4話 どの様に飛ばすか
真由美は弁当を丁寧に包み終わり話し始めた。
「昨日は言わなかったけど、この青春の手紙には退場時に桜を満開にして欲しいと書いてあった。」
確かにそう書いてあった。って事は最初から装飾などで桜を体育館に持ち込んではいけない事になる。
「前提として、私達が入学式の流れを知っていなくてはいけない。しかも、ただ予定時間を知るだけじゃなく最低でも終わる時間をその時に認識しないと、時間が押した時、意味をなさない」
開始の遅れ、来賓の話の長さある程度は決まっているだろだが、最後退場時に満開にするには自分たちで認識しなくてはならない。何かの食い違いで新入生が座ったままの状態で事が起きることも考えられる。
そうなると、青春の願いには届かない。
「そうなると、俺たちが体育館で何かをしないといけないって事か」
陸は不安そうに呟く。
入学式の時に予定にはない行動を起こすなどあってはならない。加えて全ての者が見ている中、顔を晒すなどその後学校側から何を言われるかわかったものじゃない。
「取り敢えず、何かを行う時は顔は見られない前提で行動を起こそう」
「まぁーそうなるよね、私も後で何か言われるの嫌だし」
桃花はお茶から口を離し晃の意見に賛同する。
「じゃあ次にやり方、何か意見ある人いる?」
真由美が仕切り話し合いが円滑に進む。
しかし、みんな声を上げない。
「だよね、私も思いつかなかった」
真由美は笑いながら机にあった手紙を見た。その時桃花がバット顔を上げ晃と目が合う。
「桜を上から投げたらどう?」
「「「桜を、上から、投げる、?」」」
三人は桃花に視線を注ぐ。きらきらした顔に目を奪われそうになるが桃花の声で思考が戻る。
「正確には花びら!もう、徐々に咲き始めてる花びらを拾って上から投げ入れる」
彼女は腕を振り回して身振り手振りで状況を伝えようと頑張っている。しかし、陸が遮った。
「んーそれだと顔見られないか?」
「隠れて投げればよくない?」
桃花が言いたいのは体育館二回のカーテン裏やドア付近の事を言っているのだろう。次に真由美が意見を伝える。
「それだと、桜の花びは軽いから下まで届いても隅で落ちるだけになる」
「そっかー、青春の要求は満開にしろだもんね。隅じゃなく退場する学生が解るようにしないとかな?」
桃花はしゅんとなり指で机をコツコツと叩く。今度は陸がハットしみんなを見回す。
「桜の花びらを風で飛ばすのは?どう!」
「「「風で?」」」
三人の頭にクエスチョンマークが浮かび上がる。
陸もジェスチャーをし始めた。
「顔が見られてはダメ。軽い花びらを飛ばす。大体中央まで飛ばす。真由美シャーペン貸して」
陸は手紙の裏に真由美のシャーペンを使い今言った事を箇条書きして行った。そして、項目の横に短い線を引き線の横に描き始める。
「まず、うちの体育館は2階の窓を開けると人が通る通路があるじゃん?そして、そこから自分達が窓を開けてカーテンを閉めてそこで待機。そして、用務員さんが使う葉っぱを飛ばして掃除するやつで桜の花を飛ばす。距離はまだわからんけど、顔を見られず飛ばすことはできる」
陸はスラスラと言葉を並べながら書きシャープペンシルを置いた。3人は少し黙り込んでから、口を開いた。
「ダメだと思う」
「悪くないけどダメだな」
「ダメですね」
3人の回答は一致し却下だった。
「何処が?」
陸は別段怒った素振りは見せずダメな場所を聞いてきた。その答えにまずは桃花と真由美が答える。
「そこそこ大きい物を持ち込むのは無理なんじゃない?」
「音は大きくても良いけどあれは、多分エンジンとかで動く気がする。単発の音は良いけど長時間の音になるとその音で誰かが来るなり、違和感を覚える気がする」
「確かに、そうなったら顔見られちゃうか」
陸は紙に線を引き自分の案を取り下げた。
「晃はないの?」
桃花が少しニヤニヤしながら聞いてきた。
みんな案を出しているなら出さなくてはまずいか...そこである事に気がついた。
「一万円使わなくて良いの?」
「あ、そうだった」
陸は封筒から一万円札を取り出し机に置いた。
「貰うのはダメですか!!!」
「ダメです」
桃花のボケに真由美が冷静に返し桃花は笑っている。
一万円.....
「花びら作る?」
真由美の発言を3人は反復した。
読んでくださりありがとうございます。