2話 桜を咲かす
ドアの隙間には封筒が刺さっており不思議なオーラを醸し出している
「封筒?」
四角形の机に4人は座っておりドアに一番近い真由美が振り向き認識した。
真由美は椅子を引き封筒に近づき恐る恐る持ち上げた。人差し指と親指で摘んでいる封筒はふらふらと不規則に震えていた。
真由美は自身の机に封筒を乗せ、それと同時に4人はそれぞれ動きを見せる。手をクロスさせ握り手の中を覗く者、手のひらにもう片方の指を乗せている者、目を閉じている者。時計の針が音を立て時間を刻む。一定のリズムが部屋を支配していた。
「「「「最初はグージャンケン」」」」
4人は息を合わせたように言葉を放ち腕を振り上げる。
「「「「ポン」」」」
ただ1人だけ、5本の指を出してしまった。桃花は封筒を恐る恐る持ち上げ、自分の手前に持ってくる。
トントンっと封筒を立て机に当てる。
「行くよ!」
ゆっくりと封筒上部の端を掴み破る。じぃじぃじ、パッ、封筒が口を開いた。桃花は封筒の中心を持ち左方向に振る。舌を出すように封筒から白の便箋と1万円が出てきた。
「一万円!!」
桃花が声を高々にあげ興奮する。他の三人は便箋に目が行き、桃花の反応に遅れた。
「手紙だね....」
「あぁ、多分手紙だ」
真由美と陸が手紙と認識した。桃花が三つ折りの手紙を広げ読み始める。
「こんにちは。1年B組唐木晃くん、加崎陸くん。1年C組水梨桃花さん、松前真由美さん。まず初めに、カンニングお見事でした。シャープペンシルのノックや紙に滑らす音、紙を叩く音で相手に番号を伝える。いや、上手いやり方でしたね。」
「え..」
陸は驚き晃を見る、陸は手が湿り始め風通しを良くするために握る手を緩めた。晃には特に変化はなく桃花の方を見たままだ。
「でも、もう少し工夫したほうがいいかもですね。」
桃花は淡々と文章を読み上げる。
「私は別にカンニングのことを言いにきたのではありません。私はとあるお願いがあり手紙を書きました。その願いは入学式に桜を満開に咲かせて欲しいのです。4月1日入学式の一年生退場時にお願いします。費用は一万円を同封致します。青春より」
「えっと、どういう事だ?」
「青春って誰だ」
陸と晃は不思議そうに手紙を見返していた。向かいに座る桃花は一万円を見つめ、その隣に座る真由美は何かを考え込んでいるようだ。
真由美は封筒を持ち下に振る。しかし、落ちてくるものは何もなかったようだ。
真由美は空気を切り替えて話し始めた。
「まず、カンニングがバレている事。もし、入学式に桜を満開にさせないとバラスという脅しとも捉えられない?」
カンニングがバレているのが1番の問題だ。隣にいる陸は少し慌てたように紙を見返している。しかし.....
「カンニングのことは関係ないんじゃないか?本人も言っているし。カンニングを言いにきたのではないって」
カニングはただ、お前達を見ていると言う事ではないか...脅しという線もあるが、こいつの目的はただ桜を満開に咲かせる事だけな気がする。
「一万円で桜を満開にするって肥料とか買えって事?今頃買っても意味なくない?てか入学式って満開になるじゃ?」
桃花はパタパタと一万円をパタパタと揺らして質問を投げかけた。
「取り敢えず、明日の終業式終わったらお昼にここに集まろう。俺、今から部活行ってくる!」
「もう、そんな時間か」
陸は颯爽とバックを持ち出て行った。
時間は午後5時50分。体育館が一つしかないこの高校は日にち毎、時間を決め練習をしている。
「私も、もう帰るわ」
真由美も席を離れ出て行った。残された晃と桃花はぼーっとしている。
「晃はどうする?」
「俺はバイトまで少し時間あるから本でも読んどくよ」
「じゃ、私も残ってる」
俺は本を右手で持ちそのまま本を傾け栞を滑らし机に置いた。一度桃花の方を見ると彼女は携帯をいじりパイプ椅子の背もたれに体を預けていた。
6時半になり2人で部屋をでて学校を出る。
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