1話 始まる音
始めから短くてごめんなさい。
大人達は言う、もう一度青春をしたいと。
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カチカチカチ、シャープペンシルの先で一定のリズムが1年B組の教室に音を刻む。シャープペンシルのノック音だけではなく、時に紙に滑る摩擦音、紙に針を刺すようにタンタンとなる固い音。
隣に座っている男はそのリズムを耳で受け取りながら答案用紙にペンを滑らす。
学校全体にチャイムの音が鳴りそれと同時に、窓が開いたかのように部屋の張り詰めた空気が一斉に抜けた。チャイムの音と同時に、ドア付近に座っていた40代くらいの試験監督がまどろみの中のような声で一言。
「後ろから答案を集めてください。」
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「「「「終わったーー」」」」
男2人女子2人の嬉々とした声が正方形の部屋に広がった。
ここ小沼高校は北校舎・西校舎・東校舎からなり、それぞれL字型の渡り廊下で繋がっている。
スキップの様な声がしたのは、東校舎の地下からだ。
なぜ地下に部屋があるのか?それはわからない。
「でさー結局成功したわけ?」
少し茶色がかったショートボブの女の子水梨桃花が最初に口を開いた。
その快活な声に答えるように2人の男子が口を開く。
「もちろん」
「いや〜普通にできた」
最初に肯定した男の子、髪の半分を横に流しおでこを出している、身体170センチくらいの爽やかさん。加崎陸
その後に口を開いたのは唐木晃、こちらは陸と違い髪でおでこは出ておらず、何というか普通の髪型。
身長は165センチと小柄である。
「それで、コソコソ何してたわけ?」
4人の中の最後の1人、松前真由美。身長は桃花と同じ160くらい。
黒髪で肩甲骨くらいまで髪が伸びている。しっかりとした聞き取りやすい声で部屋に響いた。
「「カンニングー」」
陸と晃の声が重なった。何故か桃花はニヤニヤして嬉しそうだ。
「はぁーまたバカやって....桃花?」
呆れたと声の後に、真由美の桃花を呼ぶ声が、冷たいものになった。
「2人に変なこと言わないの」
「ひゃ、は、はい!!」
勢いよく返事をする桃花、その声と表情につられて2人が笑ったが、真由美を見て無表情になった。
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さてさて、会話がひと段落付いたようなので.....
そろそろ、届けましょう。
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「2人も桃花にのったらダメだよ、バレたらどうすー」
真由美が2人を注意している時、ドアの上から封筒が落ち、パタっと音がなる。
真由美は言葉を止めた。4人は同時に音を立てた封筒に目を向けて、警戒心を強める。
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そして、二度と来ない青い春が始まる。
読んでくださりありがとうございます。