銀木の国と小人の王について
「…と、いうのがジャガ王様のお考えだ。」
モグモグ
リトリアの修行の成果を食べながら、銀木の国の遣いナイフスとシンは要件を伝えた。
要約すると以下の通りになる。
・リトリア王女は病で臥せっている事にしている。
・これからのリトリアの人生は彼女の思おうままにさせようと思う。
・リトリアの事をお願いします。
・銀木の次の王に魔女を指名
「うーん…王様やるのは嫌ね。」
「解ります先生…うっま!塩うっま!」
モグモグ
ソードからして結構大きな話をしてると思うのだが、どうにもこの師弟からは緊張感が感じられない…あっくそう…焼いてた肉取られた。
「なぁドゥー…王様を部外者に指名なんて出来るのか?野菜ウマ!」
「えぇ…っと、まぁ…銀木の国は“小人の国”ですからねぇ…焼き飯美味しいです。」
小人の国…そう言われてもソードにはいかせんピンと来ない、ソードは土小人という種族なのだが銀木生まれではなく、もっと北の国生まれだ。
しかしまぁ、銀木の国のお話は絵本で読んだ事もある。
◆ ◇ ◆ ◇
銀木の国とは、山の様に大きな大きな銀色の巨木…その朽ち木…折れているため切り株等とも呼ばれているが、その巨木の元に集まった人々の国である。
「この木の元では我らは小さな小人に過ぎぬ。」
最初にこの地に訪れた冒険家、バッサリーはその様に話したという。
さて…その言葉が“小人の国”という呼び方の元になったと言いたいのだがそうではない、実はこの小人というのは“本物の小人”の事を差す。
世界中のどんな場所でも、また世界の始まりから終わりまでがそうであるように…この木の元でも争いは繰り返されていた。
建国以前は魔王と魔女の僕達が闊歩しいがみあい、殺し合い…また牙族や蹄族の争い、鬼と人族の争い…魔界と呼ばれる暗黒の土地であったのだ。
この戦いは一人の偉大なる王によって収められたが、問題は統治の法であった。
「この地に住まう者の中、誰が王となろうとも不満はでよう…それが例え私であっても。」
初代国王アザギル王はその様に言い、平伏す人々を見渡した。
平和の為に首を刎ね、血を啜り、躯を踏みしだき…ついに冠を得たアザギル王の一挙手一等足に人々はただ震え頭を垂れる…その姿が痛く王の心を傷つけ、また…自身の考えの正しさを確信させた。
「この国において…2人の王を立てようと思う。一人は力により争いを抑える王であり…世襲ではなく、各部族の長達の推薦にて選ばれる“選王”と呼ぶ王である。…そうして、もう一人は“真なる小人の王”だ。」
小人とは木から生まれ、木を守る精霊…
この地を見守る巨大な銀の朽ち木にも、その精霊は宿っている。
かくして、アザギルは初代選王となり小人=リトルリトルと共にこの地を収めた。
小人とは“心を読む妖精”であり、小人の王の役割とは選王の任命承認と解任である。
「かつて人族は“知”によって平和を目指し、かつて魔族は“力”によって平和を目指した…だからこそ、我らは違う道を歩もう。小人の国として平和の国を築いて行こう。」
◆ ◇ ◆ ◇
「…っと、いう国なので大丈夫ですよ?」
「え…あぁ…うん!ありがとう!肉焼けたぞ!」
話を聞いてもやっぱり良くわからなかった、何せソードの種族土小人はこの建国物語には参加していない。地上が争いでごちゃごちゃし、アザギル王と仲間たちの胸燃える大活劇伝説の時代にはとっとと地上を見限って地底で引きこもってた種族なのである。
「えーっと、つまり王様は血縁で決まるわけじゃないって事なんですよ。」
「なるほど…ん?じゃぁ…なんだ、“リトリアは最初から自由だった”って事じゃないか!」
ドゥーの補足にソードは間違えた納得をして、憂いなくカボチャと玉ねぎを頬張った。
「ジャガ王様の子供はリトリアだけだから、リトリアが次の王だと思ってたんだ…良かった良かった!うーん!ピーマンも旨い!」
アホ王女が王にならなくて万々歳!彼女自身も自由になれて万々歳!
ハァ
「…あの子は馬鹿で幸せよねぇ。ますます姫様にぴったりだわ。」
「………」
シンとナイフスも役割を終えて安堵する。
「先生どうぞ王様になってください!ひゃっほーう!私は自由!」
「あらあら…でも私が王様になったらリトリア、この畑を貴方にお願いするわよ?」
「うげー…案山子人生になっちゃうのか…うーん。」
王様の呪縛が解けたら始まる案山子の呪縛、リトリアの自由な人生はまだまだ遠い。




