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メンバー集めーーー①

 祐樹がカクンと首を下ろしていた頃、菜々、加奈恵、アンナの三人は誰を入れるかの目星をつけていた。


「菜々さん達が一緒に居た椎菜さん、梨々花さん、そしてアデル様はフリーランスなので、一度声をかけてみてはいかがでしょうか?」


「そうだね!そしたら最低限の六人は揃ってお師匠様のギルドが作れます!」


「それでは、まずは梨々花さんの元へ行きましょう!」





「ほえ?祐樹くんのギルド?」


「はい!入りませんか!」


 菜々の髪がぴょこぴょこと元気に跳ね、アンナと後ろにいる加奈恵もキラキラとした目で梨々花を見つめる。


「……えっと、それってアンナちゃんと加奈恵ちゃんも一緒?」


「はい!快く引き受けてくれました!」


「祐樹様のギルド……私、あのお方のギルドにはいるために一体幾つのギルドのお誘いをお断りしたか………」


「私、今までフリーランスで良かったです……」


「う、うーん……?」


 祐樹と梨々花はこれでも中学一年生からの付き合いで、祐樹の性格なら何となくわかっている。


 ーーーこれ、本当に祐樹くんのギルドなの?


 普段はいつも祐樹に勉強を教えて貰っている梨々花だが、祐樹に対してだけは冴えている。


 祐樹は、常日頃からギルドには入らないと言っていた。それは梨々花も痛いほど分かっているし、梨々花は祐樹がフリーランスだから梨々花もフリーランスで今までやってきているのだ。


 怪しい。多分だがこれは菜々の勘違いなのだろうということも梨々花には分かった。だがーーーー


「いいですね!私、祐樹くんのギルドに入ります!」


「やったー!!」


 ーーー……こめんね、祐樹くん!祐樹くんと一緒にいたいという気持ちを優先した私を許してー!


「クラスでも、ギルドでも、よろしくお願い致しますわね、梨々花さん」


「よろしくお願いします、梨々花さん」


「うん!アンナちゃんも加奈恵ちゃんもよろしくね!」


 こうして、菜々は五人目の仲間を作ることに成功した。


「それじゃあ、次は椎菜さんにーーー」


「あ、加奈恵ちゃん待って!」


 加奈恵が先導して、椎菜の元に行こうとしたが、その前に梨々花がとめた。


「今、椎菜ちゃんシャワー浴びてるから、後にした方がいいかも」


「シャワー、ですか?」


「うん。今朝の警備任務で少し汗かいちゃったみたいで……」


 祐樹とは、別働隊の警備チームに入っていた椎菜。盾のジャガーノートで肉弾戦をする椎菜の戦闘スタイルは、ほかのヒロインよりも汗の量が違う。


「そうなんだ……それじゃあ!アデル様のとこに行きましょう!」


「アデル様は、普段なら中庭で猫と戯れているという情報がありますので、中庭に行ってみましょう」


 加奈恵がポケットから取り出したメモ帳を見ながら情報を伝えた。


「……そのメモ帳には、一体どれだけの情報量が入っていますの?」


「ふふふ……私の情報網を甘く見ては行けませんよ。ヒロインの恥ずかしい事があんなことやこーんなことまで……」


「一体何が書かれているんですの!?」


 アンナの悲鳴が響いた。


 場所は変わり中庭。今日も今日とて無表情なアデル・フランシスカは、いつものように猫と戯れていた。


 しゃがみこみ、猫じゃらしを持って右へやったり左へやったり。それに合わせてアデルの体も左右に揺れた。


「アデル様ー!」


「……?」


 猫じゃらしを持ちながら、くるりと顔だけ向けると、そこには知り合った菜々や、アンナ、梨々花がいた。


「………誰?」


「あ、私、川瀬加奈恵と言います。よろしくお願いします、アデル様」


「……うん、よろしく」


「あの、アデル様……少しお時間よろしいですか?」


「……?」


 相変わらず表情が動かないアデル。一旦菜々から顔を背けると、じーっと先程まで触れ合っていた猫と視線を合わせた。


 そして、猫の体を持ち上げると、菜々の方を向いて一言。


「分かった。菜々のため」


「っ、ありがとうございます!」


 表情には出てないが、アデルは菜々のことを結構気に入っていて、祐樹の次くらいには大切に思える存在である。


「移動、する?」


「いえ!本当にすぐ終わるので大丈夫です!」


「アデル様。もしよろしければ、祐樹様のギルドに入りませんこと?」


「……祐樹の?」


 相変わらず無表情だが、声の高さが半音高くなり、いつもと違う声の高さに猫がアデルを見上げた。


「………本当に、祐樹の?」


「はい!お師匠様のギルドです!」


「…………………」


 勿論、アデルも祐樹の性格のことを知っているので、ゆっくりと梨々花の方へと目を向けたーーーが、梨々花は分かりやすく顔を背けていた。


 ーーーあれ、分かってて乗ってる。


 ここで菜々に真実を告げるのはすごく簡単で、勘違いも終わらせることが出来る。


 だがーーーー


「分かった。私も入る」


「!アデル様!ありがとうございます!」


 と、勢いよく菜々がアデルに抱きついた。


 どうやら、瑠璃学園最強のヒロインでも、祐樹と一緒にいたいという気持ちには適わなかったようだ。

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