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準備期間ーーー①

 アビス大侵攻に控え、どこが一番慌ただしくなる科と言ったら、やはり工作科だろうか。


 全ヒロインのジャガーノートに修復に、調整、魔力注入など、限られた人数でやらなくてはならないため、この時期、いつも寝不足が酷い。


 当然、祐樹も工作科に所属している訳でしてーーーーーー


「……………」


「……………………」


 聖百合花女学院からのお客さんである、『セクメト』と『プリティヴマータ』のリーダーである、樹莉とエレナ以下メンバーは、出迎えに来た祐樹を見て言葉を失っていた。


「………祐樹殿、どうしたのじゃ?儂のめからはいかにも死にそうに見えるのじゃが……


「………まぁ、俺は死んでも死にきれないけど」


「今、そんなこと言ってる場合では無いですよ。大丈夫ですか?祐樹様……」


「あ、うん、大丈夫大丈夫。決まって大侵攻や、中規模のアビスが攻めてくる時は、こんなの工作科じゃ当たり前だし……ふわぁ…」


 と、盛大な欠伸をかます祐樹。昨日の会議が終わってからというもの、全ヒロインにアビス大侵攻があることと、出動命令が出ていたので、祐樹の元にジャガーノート調整依頼が殺到。均等に分けられてはいるとはいえ、早めに終わらせるために今日もしっかり徹夜コースである。


「寝れてるのか?」


「寝れるのは明日の朝になるなこれ……」


「こんな忙しい時に、出迎えとかさせてごめんなさい、祐樹様」


「大丈夫ーーーと、言いたいけど、正直今すぐ戻らないとやばい状況でして、俺ほんとに出迎えしか出来ない状態なんで……ほんと、なんかすいません」


「それに関しては儂らが悪いと思うのじゃがのう………」


 祐樹を出迎えるように言ったのは、聖百合花女学院なのだが、何故か祐樹がペコペコと謝っていた。


「引き継ぎは、俺の後ろにいる『ハミングバード』の人たちがやってくれるので、その人達に着いてって下さい……では、俺は戻ります」


「う、うむ。気をつけるのじゃぞ!」


「お気をつけて」


 と、去っていく祐樹を見守る二人。途中電柱にぶつかりそうになって冷や汗をかいたが、何とかしっかりとは歩けている。


「さーて、ウチの後輩くんに頼まれから、しっかりと仕事しないとね………ようこそ、聖百合花女学院の皆さん。私は、瑠璃学園ギルド格付けランクSSS、『ハミングバード』のリーダー新名花火よ。初めまして、それと、今回の作戦ではよろしくお願いします」


「聖百合花女学院ギルド格付けランクSSS、『セクメト』のリーダーの国崎樹莉じゃ。よろしく頼む」


「聖百合花女学院ギルド格付けランクSSS『プリティヴマータ』のリーダーの、エレナ・ヴァン・レッドグレイヴです。よろしくお願いします、花火様」


 そして、三人は握手を交わした。


 ギルド格付けランクとは、そのギルドがどんな危険度のアビスを倒したかによって決まるランクである。


 この3つのギルドランクは、どれもSSS……つまり、最高危険度のSS+を倒したということである。


「それでは、皆さんが泊まる部屋に案内をしたいところなんだけど、まず見学したいわよね。案内するわ」


「ありがとうなのじゃ。中々儂らはほかの学園に行く機会なんてないからのう」


「樹莉さん。花火様は歳上ですので、もう少し敬語を使うようにして頂かないと……」


 と、地上ではきちんと仕事が始まった。


 一方、地下に移動し、個人ラボに移動した祐樹。端末と睨み合いながら、本日28本目のジャガーノートに目を通す。


「魔力は十分。調整の方もこの人に合ってるから何も問題は無い……傷も目立つところはないが、少し強度が下がっていたので補強して……」


 ぶつぶつぶつ、と呟きながら作業を進めていく。すると、祐樹の個人ラボの扉が開き、祐樹の許可無く部屋へどんどん入っていく。


「祐樹くん、お昼ご飯を持ってきましたよ?一緒に食べましょう?」


 入ってきたのは、工作科に所属している椎菜だった。椎菜は、まだジャガーノートの整備については少しの知識しかないので、こうして祐樹の身辺の監視として、手伝っている。


 そうでもしないと、祐樹はーーーというより、工作科の皆は時間なんて気にせずにジャガーノートと向き合っていられるのだから、こうしてストッパー役が必要なのだ。


 椎菜の声が聞こえ、もうそんな時間なのか……と心の中で呟きながら後ろを向いてーーー椎菜は驚いた。


「……あの、祐樹くん?顔、凄いことになってますけど……とても不機嫌そうな顔をしてます」


「…そうか?」


 本人はそう思ってはないらしいが、どうやら無意識に溜め込まれたストレスがこうして顔に出ている。


「少し、寝た方が……」


「いや、早く調整を終わらせないとダメだからな。休んでる暇なんてーーー」


「……えいっ」


 と、祐樹は断ろうが、今の椎菜は監視役。つまり、無理しそうになってら無理やり言うことを聞かせてもいいという権利を貰っているのだ。


 急に腕を取られた祐樹。普通ならば、触れた時点で対処できるが、今回は寝不足が祟って対処できなかった。


 そして、祐樹の頭はそのまま椎菜の膝上に。


 ーーーえ?膝?


 そう、祐樹は椎菜に膝枕をされた。

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