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小さな鍵の物語~リトリア王女の魔女修行~  作者: 前歯隼三
魔女の庭の冒険編
20/32

魔獣キャベタス4…リトリア王女の大活躍

いきいき書けてよかった。

 さて、リトリア王女という人物について…今更ながら語ろうと思う。

 彼女は銀の木の国<シルヴァーウッド王国>の王女として生をうけた、両親に可愛がられ…王族に仕える騎士や従者達にも甘やかされて、花よ蝶よと愛でられて育った。

 なんの苦労も知らず…温室育ちの御姫様…っと、直接彼女を見た事が無い国民達はそう思って居た事だろう。…が、真実は違う。

 

「衛兵!であえであえ!…王女が逃げたぞぉおおおおお!」


 城内は毎日お祭り騒ぎだ、リトリアが大人しくしていたのは2歳まで…物心ついたらもう駄目だった。

 鳥が空を目指すように、魚が大海を泳ぐように…彼女の生まれ持った本能は、常に城の外に向いていた。


「みんな今までありがとう!私きっと…立派な海賊になってみせるから!」

「誰だ王女に外の話した奴はぁあああ!?」


 王女は外に憧れていた、港で海賊が出たと聞けば…海賊ってなんぞと憧れて。

 城に冒険者の一団がくれば、なんやかんやで憧れて。

 そう、彼女は好奇心と行動力の塊だった。

 ベッドのシーツとカーテンと服を結んで窓から垂らし…逃走試み捕まって

 親しいメイドをお風呂に誘い、服を奪って逃走中に捕まって

 門番に労いの声を掛けつつ、お茶に毒を盛り捕まって


「…リトリア、もうちょっとな…うん、もうちょっと大人しくしてられないか?」

 ジャガ王は牢屋に居れらた娘に言った。


「お父さんは鳥に飛ぶことを辞めろと言うの?剣士に剣を振るなと言うの?」

「いや…剣士には普通に言う事あるぞ、危ないだろ自由気ままに剣なんか振られたら」

「ブー!!例えを間違えたわ!」


 牢屋の隙間からお茶を差し入れ…父と娘の会話は続く、平和の時代と言っても先王の時代は戦で荒れ果てたこの国だ、地方によってはまだ復興の支援を必要とし、各地に遺恨の種も多い。王として、平和を守るジャガ王は…父としては情けないながら、脱走を試みた娘を説教する…こんな機会が無ければ娘と話す時間が無かった。


「お前を城の外に出せないのは悪いと思っておるよ、だがな…そうだ、鳥だって嵐の日は飛ぶのを辞めるだろう?…この国は一見平和に見えるが、まだまだ嵐の名残がそこかしこにある…だからな…」

「大人しく待つの?いつまでかしら?…明日まで?ブーっだ!」


……


「お母さんはずっと遠くから来たんでしょう?誰も知らない遠くから…海よりもっと遠くから」

「……あぁ」


 リトリアの母は、リトリアが幼い時に死んでしまった。原因不明の病だった…思えば、その時からリトリアはより苛烈に外への憧れを行動に表すようになった。


「母さんは…戦の時代にな、海を渡ってきた冒険者だった。先王の元…父さんと母さんは肩を並べて戦ったんだ…母さんは、故郷については多くを語ってくれなかった。」


……

…………


 リトリアは、花よ蝶よと愛でられる…高貴で純粋な、ありきたりな王女様とは一味違う。

 だって彼女の体には、戦の時代を駆け抜けた父と母…二人の血が流れているのだから!


…だから!


 いつかチャンスを手にしたならば、彼女は全力で挑むだろう。

 どんな危険があろうとも、彼女は恐れず挑むだろう。

 未知への憧れ、自由への本能…そして誇らしい両親の血が、彼女をそう形作った。

 彼女はそういう風に生まれたのだ。



   ◆    ◇    ◆    ◇




「ぎゃぁあああ!嬢ちゃん!はやくぅう!八首蛇も出てきた!」

「あっちに大ムカデの群れが見えるぞ?」

「うわっ爆発した!ナイスだボウズ!じょうちゃん…早く早くぅう!」


「だぁあああ!煩い!任せなさい!」


 魔法陣を画くのは案外難しく面倒くさい、まず草を抜き小石を退けての場所づくり…これはネズミ達がやってくれた。

 続いて完璧な正円を描くのだが…


「そい!そい!そい!」


 ッガ!ッガ!ッガ!


 リトリアは手にした杖<サークルステッキ>の持ち手を回して分解した。杖の上部が外れて…そこは片手で振るう金槌となる。


「そい!そい!そい!」


 ッガ!ッガ!ッガ!


 残った杖を地面に打ち込み…またクルクル回すとまたばらける、今度は地中に埋まった部分が外れて…手に残った杖と、地中の杭は、細く白い糸で繋がれている。


「よしっと、ネズミさんどいてね!え~っと…内円は二歩、外円は三歩っと。」


 ようはコンパスの要領だ。円の中心に杭を刺し、紐の長さを固定すれば…ひもがピンと張るようやや外に引っ張りながら、杖を地面に引きずり一回り、こうして魔法陣の円が出来る。


「よっしっと、ネズミさん円に入らないでね。」


「「「ぎゃぁあボウズが吹っ飛んだぁあ!」」」


「おk、えーっとベジタールのマーク画いて、こっちに魔女のマーク…っと、文章は…対価は…」


 カリカリ…カリカリ…


「喰らえ!収穫の火<ハーヴェストファイア>!」


 憧れた魔法が頭上を駆ける、どうやらソードが放ったようだ。


 カリカリ…カリカリ…


 そんな物見てる余裕はない。


 カリカリ…カリカリ…


「出来た!んだば仕上げに煙玉!そい!」


 ボファンと緑の煙が空に昇る…これで先生は来るだろう。


「嬢ちゃん終わった?助かる?」


「えぇ、先生が来たら魔獣は居なくなるらしいからね。結構遠くまできちゃったから…あと15分ぐらいかしら?」


「「「げぇ…マジかよ」」」


 リトリアが陣を描いたらそれで助かると、勘違いしていたネズミ達は青ざめる。

 分相応に臆病な彼らの、その反応は正しいと言える。


「さぁーてと」


 …さて、リトリア王女という人物について話をしよう。

 彼女はネズミ達のように、分相応という言葉を知らない…か弱い女だとか、王女の立場とか、魔法まだ習っていないとか、頼まれた仕事がどこまでだとか…そんな細かい事を、いちいち彼女は考えない。


 ブンブンブン


「…っと、イイ感じに使えるかもねコレ。」


 サークルステッキ、魔法陣を製図する為の道具にさえ、彼女は役割を越えた役割を与える。

 地面から抜いた杭は、細く頑丈な紐で杖に繋がり…


 ブンブンブン


「よし!ソード加勢にいくわよ!」


「「「ええええええええ!?」」」


 ネズミ三匹の声が重なる。 

 …一方、必死に戦う少年は「そんな気がしてた」と顔に出した。


「喰らいなさい!リトリアハンマー!」


 振り回す杭で撃ち落とした飛ぶ蝙蝠を、製図用ハンマーでぶん殴る。

 こうして、リトリアは与えられた役割をこなし

 ソードも彼女が仕事をする間だけ、無防備な時間を守り切った。


「収穫の火<ハーベストファイア!>!…正直お前がおてんば王女で助かったよ、情けないけど。」


「カッコいいわねその魔法名…、まぁ普通の王女様なら、泣いてうずくまる状況でしょうけど」


 彼女はリトリア=シルヴァーウッド

 戦場を駆けた父と、冒険者の母を持つ…生まれながらのじゃじゃ馬娘!ジャガ王の娘だからジャジャジャガ娘!


「ハハハハハ!城の衛兵達さえ倒して来た!私の戦闘スキルを恐れるがよい!」


 ………「多分俺より強いんじゃないかな」ソードは悔しさ半分、安心半分でそう思った。

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