朝のひと時
魔女の裏庭、世界の壁の向こう側にて一行は穏やかに朝を迎えた。
昨日は暗くて解らなかったが、こちらの世界は延々と続く森であった、アカネはその中でも切り開かれた農地、魔女の裏庭の管理人として…丸太で作った雑な家に住んでいる。
外に風呂とトイレと調理場、家は居間と寝室と押し入れの…山奥という立地もそうだが、女性が暮らす環境には思えない質素さだ。
「うわぁあああああん!カボちゃぁあああん!」
「いやー、魔女の料理はやっぱうめぇな!そこだけは私も尊敬するぜ!」
さてさて、そんな環境で迎えた朝は…悲しみと喜びに満ちていた。
本日の朝食メニューはカボチャのチーズ焼きと冷製カボチャぷりんだった。
「ごめんなさいね…二人には隠していたけれど…昨夜カボちゃんは…うぅ…旨い!美味しい!おかわりもあるからね?」
「まぁ…、じゃぁお替り貰うかな」
「ソード人でなし!あんたはカボちゃんに友情を感じていなかったの!?」
「うーん…感謝はしているけどなぁ…旨いぞ?」
すきっ腹を抱えて明日をも知れぬ生活をしていたソードにとって、喰える食えないは大きく重要な問題であった、いささかドライな自覚もあるが。
「あのねリトリア…植物はその土地に根を張るでしょ?その根を切って…土地を離れたらどのみち長くは生きれない。カボチャの馬車って元々そういう物なのよ。」
「うぅ…」
「植物はわざわざ食べられるように実を付ける、動物に食べて貰う代わりに種を遠くへ運んでもらったり…大切に守って貰うのが彼らの選んだ生き方なのよ。カボちゃんを大切に思うならしっかり食べて、そこのトイレで種まいて来なさい」
「食事中に凄い事言い出したよこの人!」
なんだかんだとリトリアも朝食を頂いた、泣きながらお替りを二回した。
…………
「さて本日の予定ですが、畑の収穫と害獣退治…そして夜はみんなで授業をします!」
朝食の片づけを終えて、紅茶を飲みながら魔女は言った。
「えぇ…授業はお休みしないんですか?」
「畑の収穫は解るけど…害獣退治?」
リトリアの不満は置いといて、そもそもここに来た理由は、不足した野菜を貰う為だ。収穫は解る…けどもなんだか物騒だ、この森は元居た世界の森と違う、ドラゴンが飛び…月を喰らう蛇とやらがいる森だ。
ソードはアカネをちらりとみやる。彼女は片時も武器を手放してはいないのだ、常に腰には剣と銃をぶら下げている。
ソードの視線に気づいたのか、アカネはタバコを吸いながら話をついだ。
「魔獣キャベタスってのが出るんだよ、小山みたいな緑の怪物でな…熊や竜ぐらいなら私がぶち殺してやるんだが…あいつは私じゃ相性が悪い。…んで、ちょうどいい時に魔女が来たから頼んだのさ。」
アカネはジト目で魔女を見る。
「アンタなら一瞬で消しちまえるだろ?お母さま。」
「うん…ね、私も心が痛いのよ?」
何やら意味深なやり取りだ。
「先生戦うの!ファイヤーボールね!もしくは闇の剣だったり!?」
「フフフ、そんな素敵な物じゃないわよ魔法って。」
「そうだぜリトリア、そんなんなら私だって魔法ちゃんと習ってるからな。」
予定は決まった、こうして忙しい2日目が始まったのだ。




