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戦闘指南ーーー②

「それじゃあ早速!私もあそこに行ってきまーーーー」


「はいストップ」


 勢いよく、みんなが人工アビスと戦っているフィールドに行こうとしたが、それを裕樹が止めた。


「新人ヒロインはまだジャガーノートになれていないから、まだアレとは戦わない………着いてきて」


 と、言うと裕樹はフィールドとは反対方向に歩き出す。


「え?でも、授業はーーー」


「大丈夫だ、俺はもう終わってるし、新人ヒロインは無理に今戦わなくても成績には何も影響しない」


 授業の合格基準は、人工アビスを一分以内に倒すこと。一講義90分間の間に一回でもクリア出来れば、その授業は出席扱いとなる。クリア出来なかったヒロインは、補修として1週間後にもう一度やるのだが、新人ヒロインはまだやらなくても、姿を出しただけで出席扱いとなる。


「おいで、朝凪さん。強くなりたいのなら」









 フィールドから個人で貸し出しのできる訓練室に移動した裕樹達。裕樹はダインスレイブを構え、菜々は緊張した面立ちでロンギヌスを構える。


「朝凪さんは、別に何も攻撃はしなくていい。ただ受け止めるだけでいいーーーーー構えて」


「は、はい!」


 と、言われても菜々は構え方なんて分からない。とりあえず、裕樹と同じように足を肩幅に開き、ロンギヌスを中段に構える。


 瞬間、裕樹の姿が菜々の目の前に現れ、ダインスレイブをロンギヌスに強く引っ叩いた。


「キャッ!!」


 ーーー痛っ!それも凄く重い!


 あまりの痛さにジャガーノートを地面にぶつけてしまい、手がジンジンと痛みで震える。


「アビスとは、通常の生物が魔力によって超常化したものだ。魔力に支配されたアビスは、同じ魔力を持つジャガーノートでしか、その肉体は断ち切れない」


 痛みで、いつもよりも裕樹の声が低く、そして怖く感じる。


「魔力を流さないジャガーノートなんて、ただちょっと切れ味のいいナイフだーーーーもっと集中して、朝凪さん」


「は、はい!」


 ーーー集中………集中………。


 ジャガーノートを中段に構え、両手をグッ!と強く握りしめ、魔力をジャガーノートへ送っていくーーーが。


 ガキィィン!!


「あうっ!」


「遅い」


 魔力が流れ込み、ジャガーノートが薄く光るが、それも裕樹によって止められる。


 衝撃で、思わず片膝を着いてしまう菜々。


「昨日は、血を直接指輪に触れ、ジャガーノートがその指輪に溜め込まれた魔力を吸い込んだ結果のあの動きだ」


 コツ、コツと。裕樹の足音が近づく。


「立て、朝凪さん。君は、俺を殺すヒロインとなるんだ」


「お師匠様………」


「………なるほど、やっとこの違和感に納得が行きましたわ」


「アンナちゃん?」


「違和感、ですか」


 ササッ、と戦闘訓練を終わらせ、裕樹達の後を着いてきた三人。邪魔にならないように、見学もできる二階にて二人の訓練を眺めていた。


「あのお方は……見つけてしまったのです。自身を殺してしまう逸材を」


 ギュ……と無意識のうちに手すりを掴む手に力が入る。


「……結局、私達では、裕樹様のお心を変えることは出来なかったのですね」


 アンナの顔に影が差し込む。その瞳は、今にも少し潤んでいるようにも見えた。


「………いえ、アンナさん。私達がやってきたこと全てが、無駄だった訳ではありませんよ」


「椎奈さん………」


「鍵は、きっとーーーーあの子になるのでしょうね」


 そう言って、椎奈の目は裕樹の向こうにいる菜々に視線を向ける。


「……あうっ!」


「目を閉じるな。閉じたら次の瞬間に、アビスの凶刃に殺られるぞ」


 訓練を初めて15分が経過した。魔力をジャガーノートへ流し込むコツは、何となくなのだが、掴んできたのだが、それでも重い裕樹の一撃に後退していく。


「はぁ……はぁ……」


 ヒロインは、魔力で体を強化されているため、一般人よりも体力はあるのだが、まだ慣れていないために、体力を無駄に消耗している。


「………今日はこの辺にしとこう。大丈夫、朝凪さん」


「あ、あはは……ちょっと、大丈夫じゃなーーーーあれ?」


 ぺたん、と地面に思いっきり尻もちを着いた菜々。


「………どうやら、少しやりすぎたようだ……ごめんね。朝凪さん」


「い、いえ!その、私がダメなのがいけないんですし………」


 と、両手を振って否定をする菜々。心配をかけないように、頑張って手を地面に着いて力を入れて立ち上がろうとするが、思ったように上手くいかない。


 と、次の瞬間、菜々の体は軽くなり、あれ?と重い横を見つめると、すぐそこには裕樹の顔が。


「…………ふぇ!?」


「ごめんね。立ち上がるまでは俺が運んであげるから」


 そう、この男。自然な流れでお姫様抱っこをし始めた。流石に菜々でもこの状況は顔に熱が溜まり、赤くなる。上から何やら「なー!!」という声が聞こえたが、今の菜々はパニック状態になっていて聞こえなかった。


「お、お師匠様!?」


「大丈夫、うっかり落としたりなんてしないから」


「いや、あの!違うんです!私が言いたいのはそんなのじゃなくてー!!」


 しばらく、裕樹の腕での中で慌てる菜々だった。廊下を歩く裕樹の姿を発見した生徒はもれなく、菜々を羨ましげに見つめていたとか見つめていなかったとか。


 まぁ、菜々が気まずい思いをしたのは確かである。


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