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戦闘訓練ーーー②

 小鳥遊裕樹は、多くの生徒に目標、又は憧れ、又はガチ恋勢の三つに分けられる。


 生徒の八割は、裕樹のことを昔でいる『アイドル』的な感じで裕樹のことを見つめ、友情以上愛情未満の気持ちで裕樹と接しており、距離が近い。


 そんな裕樹を見つめる沙綾は、ぼーっとした顔で裕樹の背中を見つめ続ける。


「………ありゃりゃ~。また振られちゃったね、沙綾」


「っ、優希さん」


 ギルド、アルフヘイム所属の鳩羽優希(はとばゆうき)。何の因果か、裕樹と同じ名前を持つヒロインである。


「ま、まだまだ振られた訳ではありません!私は諦めませんよ!」


「そうそう。それでこそ私たちのギルドリーダーよ。落ち込んでる暇があったら、どんとアタックしていきなさい!」


 やいのやいのと騒がしくなった二人の声を背中に受け、裕樹はフィールドへとはいる。地面から、格子が出てきて、フィールドに制限が入り、退路が完璧に塞がれる。


「いくぞ、ダインスレイブ」


 目の前にいる人工アビスに剣を向けると、呼応するようにコア部分が光り、裕樹の目が赤く染まる。


「……っ、あれは!?」


「軽くですが、裕樹くん、ルナティックレッドアイズを!?」


 遠くから見ていたアンナと椎奈が反応する。


 裕樹が最も自身で忌み嫌うギフト『ルナティックレッドアイズ』。知覚系、強化系の二種混合型のギフトで、本気で発動すれば、髪までもが真っ赤に燃え上がり、狂気に支配され、辺り一体を更地に変えるまで暴れ続ける狂気に支配された瞳。


 自身でアビスを制御している意識をギリギリまで薄くし、アビスとしての力を限界近くまで発動してしまう、禁忌の力。


 目まで、ということはまだまだ自身でルナティックレッドアイズを制御できる範囲であるだろうが、少しでも気を抜くとすぐさま髪まで赤くなる状態。


「あの程度、裕樹様ならば瞳なしでも片手で捻りつぶせますのに、何を考えてらっしゃるのでしょうか………」


 周りのヒロインが、固唾を飲んで見守る中、人工アビスの目が怪しく煌めき、戦闘が開始された。


「 ! 」


 右、左の機械の腕の振り下ろし。人口故に、機械型のアビスで、しかも四足歩行型しか作れないため、攻撃はワンパターンだが、速度や威力はどこに本気出してんだって感じで、1発で強化されているヒロインだろうとも怪我をしてしまう一撃となる。


 ヒロインは基本、体に1発でも喰らったらアウトなのでその設定でも問題は無いが、如何せん

 それでも設定がおかしい。


 背後にて真奈が笑っているのを幻視した裕樹。終わったら説教だなと思いながら腕をかわす。


 強化された裕樹は、一歩軽く踏み込んだだけで2mは横に移動できる。イナズマのようにジグザグに動き、躱しながらアビスの懐に入り込み、大きくアビスを弾き飛ばし、すぐ様ダインスレイブを銃型に変形させる。


 刀身が真ん中から真っ二つにわれ、そこから銃身が飛び出すと、特殊性のバレットが四発、寸分たがわず、人工アビスの腕ーーー1番もろい間接部分を撃ち抜き、腕が四本ともちぎれた。


 後は本体の四角い部分だけになり、ダインスレイブの所有者が思っている形状に変化するという特性で、大型槍に変化させそのまま弱点を模した目を一突き。


 この間、僅か五秒程度しか立っていない。


「……………ふぅ」


 戦闘の終わった裕樹は、目に手を持っていき、覆った。


 ーーーーー落ち着け、まだ俺は大丈夫だ。


 ゆっくりと深呼吸をして、赤みがかかった目が消え去り、いつもの黒目に戻り、体に異常の熱も元に戻った。


 ーーードクンッ!


「……っ」


 小さくだが、確かな鼓動に、慌てて胸を抑えるが、特にそれだけで何も異常はなかった。


 それに少し安堵し、ふぅと息を吐いてからアンナ達の元に戻った。


「………裕樹様」


「どうした」


 どこか、裕樹の真意を見定めるように目を細めて裕樹の名前を呼ぶアンナ。


「先程の戦闘、お見事としか言いようがありませんがーーーーなぜ、御自身が最も忌み嫌っているルナティックレッドアイズを使う必要性が?」


「………別に、ただの確認だよ」


「確認、ですか?」


「あぁ。今の俺がどこまでアレを使いこなせるか。アレは一番嫌いだが、使いこなせればアビスを沢山殺すことができるからな」


「………………」


 アンナは今までたくさんの裕樹を見てきたが、それは本心ではあるだろうが、真意ではない。そんな感じのニュアンスが感じ取れる。


 そして、裕樹から感じとれる違和感。それを探るように目を凝らすが、まだアンナには見抜ききれない。


 はぁ、とアンナはため息を吐き、目を細めるのを辞めた。


「まぁ、あまり変なことは考えないでくださいませ。皆様、いつもと少し違うあなたのことを心配に思ってますから」


「あぁ。ありがとう、アンナ」


 笑いかけるその顔は、いつもと同じ雰囲気。しかし、やはりアンナはどこか違和感を感じてしまうのだった。

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