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第1話 最高幹部は速やかに土下座する

 『我の味方になれば世界の半分をくれてやろう』

 初代魔王は全てを支配しようとした。


 『全てを滅ぼす。故に殺す』

 2代目の魔王は全てを破壊しようとした。


 『_______、____。』

 3代目の魔王は全てを無に帰そうとした。


 『やっぱり、こんな世界間違ってるんだ』

 4代目の魔王は全てを正そうとした。


 そして5代目の魔王である自分。

 『……魔王やめたい』

 何も、していないのである。




 硬い玉座に座りなおし、風さえ凌げぬ天井を仰ぐ。

 「……空がきれいだ」

 現実逃避。元々ボロボロだった魔王城は先日の嵐により倒壊寸前であった。この廃墟……いや魔王城が崩れ落ちるのも時間の問題か。



 ――――第4次神魔大戦。

 要するに勇者と魔王の最終決戦の時。

 魔王は全ての魔族を総動員した魔王軍を結成し、勇者との戦いに赴いた。結論から言うと、魔王及び魔王軍は文字通り、為す術なく()()()()。勇者は個として間違いなく『最強』であったのだ。


 魔王様は「魔王城に何かあってはならない」として、当時の最高幹部だった俺に魔王城での待機を命じた。そのおかげで運良く生き残った俺は、今こうして魔王城で暮らしている。


 いや、『暮らしていた。』が正しいか。




「俺は今日で魔王城を出ていくからなァァァ!」





 さて、第4次神魔大戦が終結し20年が経った。

 手は尽くしたとはいえ、城の周りには雑草が生い茂り、野生の獣が好き勝手に住み着いている。そのうえ壁や天井は穴だらけ、折れた柱がいくつも転がっている。


 俺は俗世に飢えていた。

 雑草やザリガニではなく美味しい肉が食べたい。こんな風通しの良い場所で眠れるか。

 俺は一目散に人間の街に走り出した。


 もう無茶苦茶になって走った。今まで抑えてきたものが汗となり吹き出てくる。

 俺、人間の街に着いたら美味いものをいっぱい食べるんだ……!


「そこの者、止まれ」


 関所に差し掛かろうとした所で気がついた。兵士に槍を向けられ、囲まれているのだ。

 

「貴様、20年前に逃亡した魔王だろう。我らが聖国に単騎で攻めてくるとは余程、死にたいらしい」

 兵士の中でも一回り大きな男は呆れたように言った。


 いつの間にか俺が魔王だという間違った情報が広まっているらしいが、そんなことよりも重要なことがある。彼が言葉を続ける前に、俺は全力で叫ぶ。



「人間、俺は降伏する!」



 同時に華麗なる土下座を決める。前魔王様も見惚れた素晴らしき土下座だ。


 彼が出した結論は、

「断る。斬首せよ」


 俺の願いは届かなかった。

しかし俺はこんなところで死ぬわけにはいかない。

 覚えておけよ人間。

 待っていろよ食事。


 そうして俺は魔王城へと逃げ帰るのだった。

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