会議ーーー①
「やぁ四人とも。急に呼び立てて済まなかったね」
国立瑠璃学園。世界でもトップクラスのヒロイン達が集まり、日本の対アビス戦線での最前線。
瑠璃学園付近一帯は、特別に自治権が認められ、日本国憲法が通用しない。
そこの学園の長である、長月美冴は、目の前でソファに座っている三人と、隣にいる学園長机に腰掛けている一人を目にする。
「別に、問題はありませんよ。この時間帯は起きてますから」
アビスに寄生され、男なのにジャガーノートを扱える存在、小鳥遊祐希。片足を机に乗っけて、前髪を弄っている。
「そうですね。祐樹さんの言う通りです。生徒会という役職上、この時間帯に起きなければ仕事に支障が出ますので」
瑠璃学園には、所謂生徒会長という人が三人おり、それぞれが各科事の頂点に立っている。
真ん中に座っているのが、三年生の一宮空羽。茶髪をポニーテールにしており、黒色の瞳を持つ落ち着いたヒロインである。強襲科の生徒会長を務めている。
「私は、まぁこの時間帯はいつも研究の方で忙しいので」
工作科生徒会長、三年生の真島美結。少し暗めな銀髪に、山吹色の瞳を持っており、常に眠そうな見た目をしている。
「特に、問題はありません」
後方科生徒会長、三年生の 片桐綾瀬。緑色の髪、青色の瞳にメガネをかけており、非常に理知的に見えるヒロインだ。
「それで、私たち四人を呼び立てした理由はなんでしょうーーーーと言っても、果てしなく嫌な予感しかしませんが」
はぁ、と額に手を当て、ため息を吐く空羽を見て、美冴は両手を軽くあげた。
「その通り。さすが空羽と言ったところかな」
「別に、その程度空羽でなくとも簡単に予想できます………何回目ですか?今回で」
「六回目です……本当に、そろそろ諦めてくれるといいのですが」
「まぁ仕方ないといえば仕方ないですね。相手はあの『フェンリル』です」
『フェンリル』。表向きは、アビスの生態系を調べている国際機関なのだが、裏ではかなりやばいことをやっている機関である。
噂によれば、魔力を持っていない少女を無理矢理ヒロインにしたり、アビスの器官を移植したりだとか、人道的ではない違法な研究をやっているという所である。
「ついに、フェンリルが裕樹を渡さなければ武力行使もやむ得ない、という手紙を送ってきた。読むかい?」
「是非、読ませて欲しいですね」
美冴が裕樹に手紙を渡すかのようにすると、裕樹はそれを受け取り、歩いて空羽の元へ持っていく。
「どうぞ、空羽先輩」
「ありがとうございます。裕樹さん……………また背が伸びました?」
「え?……どうなんでしょう。自分ではよくわからないです」
「こーら。世間話は後にしないか」
美結が二人に注意すると、少し頬を赤くした双棒が、ごほんと咳払いし、手紙を読んだ。その後ろから美結と綾瀬が覗き込む。
『国立瑠璃学園様へ。アビスと人間のハーフである、小鳥遊裕樹殿を、これからのアビスに対するヒロイン以外の有効打を与えるための研究資料として、引き取りたい。断る場合、こちらも相応の手段をとる』
「………はぁ、舐め腐ってますね」
読み終わった空羽は、その手紙をビリビリと破く。
「文面からして非人道的なことやりますよーって言ってるようなものです。誰が好き好んで人体実験の場所になんて行くのですか」
「その通りさ。なので、ここでとりあえず多数決を取りたいと思ってね」
美冴は、四人を見渡した。
「ここにいるのは、この学園でのトップクラスの権力を持つヒロイン達ーーーーつまり、この学園の総意向といっても過言ではない。言ってる意味が分かるかい?」
「えぇ。大丈夫です。それでは、議題をどうぞ」
綾瀬がメガネのブリッジをクイ!とした。
「はい、それでは。大人しく裕樹のことを引き渡すに賛成な人ー」
当然、誰も手をあげない。
「それじゃあーーーーーこの手紙を送ってきた所に制裁を与えようと思う人ー」
美冴含む全員が手を挙げた。
「…………あれ?」
同時刻、既に目が覚めていた菜々は、寮の部屋の窓から外を眺めていると、不思議な光が空に向けて発射されるのを見た。
「ん?どうしたの?菜々さん」
ルームメイトである、藍色髪の少女、不知火楓が不思議がって声をかける。
「あの、なんか今光が登って行ったんですけど………」
「んー……?」
楓が菜々と同じように窓へ近づくが、どんなに見ても光なんてものは眩しい太陽くらいしか見えない。
「………太陽の光が反射した何かではないですか?」
「そう……ですか?」
「まぁ何だっていいです。早く行きましょう菜々さん。朝ごはんを食べるのが遅れちゃうわ」
「あ、うん!ちょっと待って!」
「あ、こら。リボンが乱れてます。直してあげるからこっちにいらっしゃい?」
そして、食堂のテレビに流れたニュースに、緊急速報でアビスに襲われた破壊されたフェンリルの施設が映っていたそうな。
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