ながらずっと何か話している。
やはり男子生徒にモテるタイプか。
「俺、加藤大地!お前は?」
「・・・沖田優希」
「沖田ね!よろしくな!」
そういって彼はニカッと笑った。
とても人懐っこい雰囲気の彼の第一印象は、とても良い人そう。
そして印象通り、クラスのムードメーカーのような存在だった。
まさか2日連続で声をかけられると思っていなかった僕は、中学とは何か違うと直感的に思った。
中学では素っ気ないというだけで毛嫌いされてきたし、暗いというだけで影口を叩かれた。
僕に話しかけようなんて人はいなかった。
けど、まだ2日しか経っていないが、素っ気ない態度でも毛嫌いされないし、むしろよろしくとまで言われた。
なんでもない事のようだが、僕にとっては天と地の差といってもおかしくないくらいだった。
もしかしたら、高校は少し変われるかもしれない。
違うかもしれない。
そんな期待が少しだけ湧いてきた。
単純かもしれないが、それぐらい僕にとって
"話しかけられる" ということは、とても大きな変化だった。
けれど、中学3年間のブランクはでかく、僕はまだそんなに積極的にはなれず、マイナスな考えばかりが頭を駆け抜けていた。
「おはよう!」
1限が始まる前に彼女が声をかけてきた。
クラスの視線が微かに集まったのがわかった。
なかなか返事を言わない僕に、彼女の頭の上にはてなマークが浮かんでいるのがわかった。
「・・・おはよう」
視線がある中で、僕の必死の返事だった。
彼女は微かに聞こえたみたいで、びっくりした顔をしてすぐに笑顔になった。
「今日は何の本?
昨日のつづき?」
そう言いながら、僕の前の席に座ってきた。
「・・・いや、昨日のは読み終わったから」
「え!昨日の全部!?」
「いや、昨日は2冊だけ」
「2冊だけ!?
本当にすごいね!家とかいっぱい本置いてそうだよね」
そう言いながら彼女は僕の別の本をペラペラとめくっていた。
彼女があまりにも驚いたように言うもんだから、他のクラスメイトも「何だ?」と言うような顔をしていた。
少し高校に対して期待が出てきたとはいえ、急にこんなに視線をむけられるのは僕にはきつすぎる。
そう思っていると、予鈴が鳴り先生が来た。
彼女は自分の席へ戻って行った。
やっぱり彼女からは昨日と同じ香りがした。
ふんわりとした上品な甘い香り。
自分でも変態かと思ったが、僕はあの香りが好きだと思った。