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波乱の入学式ーーー③

 アビスを倒し切り、ひとまず安心し、体をだらけさせようとした瞬間、アビスの死体が、突然発行し始めた。


「っ!まずい!全員集まれ!」


 機械型のアビスには、ごくたまに、やられたときに自身の体液を弾き飛ばすということをする個体が現れる。その体液には、ヒロインの身体能力を一時的に減少させるという効果があり、別に触れても数日経てば治るのだが、症状が出ているときは体がだるいし、なんかすべてに対してどうでもいいと思えるような気持になるのと、あと単純に気持ち悪いという理由から、触れないことをお勧めされている。


 しかし、運が悪いことに、アビスを倒した場所は中々狭く、十分な退路もない。なので、祐樹は皆を自身のもとに集まるように指示を出すと、みんなをかばうように迫りくるアビスの体液に背を向けた。


 そして、祐樹の背中から、無数の鉄の腕が出てきて、それがドーム状に作り上げられ、七人を覆った。


「こ、これは!?」


 驚いた菜々が困惑するように声を上げ――――


「別に―――単に、俺が人ではない証拠さ」


 と、祐樹は悲しそうに笑った。









 アビスと戦闘が終わったヒロインは、例外なく身体チェックを行い、健康管理を行う。体内の魔力反応に異常はないかとか、怪我の有無やらなんやらをいろいろとチェックする。


「ごめん、菜々。その傷」


「え、い、いや!大丈夫です!」


 病院で患者が切るような検査服から出ている、菜々の右腕に巻かれている包帯を上からそっとなでるアデル。


「痛くない?」


「はい!だ。大丈夫です!」


「.....この時間帯だと、もう入学式は終わってますわね」


「そうですねぇ......もう夕方ですもんねぇ」


 カタリナがボソッとつぶやいた言葉に、同じく外の景色を眺めていた椎菜が頬に手を当てながらつぶやいた。


「祐樹くん、大丈夫でしょうか」


「えぇ......少し、心配ですわ」


「あの...聞いてもいいかわかんないんですけど......その、最後の....」


 きっと、菜々の言葉は、あの時のセリフ。『俺が人ではない証拠』を指しているのだろう。


「祐樹様は、アビスに寄生されておられます。。それは話しましたわよね?」


「は、はい」


 こくんとうなずく。


「別に、それだけなら多分大丈夫なのです。寄生しているアビスを完全にコントロールしておられますし、きっと、突如アビスに変化する可能性は限りなく低いのです」


「ですが、祐樹さんはアビスにしか備わっていない、形状変化や器官生成」


「果てには胸を貫かれようが再生してしまう再生力など、それはもう、《《人》》としては呼べない」


 カタリナ、椎菜が説明を引き継ぎ、そろって顔を俯かせ、暗い顔をする。


「......菜々ちゃん」


 梨々花が、菜々の手を両手で握った。


「祐樹君のこと、嫌わないであげて。これ以上壊れちゃったら、祐樹君、本当に私たちの目の前から去っちゃうから」


「梨々花さん...はい!それはもう大丈夫です!」


 菜々の中に、祐樹のことを嫌うなどという感情は、この先二度と思うことはない。すでに、菜々を守っている背中に憧憬したのだから。


 と、その時、窓だったはずの窓が、ただの壁に切り替わり、電気がつくと、ドアが開いた。


「やぁやぁみんな!アビス討伐お疲れ様ーー....ってあれ?もしかして、私、タイミング最悪だった?」


 部屋に入ってきた人物は、部屋の空気がなんか重たいのを感じ取り、タイミングミスった?と少し心であわてた。


 一方そのころ、別室にて検査を行っていた祐樹は、菜々たちが来ていたような患者福から、瑠璃学園の制服に着替えていると、検査を担当した女性がドアから姿を現す。


「お疲れ様、祐樹。今日も充分働いたようで」


「先輩」


 壁に背を預け、手に持っている今回の検査結果を見て、祐樹にポイっと投げた。


「特に異常なし。中にいるアビスもまだ全然大人しいよ」


「そうですか」


 キュッとネクタイを結び、祐樹はようやく目を合わせた。腰ほどまである紫色の髪に、紫色の瞳。スタイルもよく、身長も祐樹のほうが大きいが殆ど同じくらいで、170はありそうだ。


「.......神楽先輩」


「.....なんだ?」


 祐樹の雰囲気が何か変だと感じ取った七瀬神楽(ななせかぐら)は、すっと目を細める。


「俺、ようやく見つけたかもし――――」


「それ以上は言わせないぞ祐樹」


 何か言い切る前に、神楽が祐樹の口を指でふさぐ。


「それ以上、君の口から殺すなんてボクは聞きたくないからな。それに――――そんなことはボクが絶対に許さない」


 ゆっくりと、神楽は祐樹の頬に両手を添える。


「それに、君を殺すことになったら、その役目はあの子ではなく、ボクだ。それこそ、君を見つけ、保護したボクの責任だ――――まぁ、絶対に君を殺しはしないけどね」


 そう言って、彼女は微笑んだ。


 しかし、その言葉は、残念ながらも、祐樹には届かない。


「―――――ところで祐樹。そろそろ私とガーディアンの契りを」


「ごめんなさい」


「ちょっと、断るのが早すぎないかい?」


「いえ...その、神楽先輩と結ぶと......貞操の危機が」


「なんですと!?」


 ちなみに、前科ありである。

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