初日ーーー③
声の発生源に目を向けると、既にもう見慣れた金色が頭をガリガリとかいていた。
「ど、どうして!私は裕樹さんと同じクラスでは無いんですの!?」
カタリナ・ナパーム・ゲッテムハルト。両隣には、カタリナの肩を両隣にいた玲音と霧江がポンっと叩いた。
「まぁまぁカタリナ。同じギルメンは同じクラスになることが多いいから」
「私達がいるから、元気だして」
「嫌ですわー!裕樹さんと一緒がいいんですのー!」
「……荒れてるな、カタリナ」
カタリナが発狂している様子を遠くから見ている裕樹。そんな裕樹を目ざとく発見したカタリナは、玲音と霧江の手を弾くと、急いで裕樹に近づき、両手を取った。
「それならば裕樹さん!是非、是非とも!ハミングバードに入りませんこと?ギルド的にはあと二人空いてますし!」
「今更ギルドに入っても、同じクラスにはなれないと思いますけど……」
「お黙りなさい」
椎奈の冷静なツッコミを早口でバッサリと聞かなかった振りをしたカタリナ。
「ちょっとちょっと!勝手なことをしないでくださいませ!」
「そうです!裕樹くんは、私たちのクラスなんですから!」
裕樹とカタリナの間に立ち、繋いでいた手を物理的に引き剥がした二人は、裕樹の前に立つ。
「アンナさんに梨々花さん……っ!あなた達!どうして四年連続で裕樹さんと同じクラスなのです!?少しこの私と変わりなさい!」
「断固!お断り致しますわ!」
「そうです!それと、裕樹くんが別のクラスにいったら、誰が私の勉強を見てくれるんですか!」
「「あなたはもう少し自分で努力しなさい!」」
まるでコントのような言い合いに、周りのヒロイン達の顔に笑みが浮かぶ。
ぐぬぬぬ……と睨み合う三人。すると、辺りに響くように、学校から鐘の音が鳴った。
この鐘は、もうすぐ一時間目が始まる合図。なので、ヒロイン達は急いでホーム教室へ向かわなければならない。
「行くよ!カタリナ!」
「それでは裕樹くん、ごきげんよう!今度ジャガーノートの面倒見てね!」
「え、ちょ!?玲音さん!霧江さん!」
鐘が鳴るとき同時に、玲音と霧江はカタリナの首根っこを掴み、そのまま早歩きで退散してしまう。周りのヒロイン達も、急いで自身のホーム教室の方へと向かう。
「よし、俺達も急ごう」
「そうですね、急ぎましょうか。アンナさん、私たちのクラスはなんですか?」
「薔薇です。急ぎましょう。菜々さん、こちらです」
「え、あ、うん!」
瑠璃学園の地上部分に出ている校舎は3階まで。
一階に、一年生、二階に二年生。三階に三年生の教室があるが、ホーム教室は階の半分しか使われず、残りの半分は科専用の教室である。。
瑠璃学園は早くも選択授業を入れることができ、自分でどの授業を受けるかどうかをセッティングすることができ、全員参加の合同授業以外でなら、早めに必要な単位を取れば、授業に出なくてもいいという一昔前の大学みたいな制度がある。
本日、薔薇組の一時間目は、隣のクラスの桜組との合同戦闘訓練。
「でも、戦闘訓練って言っても何をするんですか?」
本契約を終わらせ、きちんと起動するのようになったジャガーノート、『ロンギヌス』を掲げる。コア部分には、菜々の魔力がきちんと供給されているのを示す紋章が浮かんでいる。
「工作科が作った人工アビスを用いて、一体一の時の場合の訓練をするんだ」
「ちょうど、誰かが入っていきますわね」
グラウンドに設置された簡易のドームフィールドの中に、人が入っていく。壁は格子状になっているので外からでもバッチリと姿が見える。
「あれは、同じクラスの加藤沙綾さんですね。ギフト、『天秤の御剣』というジャガーノートを二振り扱える能力です」
「…………」
「……?どうしたんですか?菜々さん」
じーっ、と見つめる椎奈を見つめるなっているに、椎奈は首を傾げる。
「………あの、ギフトってなんですか?」
「………説明は、受けてないのですか?」
「…………はい」
「……………あらあら」




