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一日目ーーー⑤

「……そろそろ、朝凪さんの出番」


 目の前に積まれている人という名のゴミ山を眺め時間を確認する。


 人数が多すぎてひとつのプログラムが終わるだけ二時間もかかってしまうため、午前午後合わせて四つの種目しか一日できない。


「………出番までに間に合うといいが」


 と、祐樹がポツリと言葉を落とした瞬間、インカムから通信を知らせる音が聞こえると同時に、椿の校章がホログラムで浮かぶ。


「こんにちは、祐樹くん」


「高柳学園長」


 椿原学園学園長の高柳正吾郎が、ホログラムで現れた。よくよく隣を見れば、瑠璃学園長の美冴の姿も見えた。


「如何致しましたか?」


「なに、君の手伝いをしようと思ってね」


 と、正吾郎が言うと、祐樹の手元にひとつのデータが送られ、それを開くと、正吾郎のホログラムの隣にもう1つのホログラムが現れる。


「これはーーー先程の人工アビスですか?」


「あぁ、我々椿原が製造した、人工アビスなんだが、実は元々、今日の君の手助けをするために作ったものなんだ」


「…………はい?」


 祐樹の口から素っ頓狂な声が出て、脳内に先程シャカシャカと高速で腕が動いていた光景が祐樹の頭の中に浮かぶ。


「………いやいやいやいや、流石にあれをヒロインではない人間に対してやるのは……」


「安心したまえーーーーやったのはアビスだから、我々には何も関係はないし……アビス発生区域に入ってきた向こうが悪いと、こちらは堂々と言い返せるのだからな」


 と、正吾郎がホログラム越しにあくどい顔をしていたのを見て、流石に祐樹も引いた。


「現在、こちらの人工アビスの手持ちは16機。それぞれ16の方向に一体ずつ放ち、侵入者の迎撃。魔力の反応がない人型生命体だけを攻撃するように今プログラムを弄ってあるから……そうだな、後30分は頑張ってくれないか?」


「……………了解です」


「うむ、では後ほどな」


 と、言葉を交わし終わると、正吾郎のホログラムは消え、残ったのは人工アビスのデータのみ。


「……………うへぇ」


 ーーーなんだこれ?スピードのパラメータがありえないほど尖ってて、それに加えて攻撃も防御も申し分ない……!?


 天然アビスに換算すると、軽く危険度はAを超える位のヤバい人工アビスだった。


 ーーー……あー、うん。おつかれ!


 そして祐樹は、これからまだまだ侵入してくるであろう侵入者に向けて合掌したのであった。


 別に、祐樹にとって侵入者が死のうが死なないがどうだっていい。彼が心配したことは、侵入者が死ぬことによってくるヒロインや学園への被害を心配したことで、侵入者がどうなろうがどうだっていいのだ。


 彼が大事にしているのは、周りだけなのだから。


「……とりあえず三十分か」


 よし、と祐樹はひとつ気合いを入れると、無人機のカメラに写った侵入者を排除するために、ジャガーノートを持ち直した。





「す、少し緊張してきました……」


「大丈夫ですよ、菜々さん。私も一緒の種目ですから、落ち着いた行きましょう」


「私も一緒ですわ。頑張って一着を目指しましょうね」


 第二種目、ゲッティングドローンという、またまた椿原が作りあげた無人機のドローンを使い、誰が一番早く捕まえることができるのかという種目である。


 一人一つ、目標となっているドローンを目標にして空を飛ぶため、別名にフェアリーダンスなんてつけられているとか居ないとか。


 注意点として、別のドローンを捕まえたら失格、邪魔するのもありだが、あまり悪質なものはなしというのがある。進路妨害とかは大丈夫だが、一人のヒロインを狙ったり、叩き落としたりは無しだ。


「それに、お師匠様も来てませんし……はぁ」


 そして、もうすぐ二種目目が始まるのだが未だに祐樹の姿はなく、なって菜々は出番までには見に行くという言葉を信じて待っていたため、モチベーションがびっくりするくらい下がっている。


「まぁ、仕方ありませんもの。あの人は色々とお忙しーーーあれなんですの?」


 アンナの視界の端に何かが映ったと思い、そちらに視線を向けると、先程の第一種目で使われた人工アビスが16体と、椿原学園生と思われるヒロインが少しと、その学園長である正吾郎の姿。当然、学園長がいるので周囲の視線はそちらに固定されるわけで、皆が注目していた。


「あれって、先程第一種目で使われてた人工アビスですよね?なぜあそこに……」


 先程、たくさんのヒロインに猛威を奮った人工アビス。見ていた一部のヒロインは少し震えていた。


 そして、その一団の中に近づいていく人物が一人。瑠璃学園の制服を男版にした制服で、黒髪黒目の少年ーーーー


「あら」


「まぁ」


「お師匠様!?」


 当然祐樹のことである。


「……ん?」


 自身の弟子の声が聞こえたような気がしたので、そちらの方へ目を向けると、アンナ、椎菜、菜々の三人と目が合った。


 ーーーどうやら、約束は果たせそうだったな。良かった良かった。


 ホッのしながら正吾郎の元へ向かう祐樹。その際、後ろに並んでいる人工アビスを見て多少引いたのはご愛嬌だ。


「ご苦労だったな。後は任せなさい」


「そうですね……はい、俺からは何も言いません。とりあえずやりすぎないようにと言っておきます……」

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