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小さな鍵の物語~リトリア王女の魔女修行~  作者: 前歯隼三
魔女の庭の冒険編
18/32

魔獣キャベタス2…小さき者とリトリアの歌

この期におよんで新しい連載

「異世界転移したら持ち物がカレーだった件」始めたので、興味があれば是非


最初に気が付いたのはリトリアだった。


「何か言わるわね、むむ…いっぱいだわ」

「は?」


 大きな何かになぎ倒された木々、巨大な質量によって作られた雑な道を一行は歩いていた。

 先頭を警戒していたソードはリトリアの発言に虚を突かれる。…が、即座に気を引き締め辺り…もう一度、より一層の注意で辺りを探る。


(服を着た猿がいるぞ)

(あれは確かひとって生き物だ)

(アカネさんと同じ生き物だ)

(油断するなよ、ひとは残酷な生き物らしいぞ)


 ザワザワと、草木の揺れる音に交じり…虫の音よりも小さな囁きが確かに聞こえる。ソードは昼から逃げて夜に生きる種族土小人だ、他の能力はからっきしだが、事夜目と耳には自信がある。そのソードの耳を持って、ギリギリ聞き取れた会話だった。自身の心音を聞くより些細な音だ…どうしてリトリアは気が付いたんだ?女の感か?


「居る!魔女さんどうする?なんかすごく警戒されてるぞ?」

「あら~?森の住民だろうけど…私の姿見れば出てくるはずよ?」

「先生、わたし…歌います。」


「「え?」」


 リトリアはゆるりと前に出た。頭にかぶったフードを後ろにずらし、青くウェーブのかかった髪を風に晒す。

 腰のベルトにぶら下げた袋から、オヤツに持ってきた塩ナッツを一つかみ取り出して、右手には今回持ってきた装備品、白く細い杖を持っている。



 トントントン


杖の持ち手、金づちの様になった部分で手近な岩を3回叩いて、塩ナッツを空に撒いて曲は始まった。



 ♪

 こんにちわ小さなお友達

  私はリトリア リトル=リア(小さな娘)

   怖がらないで歌を聞いてね 一緒に楽しく歌いましょう


 カエルも虫も、鳥も獣も、みんな大好きは歌う事



 トントン トトトン



 ♪ 

 小鳥は朝に歌うけど、夜には虫が歌うけど

  どうしてお花は歌わないの?それは踊りが好きだから


 風に揺られて楽しく踊る、木々はサワサワ木の葉で拍手

 歌えない蛇も舌でチロチロ、リズムをとって楽しく過ごす


 トントン トトトン



 ♪

 こんにちわ小さなお友達

  私はリトリア リトル=リア(小さな娘)

   怖がらないで歌を聞いてね 一緒に楽しく歌いましょう

   歌えないなら踊りましょう


 心臓の音がトントンと、リズムをとって居るのなら…きっと楽しく歌えるはずよ、きっと楽しく踊れるはずよ。



 「……ワオ!」

 魔女が思わず変な驚き方をした。


 「あぁ、アレだ…詩は好きだぞ、詩は。」

 ソードはちょっと優しい瞳でリトリアの背中を見守った。


 「なんでちょっと悲し気な目で見るのよ!?私の美声にむせび泣きなさいよ!詩が素敵なのはありがとう…今度サインを書いてあげるわ」


 「いらねーよ!音痴!」

 「ギャース!」

 「フフフ」


 リトリアは城に訪れた吟遊詩人に憧れて、いつか王女なんかやめて歌いながら世界を旅したいと思う程度に歌が好きだった。

 楽器の演奏はそこそこ覚え、将来世界を震撼させるであろうオリジナルソング…と言う名の黒歴史をつづったポエムノートも3冊は溜まった。

…しかし、残念ながら音痴だった。


 「うぅ…旨い!ほど良い塩味!」

 「お…おま、まだ油断するなって…食うなよ、え?そんなに美味しい?」

 「警戒を怠るなよ、ちょっと歌が上手いからってな、ダンスは俺の方が上だしな」


 緊張感の抜けた一行の耳に、聞きなれない声の会話が聞こえてきた。

 見れば森の木々の陰から…大きな耳を下3匹の鼠が顔を出している。


 「嬢ちゃん…いいリリック(歌詞)だったぜ、だがな…そんなんじゃ俺達ソウルブラザーの、警戒心を解く事は出来ない…もっとナッツが必要だ。」


 「ちょろい!!」


 こうして、3匹の道連れが出来た。

 彼らは魔獣キャベタスによって潰された<小さき者の町>の生き残りだそうだ。一行の目的がキャベタス退治と知って、3匹の鼠は案内役をかって出た。


 「小さき者の町…潰れちゃったのね…残念だわ、あそこのドングリで焼くクッキーは美味しかったのに…」


 魔女は顔を曇らせた。


 「ドングリクッキー?あぁ…食った事あるな、アカネさんが持ってきてくれたやつだろ?え?アカネさんの知り合いなの?」


 魔女はこの森では顔パスぐらいの、有名人のつもりであったが…実際はアカネの方が有名であった。ま…まぁ、住んでるわけだし当たり前だが…その事実に魔女は少し動揺した。


 「わ…私はアカネの師匠よ!いえ…お母さんと言ってもいいわ!偉大な魔女なのよ?」


 「わかったわよ先生、落ち着いて…ナッツ食べる?」


「「「食べるぅー!」」」


「緊張感ないなぁ…おい、塩分強い物食べ過ぎると体悪くするぞ?ほどほどにな」



 さてさて

 そんな調子で歩いていると、不意に目の前の道が途切れた。

 木々を10本は覆えるほどの巨大な緑、葉っぱが壁の如く立ちふさがる…ん?

この葉っぱはサラダで見た事がある。


「この葉はレタスね…、今回のキャベタスは雌のようだわ」


 魔女が葉を少しちぎり、シャキシャキと食べながら一行に言った。


「魔獣キャベタスは、動き回る野菜の一種…オスは巨大なキャベツ、雌は巨大なレタスの葉を持った恐ろしい怪物なのよ」


 いつもより少し低い声で、必死に緊張感を出そうとしているのだが…うん、ソードのなけなしの緊張感はダダ下がりであった。


「先生…マヨネーズ持って来てません!引き返しましょう!」


リトリアの真剣な眼差しと発言が、ソードの緊張感をゼロにする。


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