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小さな鍵の物語~リトリア王女の魔女修行~  作者: 前歯隼三
魔女の庭の冒険編
19/32

魔獣キャベタス3…そうして戦いは始まった。

やっとこさ、やっとこさ始まった!

 魔獣キャベタス

 全長30メートルはあろうかと言う、トカゲ型の植物性モンスターである。


 「雄はキャベツ、雌はレタスの葉で身を包む、グリーンドラゴンって説もあったけど…実際はうん、丸ごとレタキャベ…いいえキャベタス。」


 正体は魔女の庭でよく見る、動く野菜達と同系統の…野菜だった。

 ただ…キャベツやレタスとしての原型…丸いボールのような形ではなく、運動に特化したのか手足に首と尻尾がある変り種だ。


「じゃぁ、みんな手はず通りに動いてね!」


「おう!」

「わかったわ!」


 魔女をその場に残して、リトリアとソード…おまけに鼠三人は即座に道を引き返して距離を取る。


トトトトト

「あった、ここで描こうかしら?」

「いや…もう一つ前のにしよう、近すぎると怖いだろ?」

「んもービビりねぇ」


 キャベタス退治に必要なのは、ちょっと大きな魔法陣と…そこに魔獣を誘導する作戦だ。大魔法による一撃消滅という事らしく…魔女は道中でそれぞれに役割を与えていた。


 キャベタスを抑える時間稼ぎと、陣への誘導…そして魔法発動は魔女

 リトリアが魔法陣を画き

 ソードがその間リトリアを守る


 魔法陣を画くのに適した…開けた場所は道中で幾つか見つけていた。

 ソードの耳が川の音を捉え、道を外れて駆け下りて行く…この川べりは、そんな場所の一つ。あぁ…くそ、やっぱちょっと草とか抜かなきゃダメか?


「鼠さん達、ここらへんの草抜いて貰える?お昼におにぎりあげるから」

「「「任せろ嬢ちゃん!」」」


 リトリアは荷物をドカドカと卸し、今朝方魔女に貰った杖を手に取る。

リトリアの肩を越える、長め細身の白杖で…その名も。


 「サークルステッキ!まだ使った事はないけど…教科書で使い方は知ってるわ!」


 ……まったく、この王女は行動に迷いが無いのだ。本当に…


 「よし…俺は俺の仕事をするか…10発だ10発」


 ソードは周囲に意識を向ける。目は自分達が出てきた森の藪だが、集中した土小人の耳はかなりの範囲を警戒出来る。

 気がかりは道中の魔女の発言だ。


「私と離れたら気を付けてね…森の獣は、魔女には手を出さないだけだから。」


 ジャリリと

 背後の河原から音が聞こえた。

 小石だらけの地面の上を這うように…大きなトカゲがこちらを見ている。


 ソードは腰の短刀に右手を伸ばし、左手は案山子から奪った木札を握る。


 「よっと、あっねずみさん、そこの小石もどけといて…あと穴塞いで!私はこの石を…ふぬぅうん!そーい!」


 …まだまだ時間がかかりそうだ、その時間を作るのがソードの仕事だ。




   ◆    ◇    ◆    ◇




 さて、二人が駆け出して行ったあと…魔獣はモゾモゾと動き始めた。大地を揺らしながら体を持ち上げ、新鮮なサラダの匂いをまき散らしながら頭を振るう…、水で洗ったレタスを振ったように…水滴が小雨のように森に降る。


「さてと、もう少し寝ててくれた方が良かったけれど…仕方ないわ。おはよう…キャベタスちゃん……朝ご飯よ。」


 魔女はリュックから水筒を取り出した。中身は魔女愛飲の万能薬、魔女の紅茶だ。魔女は一杯だけ自身で飲んで、後は魔獣の背に放り投げた。


(……!? ※☆〇☆!?)


 …とたん魔獣はビクリと跳ねて、休むようにゆっくりと身を沈める…


「さぁ…染み渡るでしょう?魔女の紅茶は命の塊…貴方を作ったのと同じ薬よ?」


 魔獣は嬉しそうに体を揺する。


「おいしい?良かったわ…あぁ、大人しければ…いいえ、良い子悪い子は大人の都合ね。あなたは悪い子じゃないけれど…魔界送りにさせてもらうわ」


 嬉し気に尻尾を振る魔獣キャベタスに、魔女は優しく…どこか悲しい目を向ける。


「さて…まだあちらは準備が掛かると思うけれど…こっちも準備を進めましょうか。」 


 魔女はリュックを、倒れた木々の間に置いて…纏ったマントを裏返し…羽織直した。

 マントに描かれているのは複雑な陣だ、そして胸元から…服の内に隠していた首飾りをするりと外に取り出す。

8の字の変形、メビウスの輪と呼ばれる<ムゲン>を象徴する形のアクセサリー…そして、左手の薬指に、同じ形の指輪をハメる。


 

 ザワザワと…

 世界が歪む音がした。 

 魔女が指輪に口づけをして…音はピタリと静まった。


 「さぁ、久しぶりだから手加減出来るか解らないけど…、あの子達に良い所見せないとね。」


 魔女がトンと地面を蹴ると、ふわりと体が浮き上がる。


 「さぁ…森を破壊する魔獣キャベタス。アナタは魔女の手から恵みを受け取ってしまったわ…これで準備はあと二つ」



 さぁさいよいよ始まった。

 城に帰ったリトリアが、皆に話た…魔女の庭での冒険譚、そのハイライトになる戦いだ。


 魔獣対魔女

 水トカゲとソード

 そして魔女見習いリトリアと、ネズミ達による美しく完璧な陣の作り


 「なんだか姫様だけ地味ですよね…」


 そんな評価を受けると知らずに、リトリアは額に汗して整地を終えた。


 「魔法ってダルイワわ!イメージと違い過ぎるゥゥ!」


 頑張れリトリア!魔女もソードも待っている! 

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