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小さな鍵の物語~リトリア王女の魔女修行~  作者: 前歯隼三
リトリア王女の葬式編
31/32

13人の魔女

 魔女は銀木の国からの提案を受け、世界中に散らばる娘達に手紙を書く作業に入った。

 娘と言ってもリトリアの先輩、アカネと同じような立場の弟子達であり…魔女と本当の血縁は無い。

 魔女は定期的に世界を回り“三日月病”の娘に声をかける…

 三日月病とは魂が欠け生まれてくる短命の病で、13歳の内に死ぬ悲しい病…しかし一方、欠けた魂は“魔”を受け入れる器としての役割を果たし、魔法使い…魔女としての素養の一つとしても重宝されるのだ。


 動き回る野菜達…その命その物をお茶にした“魔女の紅茶”…を入れる予定だったツボにそっとしたためた手紙を入れる。


“さぁ娘達よ…紅茶(命)がほしくば我が元に集え!”


「クックック…久々に魔女らしい事をしているわ。」


 手紙の入った紅茶ツボを抱え世界中に飛び立つ伝書鳩達…こうして、魔女の元に10人の娘達が集まった。



  ◆  ◇  ◆  ◇



 ぐにゅん


「ライトニング=サン=ショット!」

「ほほい!」


 バチィイン…ちゅどーーーーん!


「うおお!かっこいいぃいい!」


 魔女の頭上の空間が歪み、雷が三本落ちて来た!…しかしそれを魔女は片手で受け止め片手で地面に流してしまう…何故か近くに居た案山子ゴーレムがはじけ飛んだが、リトリアは目をキラキラさせて感嘆する、そうだ…こういう魔法戦が見たかった!


「ぐぅ…相変わらず器用な真似を!ダルピーク=グランドフォール!」


 時空の歪みから舞い降りた紫髪のロン毛少女が自身の髪の中から星を取り出して宙に投げる…そして詠唱と同時に星が暗黒に輝いて…地上に闇がのしかかった!


「あらぁ…教えて居ない星魔法まで!うふふ…嬉しいわ~っと、じゃぁ…相殺!」


“ムーテラス=アッパースカイ”


 魔女が懐から放り投げた月が輝き、増した重力を軽減する。


「ならば!…うぉおおおお!マジカルキィイイイイイック!」

「魔女パンチ!」


……

…………


ふわぁり


 花の香と共に魔女とリトリアは異界に迷い込んでしまった。


“…さぁ…開きなさい…その心を…宮殿を…”


 ズキン

 リトリアの胸が痛みだし…何か…何かを思い出しそうになる。


“魂をたどり…提示せよ…本当の名を…さぁ…っえ?先生?何?なんで殺意?”


「それは禁術って言ったでしょ!?タイガーホース=ソウルクラッシュ!」


“ぎゃぁああああああ!”


「っつ…ハァハァ!」

「大丈夫リトリア?まったく…この子は昔から陰湿だから…」


 リトリアが落ち着いて前を見ると、花をあしらったドレスのゆるふわガールが白目で泡を吹いて倒れていた。


……

…………


「こんにちわ。」


 ある日小屋に帰ると、黒髪ポニーテールのクール少女が来ていた。


「あらあら…こんにちわじゃなくてただいまでしょ?」


 シュバババババ!


<スキル=暗黒剣=無影斬り!>

<スキル=黒風剣=死風連斬!>

<スキル=死神剣=火車円武!>


「ウフフ…まったく、相変わらずのワンパク娘ねぇ~、えい!えい!えーい!」


 バキ ベキ ボキィ!


 リトリア待望の闇の剣三種類を振るい出した黒髪少女の攻撃を、卓越した武の動きにて拳で制圧してしまう魔女。


「か…かっこいい!」

「ね?リトリア…闇の剣使うなら、肉体強化の方がコスパが良いのよ。」


……

…………


「どんまい…黒柳、うん…お前はよくやったよ。」

「星髪…貴方も負けたのね…」

「「うぅ…」」


「二人は良いわよ…肉体的なダメージだけじゃない…うぅ…私なんて、私なんて過去の記憶を…」

「いや…花子はどうせ禁術とか使ったんだろ?自業自得だよ。」


 魔女から手紙を受け取った娘達は世界中から集まって魔女を襲い、片っ端から返り討ちにあっていった…、その戦いで魔女は娘達の成長に感動し…娘達…独り立ちした魔女の弟子達は心にトラウマを刻んで行った。

 …そして


“魔王の瞳…魔王の牙…魔王の翼…魔王の爪…我天の輪にて魔を縛り、王冠を奪いて我が物とする!”


 10人目…ついに最後の弟子が魔女の前に立ちはだかっていた、すでに返り討ちになった9人とリトリア達はやんややんやと離れた丘に椅子とテーブルを用意する。


「マオちゃんったら…遅いと思ったら相当準備してきたのねぇ…」

「あぁ…魔王化なんて成功したら相当なもんだ、こりゃいい試合が拝めるかもな。」


 ギャラリーの呑気さを無視して、金髪の少女マオは108枚もの護符を天に投げ…服を脱ぎ去る…露わになった少女の白い肌には赤黒い魔法陣が描かれていて…輝いた!


<テンマ=オウカ=マテン=テンカ>


 最後の呪文の詠唱により、108の護符と体中の陣が雷で連結…ぐにゅんぐにゅんと時空が歪み、

ずぶりずぶりとマオの頭には鹿角が生え…背中には蝙蝠の羽が生える。

 術式は成功!にやりと笑ったマオの口元に、小さな牙がきらりと光る!


「我こそは魔王を越えし魔女=月無しのマオ!」


 ザァアアアアアアアアアアアアア


 突然降り出した通り雨で、体中の陣が溶け流れ…連結が溶けた108枚の紙きれはぐしゅぐしょになって地面に落ちた、ついでに角と羽すら地面に落ちて…マオは裸のまま魔女に土下座をする事になった。


「禁術…解ってる?はぁ…それに年ごろの娘が裸になるなんて…まったく…」

「うぅう…雨さぇ…雨さぇなければ…」


 月無しのマオ…本名、月梨真緒は本当に付いてない娘だった。


「うわー、残念…見たかったのになぁ…魔王と魔女の戦い。」

「でもよく実行したわよねぇ…大衆の面前で裸になるなんて…乙女としていささかどうかと思うわ…」


 女しかいなくて良かったと…思った魔女たちの集まりの後ろで、ソードが一人鼻血を噴水して倒れていた。


「とりあえずこれで全員やっと揃ったわね、ウフフ…お母さん嬉しいわ~」


 

 魔女と10人の弟子、そこにリトリアと…わざわざ裏庭から呼び出したアカネを加えて13人の円卓を囲む。

 背後にそれぞれの使い魔やゴーレムを従えての、戦争でも始めるかのような…一般人からしたら悪夢の光景、その集まりの主催者たる魔女は心から嬉しそうに辺りを見渡す。


「それじゃぁさっそくなんだけど…コホン」


 命を繋ぐ、魔女の紅茶をネタに脅迫してまで集めた面々…力でねじ伏せた可愛い娘達の視線を感じて魔女は目を閉じ間を図り…そして。


「銀木の国の王様やりたい人てーあげてー!」


 …いささか、リトリアがいつか王になるのは不安だったが…魔女という存在にも同じ不安を感じるソードであった。


「もうナイフス隊長とかで良いんじゃないのかな…」


 隣のドゥーに声をかけると、彼女もなんとも言えない顔で否定をしない肯定をした。




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