使い魔がいっぱい!
「じゃぁ荷物は私が積んどくよ、っしょー!あっと言う間の三日だったなぁ~」
魔女の裏庭に着いたのは二日前の夜、それから昨日は魔獣退治と畑の収穫…長いようで、
実質の滞在時間は1日と半分と言ったところか。
今日は朝の雑用を片付けたらリトリア達は裏庭を出て…表の庭というべきか、元居た家に帰るのだ。
「結婚は興味わかないが…うーん、やっぱ飯は旨いのがいいなぁ。」
「そうねぇ…わかった!今度料理本送るから。」
「うげぇえ!違うぜ?誰が本なんて読むかよ!」
アカネの態度に魔女は楽し気にため息をつく、この子はまったく…一切魔法を覚える気は無い。
素質だけなら相当あるのに…まぁ、それはそれ仕方ない。
魔女はアカネに積み込む荷物の指示を出すと、表で待つリトリアとソードの元に急いだ。
「先生!今日はどんな魔獣を倒すんですか?」
「いや…帰るんだろ?三日って話だし…」
「ちゅーちゅーちゅー」
昨日の魔獣狩りが楽しかったのか、ぶんぶんと杖を振り回すリトリアと…いささか疲れが抜けないソード、そして三匹のネズミが踊っていた。
「あらあら…結局、その子達は付いてくるのね?ちゃんと世話をしないと駄目よ?」
「はーい!」
魔女はカバンから小さな三つの帽子を出してリトリアに渡す。
「はい、使い魔の頭には…主の手で帽子を乗せるのよ。」
「つ…使い魔!?」
「俺達ってこの子の!?」
「フッ…悪くないな…ちゅぅ」
「わーマジか!使いまってもっとカッコいいのだと思ってた!」
「「「齧るぞ!?」」」
ギャーギャーギャー
さて、無事に帽子を配った一行が目指すのは…魔獣キャベタスによって荒らされた道。
森が早く回復するようにと…おかしな怪物が住み着かないように、祈りの言葉を唱えながらのぐるっと歩いて不思議な赤い粉を撒いた。
♪
嵐が過ぎれば虹が出て
傷が塞がれば痛みは引いて
魔獣が去れば平和の訪れ
祈りと力の赤い粉
ピリリと一なめ熱を放ち
生きる力を与えたもう
悪しきは苦しみ去るだろう
「…この赤い粉ってなんなんだ?」
「カレー粉よ?」
「「「旨辛!」」」
魔法とは不思議に満ちている、とりあえず…虫よけの効果によって、大ムカデなどは逃げるらしい。
…確かにだ、魔獣キャベタスがボスだったが…大ムカデの群れは厄介だった。
「ムカデは怖いからなぁ~」
「俺はあいつに妹を…」
「うぅ…ムカデコワイ…」
リトリアの使い魔…この森の住民だったネズミ達があのムカデに勝てるビジョンが見えない、まぁ…そう考えると意味はあるのか。
しばらく行くと倒木の上で蝙蝠が一匹しょげていた。
「あら…昨日の生き残りかしら?」
昨日はキャベタスの他に、デカいトカゲとムカデと蝙蝠と戦った。
昨日戦ったのは大型犬ほどのサイズの蝙蝠だったから…この手乗りサイズの蝙蝠が仲間とは思えないが…
「よし、リトリアハンマーせっと良し!」
ブンブンブン
リトリアは殺意満々に手にしたステッキをバラシ組み立て…ひも付きハンマーに改良した。
「あー…そこの美人のおじょうさん…聞いて下さい。」
「なんだ…味方だったわこの子!なんでも言って!」
「切り替えがマッハ!!」
聞けば蝙蝠は最近親戚の牙蝙蝠に誘われて、魔獣騒ぎで弱った動物も多いこの森に越してきたそうだ…弱った動物たちを襲い、干からびるまで血を啜る毎日。
しかし…蝙蝠は実はフルーツ蝙蝠で、正直生臭は嫌いだった。
「可哀そうに…、わたしも嫌いなのにピーマンやニンジンを残すと怒られて…悲しみに眠れぬ夜もあるわ。」
「くっそどーでも良い話してる!!」
リトリアと蝙蝠は打ち解け合い、そして…実は仲が良くなかったらしいデカい蝙蝠たちをリトリアが倒したと聞いた蝙蝠は、リトリアの前に出されるピーマンとニンジンを食べる事を条件に一行に付いてくることになった。
その頭の上には、魔女お手製の三角帽子が乗っている。
「よぉー新人、おむすびはやらないからな!」
「おうよ…だが、梅干しってーのはお前にやる!」
「感謝しろよ!」
「えっ?あっ…はい。」
ルンルンルン
仲間も増えて、森の雑用も済んだところで…一行は魔女の裏庭、畑エリアに戻ってきた。
家に戻ればアカネと案山子達が出発の準備をしてくれてるはず…が
ピク…ピク…
「あ…アカネぇええ!?」
魔女が慌てて駆け寄る、アカネが白目で泡を吹いて倒れていた。
「どうしたんだ!?」
「アカネさん!?なんで!?」
アカネは魔法は使えないが、銃と鉈を使いこなす戦闘のプロフェッショナル…
動き回る野菜達を普段は一人でねじ伏せ収穫し、ちょいちょい危険があるこの土地で女一人で生きている猛者である。
…一体…何があったらこんな事に…!
「みんな警戒して!!魔王かもしれない!!」
魔女は即座に胸元のネックレスに手を伸ばし、術式を発動…微妙に浮いた。
ソードは腰の剣に手を伸ばしつつ…額の魔女マークを洗い流した事を後悔する…
そしてリトリアは…
「あっお嬢ちゃん、わかった…台車の下に犯人がいるわ。」
手乗り蝙蝠の言葉を聞いてリトリアは台車の下を覗き込んだ、…そこには振るえて丸まる白蛇がいて…尻尾を掴むとピーンと伸びて気絶した。
「気絶しちゃった…気弱な子ね…」
白いステッキのように硬直した蛇、蝙蝠曰く…この子がアカネを気絶させた犯人らしい。
リトリアが魔女に説明すると…魔女は疲れた感じで術を解き、地面に着地。
「アカネはウネウネ系が苦手なのよ…蛙は平気なのに不思議なんだけど…」
一行はアカネの目覚めを待って出発した。
白蛇もなんやかんや見捨てられず…リトリアが使い魔の帽子を被せた。
「あなた私が助けなかったら、アカネさんに串焼きにされてたのよ!」
「うわーん!ありがとうです姫様!」
…
……
…………
こうして最後の三日目にして、リトリアは使い魔5匹を連れて山脈の東へ帰ってきた。
ネズミの名前はねーちゃん、ずーちゃん、みーちゃんとして、蝙蝠は飛影、白蛇の名前はステッキとした。
「いくわよ皆!ソードの荷物からエロ本を探しなさい!」
「無いわ!やめろ!」
「心拍数上がったから怪しいですよ隊長」
「むむ…鞄じゃないなら…マントの裏地とかどうかしら?」
「隊長…女の写真が出てきました!服は着てます!」
「逮捕!くらえリトリア=ハンマー!」
ギャース ギャース
ズズズ…お茶を飲みながら魔女は思う。
「動物の声が聞こえるなんて…本当に才能の塊ねぇ…」
…あとは、時間をかけてゆっくりと…魂を育てて行けばよい。




