7. [吟遊詩人編] あなた、面白いこと言いますね。
ひきこもりだと生きていけないので、仕方なく、近くにあるらしい、コンビニまで行く私。
人間、霞を食べたんじゃ生きていけないんです。
今週のジャンプ、まだ買ってないですしね…。
そう思いながらも、ゴロゴロしてしまう私。
罪だわ~、罪な女だわ~、とか呟いてしまいます。
コンビニって24時間営業じゃないですか~、だから、今いかなくてもよくね?となってしまうんですね。
グダグタしていたらかれこれ、もう三日です。
そろそろ食料事情も厳しくなってきました。
身を粉にして起きる私。
仙人になりたいです。中国に修行に行けば成れるのかな?
今、お家と、コンビニの間にできていた停留所で少しお休みしています。
田舎にある木造屋根つきの停留所。
なんでも、勇者遠征便というのが来るんだそう。
季節限定ですが。
なんだったら、家の前に停留所作って欲しいですよね?
いやー、今日もいい天気だね!
清々しい空気に当たり、春から夏に向けての五月初頭の空気を感じています。
□□□
いつものように、コンビニに来た私。
今日はいつもと違った。
なんか、人がいる。
店員さんの環ちゃんじゃなくて。
何て言うんだろう?
吟遊詩人みたいな?
私よりも幼いぐらいの少年で、煌めく銀髪、三角帽に、緑色のローブ、首元の気取ったスカーフ、手元にはハーディー・ガーディー。
彼はハーディー・ガーディーを回しながら、何やら口ずさんでいました。
□□□
一万個の太陽
池の水は枯れ
猛火は木々を焼き
人々は灰と化す
嵐は来たりて
唸る雲を連れ添い
深淵よりいでし闇は
地上に毒を放つのだ
……
□□□
なんか……壮大な内容でした。
「変わったお歌ですね…」
そう近寄って、声をかけてみれば、
「!!…………レディー、どこから来たのですか?」
彼は訝しげな顔をしながら私に尋ねてきたのでした。
「記憶喪失なんですか~」
「そうなんですよ~、いつの間にか自分のお家しかなくて…取り残された?みたいな?」
「不思議な話もあるもんですね。ここら一帯って魔王領と呼ばれていて、レディーみたいな方が近付いて良いような場所じゃないんですよ?」
「そうなんですか?」
「近頃は物騒で、ドッペルゲンガー何て言う、友人に化けたりする怪物だっているんですから…」
「えっ、あー、いますねー」
「……」
ジト目で返されてしまいました。
「ドッペルゲンガーに会われて生きていられたんですか?」
そう聞き返されたので、
「刺しちゃえば余裕ですよ?」
と答えた私。
彼との間に10メートルぐらい距離が開いた気がしました。
彼の曲の内容は、かつて魔物を退治した勇者、そして魔王になってしまった女の子が生きていた有史時代。
その前の前史時代から語り継がれている内容なんだそうです。(それ、前史っていうのか?)
多くの人が死滅してしまって、現生人類の間には100年前のことも全くわからないんだそう。
そうなんですか…。大変そうです。
何だか、核戦争でもあったみたいな、描写ですね。
深淵よりいでし闇とか、メチャクチャかっこいい響きじゃないですか!
その後、彼とは別れて、買い物して。
環ちゃんをモフっていたら、怒られてしまった次第です。
減るもんじゃないんだからいいじゃん。ケチっ!
お店から出ると彼は消えていました。
吟遊詩人って本当に根が浅いですね…。
そんなんだと。
干からびてしまいますよ?
□□□
いつものようにお茶を飲んでいる私。
狭山茶は最高ですね。
ネギ煎餅も捨てられません。
ズズズー
沁々とした心持ちでいます。
それにしても、何をしていたんだっけ?
私は……。
まっいっか。
目に写るのは「私の物語」
何だか長い付き合いになってきた気分です。
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