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神の試練  作者: しゅむ
第1章:迷宮
10/18

1-6

前回のお話

ガイドブック読んだ事で今後の事を話しスムーズ。

忘れ物した!

 小松はロビーに来た秀司を見て眉根を寄せた。

 秀司はリュックなどを背負っておらず、何故か剣の他にラケットを1本だけ持っているのだ。


 小松はいくつか考えられる原因の中で、もっとも可能性が高いものを頭に浮かべる。


 小松は申し訳なさそうに肩を落としている秀司に視線を向ける。

「来る前にテニスの試合でも観てた?」


 小松は視線を逸らして頷く秀司に告げる。

「観てたら興奮してきて、背負ってたリュックかバッグが邪魔で置いちゃった?」


 秀司は目を見開いて驚く。名探偵小松は俺を見ていたのかと問いたいが、今は何も言うべき時ではない。長い前髪と眼鏡で小松の表情は良く見えないが、小松が怒っているのは明らかだ。


 リュックやバッグは骸骨の布や装備を入れる為に非常に重要だ。更に食料も詰め込む必要があり、手ぶらで迷宮の奥に足を踏み入れるのは自殺行為に等しい。

 質の悪いリュックは道具屋で購入も出来るが、小松は無駄遣いを嫌う。


 武具屋で布を素材にして制作を依頼しても良いが、完成は3日後になってしまう。


 今から約76時間も浅い場所でウロウロする事を小松は容認しないだろう。今回は迷宮の中から戻ってこない予定だったのだ。


 小松は大きく溜息を吐き出して背負っていたリュックを下ろす。

「ちょっとここで待ってて」

「……押忍」


 怒られて子供のように肩を落とす秀司をロビーに残して部屋に戻った小松は、新しく持ってきた予備のリュックを背負う。

 嫌な予感がした小松は学校を休んで予備のリュックを購入したのだ。


 他にも護身用グッズなどを実際に見たり、触ったりもしたが、敵が骸骨である現状は特に必要性を感じなかった。


 そして、小松は午前2時になる直前にリュックを前と後ろに2つ身に着けたのだ。

 1つは同じ物が持ち込めるのか実験として。もう1つは予備のリュックだ。


 しかし、持って来られたのは新しいリュックだけで、前回持ち込んだリュックを再び持って来る事は出来なかった。同じように前回持ち込んでクローゼットなどに保管した物も増えなかった。


 小松はお菓子や食料品も持ち込んだのだが、持ち込んだ食料は本当にお腹一杯まで食べなければバッドステータスが解消されない為、パンやリンゴと比べて非常に重くなってしまう。

 更に満腹では俊敏に動く事も困難だ。


 水分に関しても同じで、小松はペットボトルなどで持ち込んでいたが、噴水の水の方が明らかに少量でバッドステータスが解除される為、部屋には飲み干した空のペットボトルが置いてある。


 食料品を持ち込む意味は少ない為、小松が新しく持って来たリュックの中は空だ。小松は空のリュックに空のペットボトルを詰め込んでロビーに向かう。


 ロビーでは申し訳なさそうに肩を落とす秀司が待っている。


 小松は背負っていたリュックを秀司に差し出す。

「これ、使って良いよ」

「……こ……小松ぅ……」

「水筒は無いから中に入ってる空のペットボトルに水を詰めてね」


 もしも秀司に尻尾が生えていたら左右にパタパタと振れていただろう。


 秀司は小松に怒られると思っていたが、小松は特に怒る事は無く、秀司のミスを想定して新しいリュックを持って来た。

 悪い予感というフラグを叩き折ったのだ。


 秀司は笑顔で宣言する。

「俺、頑張る!」

「……程々で良いよ」

「おぅ!」

「あっ、ラケットは要らないから部屋に置いてきて」

「……おぅ」


 小松は秀司の耳と尻尾が垂れ下がった状態で、部屋に戻る犬のような秀司の姿を見た気がした。


 武具屋の近辺は多くの人で賑わっているが、人気のある店と閑古鳥が鳴いている店に分かれている。


 秀司の行く店は閑古鳥が鳴いている店だ。

「おやっさん、おぃーっス」


 秀司はガイドブックを読んだ事で、武具屋の店主が怖くなくなったのだ。外見だけで判断される店主に同情すらしている。

 この店主は強面の他に口も悪い事が影響しているが、初日の喧騒を知らない秀司が知る由もない。


 店主は秀司を睨みつけるかのようにして口を開く。

「あ゛ぁ? 1回発注したくらいで良い気になんなよ小僧」


 しかし、秀司は全く動じない。

「俺はおやっさんの腕を信用してんっスよ。この辺りで1番なんスよね?」

「あ゛ぁ? 小僧……」


 店主はジーっと秀司を睨みつけるが、オロオロしているのは秀司の背後に居る小松だけだ。

 店主全員の能力に差がない為、1番など存在しない。全員の能力が同じ事から、ある意味では1番である。


 店主は口元をニヤリとさせて、カウンターの下から剣帯と剣の鞘を取り出す。

「わかってんじゃねぇか」


 そして、その容貌や態度とは裏腹に丁寧な所作で剣帯と鞘をカウンターの上に置く。

「これが注文の品だ」


 秀司はカウンターに置かれた剣帯と鞘に無言で引き寄せられる。

 剣帯は薄いボロ布から作られたとは思えない厚みになっており、どう考えてもボロ布とは別の物質だ。


 さらに粗末な木の棍棒から作られたであろう鞘は、非常に綺麗な作りで艶まである。

「お……おやっさん……」

「おぅ、素材を見つけたら俺んとこ持って来いよ」


 小松は感動する秀司を無視して声を掛ける。

「受け取って装備してみて。不備があればすぐに直して貰お」

「あ゛ぁ? 不備なんかあるわきゃねぇだろぅが!」


 サッと秀司の背後に隠れた小松は、秀司の背中を軽く腕で押す。


 秀司は小松に背中を軽く押されながら口を開く。

「こんな素晴らしいのに不備なんてある訳ねぇよ!」

「ぁったりめぇよぉ!」


 ニコニコ笑顔で剣帯を受け取った秀司はすぐに腰に身に着けたが、ウォームアップジャージには死ぬほど似合わない。


 それでも鞘に入れた剣を腰に装着した秀司は満面の笑顔だ。

「おっちゃん! 最高にカッコイイよ! ありがとうございました!」

「おぅよ!」


 おやっさん呼びからおっちゃん呼びに変わっても、店主は強面の口元をニヤリとさせるだけだ。


 小松は満面の笑顔を見せる秀司の背後で呟く。

「いや……絶対いまいちだから……」


 小松の呟きが2人に届く事はなかった。


 前に出ていた秀司が下げていた頭を上げて、カウンターの向こうに居る店主の姿を完全に捉える。

「ちっさ!」


 秀司は店主がカウンターの向こうで椅子などに座っていると思っていたが、店主はしっかりと地に足を着けていた。


 店主は短く太い腕でカウンターを叩きつける。

「俺はドワーフの平均だゴラァ!!」

「さぁーせん!!」


 小松は秀司が失言した瞬間に店から離脱していた。いくら平均身長の低いドワーフとはいえ、小さいと言われれば怒るのも無理はないのだ。


 秀司も頭を下げて逃げるように店を出ていき、既に逃げ出して外で待っていた小松と合流する。

「置いてくなよ」

「そりゃ逃げるでしょ。普通に失言だもん」

「いや……まぁ……思わず……なっ」


 秀司は反省しているようだったが、すぐに腰にぶら下がる剣を満足そうに撫でながら小松の後ろを進む。


 道具屋でパンとリンゴの買い物を終えた秀司と小松は噴水に近づいていく。

「秀司もペットボトルに水を入れて」

「お……おぅ!」


 噴水には秀司たちと同じように水を汲んでいる者が多く、革の水袋もあれば水筒やペットボトルなどバリエーション豊かだ。


 水を汲み終えた秀司は小松の後ろに続いて石碑に近づく。

「じゃあ、僕の後ろに続いて入ってきて」


 しかし、石碑の周囲には人が多く、石碑に入る者たちの様子を窺っている者も多い。


 それを見た秀司は慌てて小松の耳に顔を寄せる。

「順番待ちとかしてんじゃねぇのか?」


 小松は素早く視線を左右に走らせてから口を開く。

「仲間を探してんだよ」

「仲間?」

「うん。とりあえず入っちゃお」


 秀司は足早に石碑に入った小松の後ろを追う。そんな秀司たちに声を掛ける者は居たが、秀司たちが足を止める事はなかった。


 迷宮に足を踏み入れた秀司は小松に尋ねる。

「声を掛けられた気がすんだけど、無視して良かったのか?」

「問題無いよ。追いかけて来ても別の迷宮になるだろうしね」

「そうなのか?」


 小松は頷いてから口を開く。

「ガイドブックには載ってないけど、同じ迷宮が何個も用意されてるみたいで、仲間だと思ってなきゃ同じ迷宮には入れないみたいなんだ」

「じゃあ、この迷宮の中は俺らだけか?」


 小松は左右に首を振る。

「ううん。頻繁に他の人と遭遇する事はないけど、同じ迷宮で活動してる人は居るよ」

「あぁ、そっか。俺も小松に会えたしな」


 秀司の言葉に小松は首を傾げる。

「うーん。アレが奇跡的な偶然か、必然なのかは神のみぞ知るってとこだね」

「神様に感謝だな!」


 秀司は腰の剣を鞘から抜き放って高く掲げる。

「神様! 小松と出会わせてくれてありがとうございました!!」


 秀司の心からの感謝は微笑む神に届いているが、苦笑する小松は口を開く。

「こんなとこで叫ばないで電話したら良いじゃん」

「あっ、そっか! ちょっと電話し……」

「はいはい。また今度ね」


 小松は引き返そうとした秀司の腕を掴んで、引き摺るようにして迷宮の奥に進んでいく。

「クッソ! なんで俺が小松に力で負け……あぁっ!」


 小松の身体はいつの間にか薄っすらとした赤い光を帯びており、魔法による身体能力向上の効果が発揮されている。

 この状態になった小松は秀司を上回る力を発揮する事が出来る。


 秀司はジタバタと無駄な抵抗を繰り返す。

「魔法はズルいぞ! チートだ。チート!」

「骸骨が出たら秀司にも使うよ」

「ホントだな! 絶対だぞ!」


 秀司の身体能力向上の魔法を体験したいという想いは、神への感謝を上回り、それもまた神を楽しませている事を秀司は知らない。


 迷宮に入って最初の大きな丸い部屋を抜けて通路に入れば『カシャ、カシャ』と骸骨の足音が聞こえてくる。


 秀司は小松の前に躍り出て振り返る。

「プリーズ!」


 秀司は両手を小刻みに動かして何かを欲するようしており、小松はそんな秀司の肩に触れる。

「おぉ! 赤いぞ! 俺にも赤い光がぁぁぉぉおおお!」

「うっさいなぁ……」


 秀司は某漫画と同じように気を溜めるかのようなポーズでテンションを上げる。そして、通路の角から骸骨が顔を出す。


 骸骨は秀司の背中を見つめた状態で静止しているが、振り返った秀司は骸骨の姿を確認して一気に駆け出す。

「うっ……おぉぉおお!!」


 今の秀司は身体能力向上の魔法と靴も履いている。更に身体の疲労や足裏の怪我も万全だ。前回とは別人のような速度で骸骨に迫る。

 その驚異的な速度に自分自身でも驚いているほどだ。


 骸骨は緩慢な動きで腕を振り上げて秀司を迎えるが、秀司は剣を鞘から抜いておらず、慌てて骸骨と目と鼻の先で急停止する。


 骸骨はその場で振り上げた右拳を秀司の肩に叩きつけるように振り下ろす。

 しかし、秀司は鞘に納まった剣の柄を持ったまま後ろに小さく跳んで回避し、着地と同時に左腰の鞘から剣を抜き放つ。


 秀司の口元はニマニマしているが、小松には見えていない。しかし、剣をフォアハンドの構えで止まっている秀司の思考は駄々洩れ状態だ。


 敵を前にして腰の鞘から剣を抜くという行為は、秀司の中二病をとても刺激した。


 再び骸骨が2,3歩ほど詰めてきて右の拳を振るうが、秀司は再び後ろに跳んで回避。着地と同時に細かく素早いフットワークで、骸骨との間合いを詰めて剣を横に一閃する。


 骸骨の首は切断されて、崩れ落ちるように倒れた。


 そして、興奮状態の秀司は剣を高々と掲げる。

「勝ったぁ!」


 小松は勝利宣言をした状態で止まる秀司に拍手を送る。

「スゴーイ。秀司君ツヨーイ」


 小松の言葉に感情は全く乗っておらず、小松の声と拍手の音を聞いた秀司はすぐに剣を鞘に納めた。


 振り返った秀司の耳は恥ずかしさで少し赤い。

「さ……先に進もうか」

「布、回収したらね」


 秀司と小松は順調に迷宮の奥に進む。

 徐々に1対1の戦いから連携して戦う2対1の形に変えていく。


 秀司が前衛で骸骨の攻撃を避けて、その隙に小松が骸骨の鎖骨や足を的確に破壊していくなど連携面も深まっていく。


 もちろんお互いが1人で戦った方が早く骸骨を倒す事は出来るが、迷宮の奥に居るであろう強力な装備を身に着けた骸骨と戦う為に、秀司と小松は安全な場所で連携を深めていく。


 そして現在、秀司たちが地図を埋めている付近の骸骨は棍棒を持っている。


 小松は小さな部屋の中を見つめて呟く。

「ここに宝箱あったの?」

「ん? ここって俺が魔石を見つけたとこか?」

「多分ね」


 2人は地図を広げて確認するが、秀司には全く理解できない。

 小松は秀司と出会った場所や小部屋までの大体の道のりを聞き、地図を参考にしてこの小部屋に魔石の宝箱があったと確信しているが、小部屋の中には宝箱の影も形もない。


 小松は地図を丸めてリュックに入れる。

「宝箱は3日でリセット&再湧きだと思ってたけど、リセット&シャッフルかな」

「ほほぉ」


 わかったような表情で頷く秀司は、小松の言葉を全く理解していない。


 小松も秀司が理解しているとは思っていない。

「まぁ、先に進もうか。そろそろ盾持ちが出てくると思うし」

「おぅ! 盾は回収すんだろ?」


 小松は通路を歩きながら答える。

「するけど、秀司が使ってみてよ」

「俺? 盾なんて使った事ねぇぞ?」

「いつも左手を前に出して構えてんじゃん」


 小松は秀司がフォアハンドの構えを取るのと同じように左手を前に出す。

「出すけどアレはフォアハンドの構えだぞ? ん? 小松、もっと左肩を入れろ」

「……え」


 秀司は小松の構えが気に入らないのか、小松の左肩を押して身体を捻らせる。

「違う。違う。軽く膝は曲げるんだよ」

「いや……フォアハンドを習いたい訳じゃ……」

「肘は曲げて……脇は軽く開けろ。……そう! あと前だ。前、見ろって」


 秀司は小松の頭を掴んで無理やり前を向かせる。ボールが飛んで来るのは前なのだが、今はそんな話をしている訳ではない。


 秀司は構えを取らせた小松から少し離れて何度か頷く。

「うん、よし。右手を振……いや、手斧を持って振ってみ。振ったら右足のつま先を少し浮かすような感じで回転させんだ」


 しかし、小松は手斧を持たずに口を開く。

「なんでだよ! テニスの話をしてたんじゃないよ!!」

「はっ!? 違ぇのか!?」

「盾! 盾を秀司が持つの! 左手使ってないから!」


 秀司は剣の短い柄を無理やり両手で持って剣を左側に構える。

「バックの時に左手は使うぞ?」

「それ剣だから! ラケットじゃないから!」

「むっ……なるほど……確かに……」


 秀司は剣を腰の鞘に納めて口を開く。

「小松は使わないのか?」

「……考え中」

「ふーん。じゃあ、最初の1つ目は俺が使ってみるわ」


 そして、少し歩いた先の部屋で、短い木の板を貼り合わせたような四角い小さな盾を持った骸骨を発見した。


 小松は部屋に入る手前の通路で秀司に尋ねる。

「手順は覚えてる?」

「棍棒振らせた後に盾を外側に振らせる。そん時に右腕を破壊して、残ってる盾で殴りつけてくるから、避けながら背後に回ってトドメだ」


 盾持ちの骸骨と1人で戦う場合は有効な戦術だが、2人で連携して戦うとなれば話は別だ。


 しかし、小松は小さく頷いてから口を開く。

「行こう」


 小松の言葉を聞いた秀司が駆け出す。小松との連携を重ねていくにつれて、秀司が敵の注意を引き付ける役割を担う事が増えてきた。それは身体能力も反射神経も秀司の方が上だからだ。

 そして、小松は1歩下がった位置から秀司をサポートし、同時に致命的な一撃も狙う。


 秀司は予定通り棍棒を避けてから1歩だけ踏み込んで盾の空振りを誘う。そして、盾が振られるタイミングで出した足を1歩引いて盾を避ける。

 すぐに再び1歩踏み込むと同時に剣で骸骨の右肩付近を破壊する。右腕の上がらなくなった骸骨に、秀司はそのままの立ち位置を維持して、骸骨の盾での攻撃を誘う。


 しかし、骸骨の右肩付近が破壊されたのとほぼ同時に、秀司の後ろから飛び出した小松が骸骨の盾を持っていた左上腕骨を切断する。


 小松は切断すると同時に横に飛んで、骸骨に蹴るという選択肢すら与えない。


 両腕の機能を失った骸骨は横に飛んだ小松に顔を向けるが、すぐに近くの秀司に顔を戻す。しかし、顔を動かしたことで僅かな時間を秀司に与えた事になる。

 僅かな時間でフォアハンドの構えを完成させていた秀司は、剣を横一線に振るって骸骨の首を切断した。


 秀司は口角を上げる小松に向かって剣の切っ先を向ける。

「最高かよ!」

「まぁ、反省点はあるよね」


 小松が骸骨の左腕を破壊しなくても、既に右肩を秀司に破壊され、盾を外側に振るった影響で大きな隙を晒している骸骨の頭を、小松が破壊するのは容易だっただろう。


 秀司と小松は自分の意見を言い合って認識を合わせる。

「うーん……僕が左腕じゃなくて頭を狙った方が良かったかもね」

「それもありだったな」


 秀司は骸骨の左手が握ったままの木の板を貼り合わせたような粗末な盾を持ち上げる。

「うげ……。なんかキモいな……」


 秀司は掴んでいる盾を軽く振って、盾を握っている骸骨の左手を取り払う。

「……後ろの掴むとこも木なんだな」


 そして、秀司は木の盾を構えて小松を見つめる。

「……どう?」

「……どうって言われても……まぁ……良いんじゃない?」



 木の盾は小さな四角い盾で、大きさとしてはバックラーに分類されるだろう。


 秀司は木の盾を見つめて口を開く。

「こんなんで受けて壊れねぇのかな……」

「すぐ壊れるでしょ」

「だよなぁ……」


 小松は眉根を寄せる秀司に告げる。

「完全に受け止めないで、斜めに構えて受け流すんだよ。っていうか秀司が敵の攻撃を受け止めるような丈夫で大きい盾を持ったら、スピードが死んで良い事なんか無いんじゃない?」


 秀司は『受け流す』という事に興味を持ったのか、構えた盾を軽く振ってイメージを膨らませる。

「受け流したところを斬るのか……」


 小松は何やら都合の良い妄想をしている秀司を放置して、骸骨の身に着けていたボロ布を回収していた。


 その後も秀司と小松は地図を見ながら未踏破部分を埋め、骸骨との戦闘を繰り返しながら宝箱を探し続ける。


 そして、いつものように骸骨を倒した直後に、小松が両手で小さくガッツポーズを作った。


一体いつから……フラグが1本だと錯覚していた?

次回、小松の計画をぶち壊す秀司をお楽しみ下さい。



何でも無い事を含めて、追記や修正をツイッターでお知らせしております。

https://twitter.com/shum3469


次回もよろしくお願い致します。

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