3話 チュート
シュンッ
と軽快な音と共にユキはゲームの世界に降り立った。
「ここがゲームの中なのね。五感のすべてが感じられるわ、まるで現実にいるみたい。」
そんな感想を胸に抱いているとき、頭の中に電子的な音声が流れた。
『チュートリアルを始めます。』
すると、目の前に指示が書かれた紙が現れた。
①教会に行こう
教会に行ってゲーム内で死んだときに復活できる場所を作ろう。
「教会に行くのね?でもここはどこかしら。街の中ではあるみたいだけど。
というか死んだときってどういうこと?危ないことをするの?」
ユキの目の前には白くきれいな噴水が鎮座している。
その周りには自分と同じ格好。
つまり麻布で出来たTシャツと、紐で縛っただけのズボンの人がそこかしこにいる。
「こう周りを見てみると、やっぱり人が多いわね。
今協会に行っても混雑して大変そうだし、街の中を散歩した方が楽しそうね。」
そう考えたユキは噴水広場を離れ、気の向くままに歩き出した。
しばらく歩いていると、街の住人から話しかけられた。
「君、ここから先は危ないから行かないことをお勧めするよ。」
「何で危ないの?」
「嬢ちゃん、ここからはスラムがいって言ってな、ならず者や貧困層が暮らしてる場所さ。嬢ちゃんみたいなきれいな子が入ったが最後、売られちまうぞ?いろんな意味でな。」
(なるほど、そこまでリアルに作られたゲームなのね。
少し興味もあるけど大人しく別の場所に行きましょ)
「分かりました忠告ありがとうございます。」
「じゃあな、気をつけろよ」
そう言って男は去っていった。
(じゃあ、次はどこに行こうかしら、あら?あれは図書館じゃない?)
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静かな空間、インクと紙の匂いに囲まれて、燃えるような赤い少女は分厚い本を熱中して読んでいた。
本の題名は
『魔力と魔法の仕組み
~魔力の扱いと魔法の本質~』
彼女は気分で入った図書館で、魔法という夢の現象に魅了されていた。
(すごいわ!、こんなにワクワクしたのは久しぶり!
特にこの物を動かす魔法よ!こんなことが出来ればお人形を生きているみたいに操ることもできる。)
嬉しそうにため息をつくと立ち上がり、手続きを済ませて図書館を出た。
その胸には本を大事そうに抱えている。満面の笑みで歩き出しどこに行くでもなく街を徘徊した。
本を手にながら歩きをしていると、ふと頭に浮かんだことがあった。
(教会に行くチュートリアルの途中だった。)
教会は図書館から数分という近さだった。
数時間の散歩を挟んだからか人はまばらで、入る人より出ていく人の方が多いようだ。
(着いたはいいけどここからどうすればいいのかしら。)
「どうしたのかしら、何の御用ですか?」
そう言って近づいてきたのは修道女だった。
「えっと、来たはいいんですが、何をしたら良いかわからなくて。」
「では、こちらへ」
そう言うと、踵をかえし教会内へ進む修道女を慌てて追いかけるユキ
教会内に入ってみると、そこはもはや別世界のような空間で、神聖な空気が漂っている気がした。
「さあ、子羊よ女神様に祈りなさい。姿勢や祈り方は自由です。神は見た目より心を見ているのです。」
そう言うと隣で祈りだした修道女に並び、ユキも真似をしながら祈りを捧げた。
『称号を手に入れました。
称号:【創造神の信者】』
「え?!」
「よろしい、では幾ばくかの恵みを。」
そう言って箱を取り出すとこちらにズイと差し出してきた。
(恵?…あ!日本で言うところのお賽銭か!)
「えっと、このGってやつがお金かな。財産が10000Gだから、はい!50Gで良いかな?」
「ありがとうございます。」
このやりとりを最後に修道女は去って行ってしまった。
(あれ?)
周りを見渡すと別の建物に入っていく人を見かけた。
ユキも入ってみると、そこには水晶置いてあった。
それに触ると人は建物から出ていく。
「きっとあれに触れば良いのよね?」
恐る恐る手を置くと…
『リスポーン地点が更新されました。
【ファースの街:創造神クラフト教大聖堂】』
「ん?!」
突然流れた電子音
すると先ほどのように紙が目の前に現れた。
②協会に行こう
協会に行って職業に就こう
「教会の次は協会ね…」
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