過去ーーー①
データベース(設定のこと)更新しました。宜しければ除いて下さい
急遽、七人で即席のギルドを組んだ祐樹達七人。新人ヒロインである菜々は現在、アビスを創作しながら、唯一の上級生であるアデルに色々と瑠璃学園について教わっていた。
「あの、さっきギルドって単語が出てたんですけど、ギルドってなんですか?」
「ギルドは六人以上、十二人以下のヒロインで組むチーム。普段は名前とか付けて固定のメンバーで組むけど、私達みたいなフリーのヒロインが即席で組むことも多い。覚えておいて損は無い」
アデルは、表情には出てないがなんとなく優しい目付きから、菜々のことを気に入ってんのかなと察する祐樹。
アビス捜索の任を受けて既に一時間が経過していた。休憩を兼ねて崩れていた切り株の上に腰を下ろした。
「……そういえばなんですけど、祐樹さんってここに来た頃はどういう扱いを受けてたんですか?」
「…………え?」
急に話を振られ、思わず水を飲む手が止まる祐樹。直ぐに顎に手を当てて考え始める。
「あー……どんな感じだったっけ?」
「んー……一部例外を除いて厄介者扱い?」
「もしくは嫌悪かーーー」
「陰湿ないじめですわね……」
「あの時のことは黒歴史なんですわ!あまり思い出させないでください!」
上から梨々花、椎菜、アンナ、カタリナの順で、あの時のことは本当に黒歴史なのか、頭を抱えて蹲っていた。
当時、13歳でこの瑠璃学園へ強制的に入学させられて当初はそれはもう酷いものだった。女の花園の中に、異物が一人。本当に一部例外を除き、同級生や上級生からは歩くだけで嫌悪の視線を向けられ、陰口なんて当たり前。ものが無くなるなんて当たり前の時代だった。
「それに、当時の祐樹くんがやばい雰囲気出していたのもあれだったよね。拍車がかかったというか………」
「あぁ……流石のあれには私もドン引きでしたわ」
その一部例外にあたる梨々花とアンナが、とある事件のことを思い出して頭を抱えた。
「……えっと、何があったんですか?」
「聞いてよ!菜々ちゃん!祐樹くんって、当時はめちゃくちゃ死にたくって上級生のヒロインに片っ端から喧嘩ふっかけてたんだよ!」
「…………えぇ!?」
驚き、大声を出した。直ぐに祐樹も、あれかぁ……的な雰囲気を出して目を遠くした。
「そ、それってどういう!?あと、死にたくってってなんですか!?」
「祐樹は、アビスに寄生されている」
隣にいたアデルがポツリと呟く。
「それが、祐樹が当時最も嫌われていた理由」
アデルは途中編入なのだが、その事だけは知っていた。
五年前に起きた、練馬区崩壊事件。
当時11歳だった祐樹は、逃げる人々に押され、倒れ、逃げ遅れた。その時だった。祐樹の目の前に、機械型のアビスが降り立ち、一瞬にして祐樹の胸を腕が貫き、その命は散らしたーーーはずだった。
『………っ、げほっ!?ごほっ!?……うぷ……』
しかし、練馬区にやって来ていたヒロインに討伐されそうになり、消滅寸前だったアビスの隠れ蓑とされてしまい、寄生され、その息を吹き返した。
普通ならば、アビスに寄生されたのなら、人間なら人型のアビスとなって、猛威を振るうようになるのだが、祐樹だけは違った。
その体に住み着いたアビスを御し、完全に支配下に置くことに成功したーーーいや、してしまったのだ。
アビスに寄生されていることはすぐに分かり、練馬区に来ていたヒロインに保護された祐樹は、瑠璃学園の監視下のもと、生活といつ殺せるような環境に置かれたまま、二年の時が経過し、ジャガーノートにも適合してしまったので、瑠璃学園に入学させられてしまったのだ。
アビスに寄生され、祐樹が手に入れた能力は二つ。アビスの出現による感知能力と、体の好きな部位を変化させられるアビス特有の能力。
しかし、実際戦場に出てもアビスには優先的に狙われるし、ヒロイン達にはそもそも人間として見られない。
アビスでも人間でもない、ただの化け物。故に、祐樹は常に自分を殺してくれるヒロインを探している。
一度、わざとアビスに胸を貫かれたこともあったが、致命傷の一撃でも、祐樹は息を吹き返してしまった。
今ではだいぶ収まっているーーーというより、瑠璃学園では祐樹を殺せるヒロインがいないので諦めたと言った風が正しいのだろうか。
「でも、話しかけると意外と面倒見がいいし」
「普通にお優しいですし」
「嫌う要素なんてどこにもなかったんですわ………カタリナ様、なんであんなに嫌っていたんですの?」
「だから黒歴史なんですの!」
クワッ!と少し涙目でカタリナが声を上げた。
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