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第5話






■side:京都府立田神(たがみ)高校 1年 藤崎(ふじさき) 美潮(みしお)






「よいしょっと」


 私はデータの整理を終えて椅子にもたれかかる。


「いや~、ごめんね。こんなことまでさせちゃって」


「い、いえ!私が好きでやってることなんで」


 私の隣から声をかけてきたのは吉田(よしだ) (はるか)先輩。

 いつも笑顔が素敵な先輩だ。


「私達もそういうことが出来れば良かったのだけど」


 そう言いながら紅茶を持ってきてくれたのは(いずみ) 那奈(なな)先輩。

 長く綺麗な髪の先輩である。


 私がしていたのは京都府内にある各学校のBattle Dolls情報をまとめた資料の作成だ。

 先輩2人はそういうことが苦手らしく、私が全て行っていた。

 でも全然苦ではない。

 むしろ2人の役に立てて嬉しい限りだ。


 早速先輩2人は私が作った資料を読みだした。

 それをチラリと見ながら入れて貰った紅茶を飲む。


 ―――3人で集まる。 


 これが何より私にとってはかけがえのない時間。

 3人だけのBattle Dolls部。

 でもこれが私の幸せ。


「しっかし今年は無理かと思ったけど美潮が入部してくれてよかった」


「そうね。おかげで今年も何とかエントリーできるのだから」


「お、お二人のお役に立てて良かったです」


 Battle Dollsの大会は基本的にレギュラー3人、補欠2人の計5人エントリーだ。

 しかし補欠は登録せずとも良い。

 あくまで病気やケガなど何かしらによって出場出来ない場合の補欠であるからだ。

 もし登録せずレギュラーが何かしらで出場出来なければ不戦敗となるだけなので、登録しないというのはデメリットでしかない。

 だが私達のような所では非常にありがたいと言える。


 ふと何気なく3人で部室の壁に飾られた大きな紙を見る。


 『目標:全国大会出場』


 遥先輩と那奈先輩。

 そして2人の先輩達が目指してきた目標。

 だけど1度も叶うことが無かったもの。


 先輩達は今年3年生。

 挑めるのは最後になる。

 しかし部員不足という壁によって諦めかけていた所に私が入った。


「今年こそは……」


 ふと誰かが口にした言葉だったが、それこそが私達の目標。

 私がどうしても2人の先輩達に叶えて貰いたい願い。


 ―――私は、学校に馴染めなかった。

 教室の隅で本を読んでいるような私には、新しい環境で新しい友達を作れる技量などない。

 必然的に一人でポツンと居るだけになった。


「いつものこと」


 昔から友達が居ない人生だった私にとっては当たり前すぎて特に気にしなかった。

 だけど今回だけは違った。


 何が気に入らないのかクラスメイト達からのイジメに遭ってしまう。

 最初は下らないことばかりだった。

 物を隠す、無視をするなど。

 それでも私の態度が変化しないと見ると今度は露骨な攻撃を仕掛けてきた。

 周囲は笑ってそれを見ているだけ。

 教師も気づいていながら見て見ぬ振り。

 正直、どうして私だけがこんな目に遭わなきゃならないのか。

 何度もそう思った。

 そしてそう思いながらも抗えない自分が惨めだった。


 そんな時だった。

 いつものイジメを偶然見た先輩達が私を助けてくれたのだ。

 しかも色々と私のために動いてくれたおかげでイジメも無くなった。

 どうして他人である私のために?

 そう思ってお礼と共に聞いてみた。

 すると


「困っている人を助けたい。……それだけじゃダメかな?」


 笑顔でそう言う2人に私は救われた。

 だから2人が部員で困っていると聞いてスグに手をあげた。

 今度は私の番。

 そう思って必死にBattle Dollsのことについて勉強した。

 貯めていたお年玉で機体を買って必死に練習もした。


「……必ず、2人を全国へ」


 それが私が出来る……2人に対してのお返しだから。






■side:京都私立華聖女学院高等学校 1年 早乙女 可理菜






「あら、ありがとう」


 私は家で資料を作成した相手へ感謝のメールを送ると、さっそく中身を確認する。

 そこには京都府内の各学校のBattle Dolls部に関する情報と要注意選手に関してのデータが入っていた。

 それを見ながら紅茶を飲む。


 我が華聖女学院は歴史と伝統ある学校だ。

 まあ昔のような情操教育に重きを置いた淑女の学び舎という訳ではないが、それなりの人間が通う学校ではある。

 それが良いのか悪いのかで言えば……微妙な所でしょう。

 こうして少子化の波に呑まれかけているのだから。


 どうもお父様は消極的な現状維持の方針がお好きなようだけど、だからこそ各種関連グループ企業の数字も思わしくない。

 正直、学園事業に関しては撤退も視野に入っているぐらいに。

 だからこそ私がこうして口を出せている訳でもある。

 ここでしっかりとした結果を残せば流石に私の話を聞き流すことは難しくなるでしょう。

 Battle Dollsは、そのための手段の1つ。

 でも今後を考えればこちらの事業にもっと積極的に参入することも考えなければならないかも。

 やはり聞くのと触れるのでは違うわ。

 間違いなくBattle Dolls事業は伸びる分野。

 となるとBattle Dollsで選手として結果を出すのも悪くはない。


「やりたいことが多すぎて困ってしまうわ」


 苦笑しながらそう言うと私は資料を片付ける。


「……とりあえず前回京都府大会を優勝した所以外は、警戒すべき相手は居ませんわね」


 これならば予定通り全国大会に出てそれなりに目立っておけば、来年度に繋ぐのは余裕でしょう。






*誤字脱字などありましたら感想もしくは修正機能などからご指摘頂けると幸いです。


*お知らせ

活動報告にて近況報告とBattle Dollsに関しての設定修正話を記載しておきます。

興味のある方は、ご確認下さい。

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