異形
一人称視点から三人称視点に切り替えました。プロローグは同じです
目の前に、今すぐ俺を殺そうと巨大な機械の口が迫る。
「っ!」
常人では間違いなくそのままパックリといかれ、次の瞬間には目も覆いたくなるような残酷な景色が待っているが、まだそうなりたくはないし、何より俺はこいつの攻撃では死なないし、《《死ねない》》。
流石に痛いのは嫌だから大きく横にバックステップ。持っている得物だけでは凌げないので、肩から《《目の前にいる存在と同じような機械の腕》》を作り出し、避けきれない部分はそれで受け止める。
「んぐ………」
戦闘で傷んだ体が悲鳴を上げ、体の至る所から血が吹き出すが、それも直ぐに止まってしまう。
「はぁ……血を吸え、ダインスレイブ……」
右手に持っている可変式の武器であるダインスレイブ………俺が契約をしている『ジャガーノート』に血を吸わせ、シンクロ率をさらにアップさせる。
狙いは一点。アビスの共通の弱点である目だ。
「………シッ!」
ジャガーノートによって強化された肉体が地面を走る。衝撃で周りの木々がゆれ、踏み込んだ足は地面を陥没させる。
ダインスレイブは、相手の反応を許すことも無く、アビスの弱点を貫いた。
「………っ!ゲボっ!ゴホッ!」
ーーーーくそ、流石に刺激させすぎたか!
胸に手を当て、内に潜む何かが暴れ出すのを確認するが、直ぐに深呼吸をとり、気持ちを落ち着かせる。
『ーーー、小鳥遊さん。大丈夫ですか?』
「……はい、無事にアビスはせんめーーーーっ、ゲホッ!!」
血が口から吹き出る。久々に本気でやったのと、血を失いすぎたため、視界がふらつく。
『っ、小鳥遊さん!?』
「あー……ごめんなさい。やっぱ全然無事じゃないです……」
全身痛いし、このまま目を瞑ったら死ぬ事ができるのか? ……なんてね。
俺がこんなんでも死なないことは自分でもよく分かってるし、なんならさっきのアビスに俺はバラバラにされようとも復活するしな………。
「できるなら……俺を殺せるやつに迎えをーーー」
『小鳥遊さん!? 誰か! 早く小鳥遊さんの回収を!!』
………俺がこのくらいで死なないってことは知ってるのに、なんでそんなに必死なんですかね……。
眩む視界に、見覚えのある黒髪と制服を着た少女がやってくる。俺を殺せるやつか? と一瞬期待したが、こいつでは俺を殺せない。
「ーーーい、はっけんーーーた。至急、医療ーーーー」
頼む。誰でもいいんだ。
誰でもいい。だから頼む、ヒロイン。
いつかーーーーー俺を殺してくれ。
これが、二年前の出来事だ。