7話 満開の1日前
3月31日AM.10時体育館は喧騒に包まれていた。
「ここカーペット引くから椅子置かないで」
「椅子縦に30個、横に40個置いて」
「来賓席は20人だから、一列10個、2列置いて」
教師中心に三年生が作業を早く終わらせる為動き回っていた。
「神崎、本番の歩く道教えるから来て」
「わかりました。今行きます」
凛とした声は通りがよく教師に一直線に届いた。所作が綺麗な彼女は赤い校章を胸に付けている。それにより俺らと同じく一年生だとわかる。
「おいおい、神崎がいるぞ.....」
陸が体育館隅の保護者席の椅子を整頓しながら小声で状況をイヤフォン越しに伝えた。
神崎飛鳥一年生ながら生徒会選挙で独走して一位を取り生徒のトップに立つ存在だ。腰まで伸びた黒髪は美しく、成績も学年2位と高い成績を収めている。顔立ちも良く殆どの生徒が学年問わず彼女のことを知っている。
しかし、この状況で彼女がいるのは誤算であった。3年生だけならまだしも、桃花と真由美は同じクラスであり顔が割れている。しかし、そんな事、言ってては終わらない。
「桃花、真由美一気に行くぞ。陸からの情報は聞こえてると思うが神崎は今先生と何やら話しているらしい、その隙をついて2階に上がり鍵を開けカーテンを閉めよう」
「了解!」
「わかった」
桃花は敬礼し真由美は袖を綺麗に捲っていた。丁度その頃、陸から合図があった。
「今行ける!」
その言葉に体は反応し動き始める。思ったよりも、体育館は人が多く、うまく紛れ込める。先輩たちの間を抜き舞台裏の階段に着いた。桃花も直ぐに着き二手に分かれ二階に上がる。
誰も2階を気にしていないのか、目線を感じ無い。とにかく前から順に素早く鍵を開けカーテンを閉める。片側5つあり合計10個ある。しかし、5つ目の窓の作業が終わった瞬間強い視線を感じた。俺は素早く、カーテン裏に隠れ窓を開けて外に出た。その時イヤフォンから声が聞こえて来る。
「先生、入学式はカーテンを閉めて行うんですか?」
それは神崎の声であり、一気に冷や汗が体を覆う。
「あー、まぁー良いんじゃ無いか。どうせ電気付けるだろうし、もし天気が悪くて外の暗い感じ見えたら嫌だろ?」
40代くらいの少し老けた先生はケラケラと笑いながら上手く切り替えしてくれた。
「そうですね、少し細かい事気にしすぎでした」
神崎の声にも可愛らしさがのり、声が聞こえなくなった。
そこから2人は入り口と逆側の外の梯子から降り、地下室で陸と真由美と再開した。
開口一番陸は心底安心したように声を漏らす。
「危なかった.....神崎見張ってたらいきなり2階に視線向けるから、バレたかと思って近づいたらやっぱり違和感に気づいた見たいで焦ったー。まじ、後藤先生ナイスだわ、あの人テストの時も寝てたから、色々と.....」
テストのことを言ったあたりから、真由美がキリッと陸を睨み陸はシュンっとなった。
あの40代ぐらいの男の先生、後藤先生って言うのか....知らんかった。
「まぁー取り敢えず準備は大丈夫だね。それとこれ、司会をする台のとこに置いてあった予定表。写真撮ってきたから後でグループに貼っとく。取り敢えず明日は、開始の30分後にある生徒代表挨拶の時間10時に集合でいい?」
真由美は体育館に入り予定表を入手し即時退散した。それでも、しっかりと予定表が、ブレずに撮れていることから彼女の落ち着きは流石と言いたい。
「「「了解!」」」
各々、イヤフォンを充電器に挿し部屋を出た。
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翌日は温かな日であり、校舎周りには今年一番の綺麗な桜が道を作っていた。
読んでくださりありがとうございます!!!
少し、怠いかも知れませんがこれからも、読んでくださったら嬉しいです。