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小さな鍵の物語~リトリア王女の魔女修行~  作者: 前歯隼三
魔女の庭の冒険編
15/32

道具の準備と抱えた心

本日三回目! 短いから隙間時間でスルスルすす…嘘です案外かかります。

 さてと、かご一杯のジャガイモと白菜を魔法陣の上に置いて、魔女はパチンと指を鳴らした。


「野菜を取りに来て野菜を消費するってのはなぁ」


 光り出した魔法陣、ガブリガブリという音と共に消える野菜…それに呼応するように、動き出した3体の案山子達。


「使った野菜の100倍も働いて貰えば元は取れるわ、じゃぁアカネ収穫の方よろしくね。加工場に入れといて貰えれば戻ってからやるから」


「おけーおーけー、じゃぁお前達ついて来いよ、キリキリ働くぞぉ~」


 アカネは案山子達を従えて収穫に向かう、残った魔女とリトリア、ソードの三人は魔獣退治だ。

 リトリアがピョンピョン跳ねる案山子に興味を持って、一緒について来そうなのをソードが気が付いて首根っこを掴んだ。


「ぐへぇ…はッ!?しまった、あまりに不思議にときめき過ぎて我を忘れていたわ」


「子供か?いつもフラフラしやがって…」


「さぁさ、二人も準備をしようかしら…こっちいらっしゃい」


 魔女は二人を手招きして、さきほど陣を書くのに使った杖をリトリアに渡した。


「はい、リトリアにはこれで陣を描いてもらうわよ?授業でやった13魔図の…4番、ベジタールのマークと魔王ガープの紋章ね、覚えてる?」


※6話「リトリアノート」参照


「覚えてるわ…でも、陣だけで良いの?」


「フフフ…察しが良いわね、二つの図と…このメモ通りに記号と文字を書いてもらうわ」


「むぅ…解ったけど、これ終わるまで戦い終わらせたりしないでね?私は魔女の戦いが見たいわ!雷の蛇とか茨の鞭とか!」


「善処するわ、まぁ…運が良ければ、…悪ければだけれど、ファイアーボールは近くで見れると思うわよ?」


「……?」


「じゃぁ、次はソード君ね」


「お…おう」


 ソードはドキドキしながら前に出た、これはアレだ。魔法の剣とか貰う流れだ。いや…姿を消すマントとかでもカッコいい、空を駆ける靴とかも夢がある。


「ヒャァ!」


 冷たい感触が額を撫でて、思わず変な声がでた。小さな下で舐められたような変な感触…魔女の手には赤いインクと筆が握られていた。


「よし、ソード君…案山子から取った木札もってるわよね?」


「…?あっ…あぁ、持ってるぞ?使えないって話だけど、売れるかもしれないしな」


「フフフ…今、その札は使用可能になりました。」


ッちゅ


「ひゃぁん!」


「ええええええ!?先生何してるの!?」


 魔女はソードの額にキスをした。


「これにて、君は魔女の所有物…案山子の一人、ソード=<リア>=ウッドカットよ」


 むむん、額の陣に熱を感じる…そして、目の前の魔女の存在が…少しだけ大きく印象的に脳に入り込む、リトリアと同じぐらいに主張の強い妙なオーラだ。


「案山子?…って事は、あぁ…陣は魔女と悪魔の契約書だから。魔女の案山子になれば利用できるって事なのかしら?ぐぐ…魔法が使える?羨ましい!」


 眉を寄せ、目をぱちくりしつつ、リトリアは習った授業内容を正確に思い出して理解に至る。


「そうよ、私が魔獣と戦う間に、リトリアには陣を書いてもらうわ。そしてソード君はリトリアを守っていてもらいたいの。元々それが仕事なのよね?」


「あ…あぁ、もちろんだ。最悪はあんたを見捨ててコイツを担いで逃げ切るぞ?」


 ソードは城の兵士だが、剣も触れないザコ兵士だ。自分の力は過大に見ない、逃げ足には自信があるので最初からそれを使ってリトリアと使命を守る所存だ。


「フフ…自分の実力を弁えてるのは良い事よ?でも安心して、今のあなたは力を手にした。燃える火球をイメージして収穫の火<ハーベストファイア>と唱えなさい、あっ今は駄目よ?あんまり使うとまた畑が無くなっちゃうから!」


 魔女は説明しながら少し慌てた、そも、この魔法を案山子が一晩撃ち続けての野菜不足…命や魔力じゃなく、代償が野菜と思えば気楽な魔法だが…タダではない。ソードは恐る恐る聞いてみた。


「ちなみにだけど…一発撃つと、どれぐらい野菜なくなる?」


「大根1本」


「「安い!」」


 思ったより易くて、ソードとリトリアは驚いた。なにそのコスト…ちょっと肩の荷が下りる。


「何言ってるの?魔女の畑の野菜…命のみ…コホン、紅茶の材料にもなる動く野菜よ?大根一本でも銀貨3枚はするんだから」


「ぎ…銀貨三枚!!」


 銀の木の王国の日陰者、木陰の町でギリギリを生きてきた少年には…目が回るような大出費だ。


「お…俺のひと月分の食費じゃねぇか」


 ソードの発言に、魔女とリトリア…今度は二人の動きが止まる。


「あれ?銀貨1枚で銅貨10枚…銅貨1枚で黒パン1つ…相場ってそんな変わってないわよねリトリア?」


「…た…多分、私家出して下町で買い食いした時そんな感じだったと思うわ」


 震える少年は、どうやら魔法が打てそうに無い…精神的な問題だ。育った環境の問題だ…魔女はいささかミスを犯した。


「お…落ち着いて、無駄に打ちまくってもらっちゃ困るけど、必要な時には使って貰わないと困るのよ?ど…どうかしら?一発空に試しうちとか…ね?あっそうだ!今日のこれは私からのお仕事って事で…お給金金貨3枚あげるから!ほーら…魔法十回は使えるから!」





 こうして、魔獣退治の準備は整った。

アカネからもらった地図を頼りに、一行は巨大な世界樹の双葉…その根元に広がる双葉森へと歩を進める。


「じゅ…十回までは大丈夫、十回までは大丈夫…」


 未知の土地へと進む不安、魔獣との戦いを控えたいささかの恐怖と興奮…そして、妙な緊張を抱えて、一歩一歩と歩は進む。


 (そんなお金が大切なのに…あの時はご馳走してくれたのね)


 リトリアはソードと出会った時の事を、家出をして…木陰の町で出会った少年との食事を思い出す。屋台で買った肉詰めの饅頭。初めて口にした庶民の味だ。


 不安と恐怖と興奮と、緊張に更に…暖かな気持ちが加わって、一歩一歩…小さな小川と橋を超えて、なぎ倒された木々の道を見つける。


二人の過去とか書きたいけど、広げ過ぎるとまとまらないし…悩みどころ。

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