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小さな鍵の物語~リトリア王女の魔女修行~  作者: 前歯隼三
魔法って大変編
3/32

魔法学基礎教本第一章“山田論”

この小説を読み続けると魔法が使えるようになります(嘘

「騙されたわ…ハァ…」

「はぅう!」


 ホカホカと立ち上る湯気とため息が混じる。ここは喋り動き回る植物の楽園“魔女の庭”の奥地にある丸太小屋、先日魔女にスカウトされた新人魔女見習いリトリアは昼下がりのお茶を楽しんでいた。


「…フフフ、ため息と混ざるだけのこの快感!嬢ちゃん…早く…早くオイラを飲んでくれよ!げヘヘ」

「飲みにくいわ!」


 植物だけでなく湯気まで喋る…この喋る湯気は魔女のお茶、喋る植物達の命を凝縮した“生命の水”と呼ばれる特別な物で、このお茶を毎日飲む事もリトリアに課せられた魔女修行の一環だ。このお茶は万病に効き、魂を強くし…そしてお肌がピチピチになる。齢うん万年の魔女が未だに美女の姿をしているのはこのお茶の力と言っても過言ではない、ただし飲みにくい。キャラも味もだ。


「ハァ…昨日の話だとさぁ、科学は勉強大変だけど魔法は人任せで簡単お気軽♪そんな感じだったじゃない…うぐうう…」

「お嬢ちゃん元気だせよ、そんな上手い話ないだろ?美味いお茶なら目の前にあるぜ?そう…俺!」

「解ったわよ!ぐぬぅううん!ありがとね!」


  グビグビ!


「不味い…」

 甘さと辛さと苦さと酸っぱさを合わせて発酵させた味がする。


(でも…癖になる味だろう?)

「お腹の中から喋った!?」



 時刻は昼下がり、お昼ご飯とお茶をお腹に納めて…午後からまた修行が始まる。



   ◆    ◇    ◆    ◇


「じゃぁ、午前中の復習ね!じゃぁ…暗唱しましょうか…レッツ“悪魔の名前100人言えるかな?”テスト!」


 先生…魔女が本日3杯目のお茶を飲みながら気軽にお題を出してくる。いきなり気軽に小テスト…抜き打ち反対の人でなしだ。


「…13点」

「うわーん!暗記やだぁあああ!」


 午前中に怒涛の如く行われた悪魔講座、午後いきなりで13人も答えただけで及第点だと思うのだが点数にすると「13点」目の前にするとどう見てもレッドラインの点数だ。


「不吉な数字ね…悪くないわ…合格!」

「逆に不安になってきましたわけど!?」


「フフフ…私の時は問題文が読めなかったから0点だったのよ。貴女天才かもしれないわよ?」

「文字を読めた事を褒められている!?」


 目の前の魔女の悲しくも残念な過去が垣間見えたが、とりあえず合格なら良かったとしよう。それにしても…だ、昨日の授業では科学と魔法の違いを教わって…「科学は人間が観測できる事象を研究した物で、利用するにはそれらの研究結果を勉強する必要がある」魔法は「悪魔や天使にまるなげOK、勉強なんていらないぜ」だったはずなのだが…


「お願いするにしても名前ぐらい知らないとね、人混みで“誰か助けて”って言ってもだれも助けてくれないけど“山田さん警察呼んで”って言うと助けてくれる原理よ。山田論というの」

「魔法学基礎教本第一章“山田論”嘘でしょ!?…あ、本当だ目次にあった!そして気になる事項“パンツ論”!?」


 パンツ論…人や悪魔を動かすには対価が必要だ、それが貨幣社会に住む隣人ならばお金で良いが、文化も価値観も違う相手を満足させる事は難しい。親しい間柄ならば深く心を誘うピンポイントの対価を用意出来るのだが、解らない場合は原則として生物の三大欲求を参考にすると良い。即ち…食欲、性欲、睡眠欲だ。未知の悪魔を相手に魔法を行使する際の対価としてパンかパンツを用意すると成功率が上がる。これをパンツ論と呼ぶ。


「大丈夫なの?私…青春を魔法に費やして本当に大丈夫なの!?」


 数学の勉強は嫌いだが、魔法の勉強よりはマシかもしれない。理科や社会も嫌いだが…コレよりは流石にマシかもしれない。歴史を紐解けば魔女や魔法使いという者達は差別を受け続けて来たわけなのだが…仕方ない、どう考えても頭がおかしい!近づきたくない!


「次の項まで予習するなんて感心ね!…そうねぇ、〇〇論の名前は時代と共に変わるから気にしないでいいわよ、私の時代は“名前による使役論”と“パンと乙女論”だったし」

「何があったのよ…乙女とパンツの間に何が…」

「2000年代に更新されてね…懐かしいわ」


  パチン


 魔女が指を鳴らすと、執事が大きな地図を持って入って来た。執事キガキークはホワイトボードに地図を張り、魔女に光の杖を渡して一礼し退室する。


「では、午後の授業を始めます。午後の授業は魔界13図…名前に合わせて悪魔の住所も知っておきましょう」

「名前も覚えて無いんですけど!?」


 お気軽にまったりとひょうひょうと、自由人で親しみ易い印象の魔女先生なのだが、やってる事は結構なスパルタだ。リトリアは脂汗を流しながら眩暈を覚える…


「せ…先生…体調が悪いので今日はもう…」

「ウフフ…大丈夫、あのお茶を飲んでるんですから体が悪くなる事は無いわよ?」


 魔女は4杯目のお茶を飲みながらにこやかに答える。


「そうだぜ嬢ちゃん!俺を飲めば毎日ケンコー毎日ハッピーさ!どうだい一杯!?」

「一日一杯で十分よ!うえぇえええん!」


 こうして、リトリアの魔女修行は続いてゆくのだ。日が登り、そして沈むまで…暖かい陽だまりの日々であった。

設定厨で色々考えてはいるのですが、実際にそのソースを使ってキャラを動かすと彼らはやりたい放題です。

なんや山田論ってパンツ論って

これらは私の作ったソースを、キャラ達が彼らなりに理解し研究し名前を付けた物…書いてて出てきてビックリ。


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