一日目ーーー②
「一名様ごあんなーい」
やけにテンションの高い空羽に連れていかれた祐樹。既に抵抗は諦めたが、せめてもの抵抗に全身の力を抜いているが、きっちり生徒会長ズに引っ張られているので、あんまり意味はなかった。
やってきたのは、生徒会長に与えられたテント。祐樹が足を踏み入れた瞬間、一斉に視線が集中した。
ーーーあっ。
その中には、当然知っている顔もあった。
「久しぶりですね、祐樹さん。そうやって美人三人に抱きつかれて、とてもいいご身分ですね」
「お久しぶりです高槻先輩。一つ言い訳するならば、自分から望んた結果ではないということだけは言っておきます」
高槻美波。エル・ドラドの中で唯一祐樹嫌いが多い『青野学園』にて、トップギルドのカンパネラのギルドリーダーをやっているともにーーー
「生徒会長だったんですね」
青野学園を代表する生徒会長でもあった。
よくよく見ると、しばらく前にあった学園会議にて、護衛としていたヒロイン達がいるのも確認した。
「それで、俺に会いたい人ってのはーーー」
「もちろん!私たちのことだよ!久しぶりだね!祐樹くん!」
と、美波の後ろから物凄い勢いで突っ込んできて、空羽達が抱きついてるのにも関わらず、空いている前から思いっきり抱きついたのは、雛罌粟学院生徒会長の国崎若菜。アビス大侵攻にて、一緒に作戦を遂行した聖百合花のトップギルド、『セクメト』のあの特徴的な語尾が印象的なギルドリーダー、国崎樹莉の姉である。
「ちょっ、国崎先輩なにしてーーーく、くるし………」
美人四人に囲まれてうらやまけしからん状態なのだが、樹莉の腕が思いっきり祐樹の首を絞めているため、呼吸困難に陥る。しかし、樹莉は祐樹に会えたことが嬉しいため、気づいていない。
「ちょ!まじ、ほんとーーーーー!!」
「………あれが噂の男のヒロイン……なんだあれ、ただのモテ男じゃねぇか。爆ぜればいいのに」
と、現在不法侵入中で、とある組織に所属している男が、双眼鏡を使い、調査対象である祐樹を見て舌打ちを鳴らした。
「あんな美少女四人に抱き囲まれてるなんて……正直アビスとかいうバケモンと戦う人の皮を被ったバケモンでも羨ましいと思うのは何故だろうな」
と、となりで同じく双眼鏡を覗いている男が言った。
彼らはヒロインーーーー特に、祐樹のデータを送るように上から知らされている。そのデータがなんの役に立つのかは知らないが、とりあえず監視と調査をしろとの命令だ。
「はーあ。なーにが悲しくてこの三日間男なんざ見なきゃーーーーっ!!」
「?どうした?」
双眼鏡を持つ手が震える。隣の男の異変に気づいた男は、その様子を見てぎょっとした。、
「お、おい、どうした?」
「目が合った………」
「は?」
「間違いねぇ……俺は今、あの男が目がーーーーぐわっ!?」
次の瞬間、パリン!と持っていた双眼鏡のレンズ部分が割れ、何かが男の目に激突した。
「目が……目が見えねぇっ!?」
「おい!だいじょうーーーーがはっ!?」
そして、それを見て心配した男も頭に何かがぶつかるような気がして、すぐさま意識がブラックアウトした。
犯人は当然ーーーーー
「………命中したな」
祐樹である。
ーーー全く、こんな同等と覗きね……標的は俺か?
四人に抱き疲れていたのを、少々荒っぽいが力技で抜け出した後、そこら辺に落ちていた小石を拾って全力投石。
「………はぁ、やっぱり今すぐ動くしかないか」
できるならな、情報が送られる前に全てぶっ壊しておきたい祐樹、インカムに手をやり、魔力を流すと、連動している無人機達のカメラが捉えている映像が祐樹の視界に映る。
「行くのね」
「すいません一宮先輩。俺、やっぱどうしても我慢できないんで」
「そう……なら約束よ。早めに終わらせて応援に来ること。いい?」
「善処します」
と言って、祐樹は自身のジャガーノートが保管されてある区域に走り始め、無人機を動かし始めた。




