2. [友人編] 友人の日和ちゃんが訪ねてきました。
働いたら敗けだ。
そんな風に思っていました。
さっきまで、狂ったようにゲームをしていましたが…。
いやっ!!最高だね。
皆が働いている中でゲームしている私。
響きが素晴らしい。
荒廃した世界を走り回る女の子になった気分が最高でした。
世界の陰謀を暴く私。素敵すぎませんか?
まぁ。
…。肝心の周りがいないんですけどね。
そう思うと何とも………何も感じない……。
あれ?
ウダウダしていても何も始まらないので、お布団にゴロンとして、大学の授業で習った我流の系統的脱感作を行います。
ウォルピとかいう名前でしたっけ?
もう忘れましたけれど。
再度お布団にゴロンとすると思い出されることの数々。
…立て込んでくる仕事、やらなきゃいけない仕事、無茶難題を押し付ける人、僕皆を見ているんだよという上っ面だけの上司…。
止めましょう。
悲しくなってきました。
こういう時は本を読むに限りますよね?
□□□
ふと、頭を過りました。
サラサラッとした髪の毛。タンバルモリヘアーの気取った女子。
ほわわーん、とした雰囲気。
頭の片隅に浮かぶのは日和ちゃんでした。
大学時代の私の友人で、憎たらしい程、可愛い女の子です。
左右のもたついた髪の毛で小顔効果を狙うなんて…卑怯だと思います。
プルっとした天然色のリップや、光沢を放つ肌、頬骨を強調するチークの色合い。卑怯と言わずして何と言いましょうか?
いつもも天然なんで、ウザさがパナイったらありゃしません。
あぁ、あの子は今どうしているかしら?
確かヒッキーの仕事しているって言ってたけれど。
ヒッキーの仕事とは何かしら?
そういえば、日和ちゃんとは連絡してないな?
そう思われたので、一首を口づさんでいました。
夢や夢 うつつや夢と わかぬかな
いかなる世にか 覚めむとすらむ
あぁ、沁々としています。
お茶が染み渡ります。濁りに濁った狭山茶程、味の良いものはありません。
人間、水の如しではないのです。
ネギ煎餅をボリボリ~、ボリボリ~としている私。
あぁ、至福です。至福の時とはこう言うことを言うんですね?そう理解に達しました。
やっぱり赤染衛門だよね!と、何にも理解していない頭で、知ったかぶりしていて。
そんな、歌の余韻に浸っている時のことです。
ピンポーン。
突然鳴り響きました。
ドアのチャイム。
これは、いけません。
こんな日に誰でしょう?
辺り一面真っ白だったじゃないですか…。
インターホンから見えるのは、なんと。
日和ちゃんの顔でした。
小春日和ならぬ、世紀末日和に訪れるとは…なんだか、穏やかじゃありませんね?
そう訝しみつつも、とりあえずお話だけでもしてみようか、と玄関に向かう私なのでした。
□□□
「お久しぶりぶりだね!」
そんな物騒なことをのたまう日和ちゃん。
ぶりぶり、とか止めてください。
吊るされて、鞭打ちで、水攻め何て…正気の沙汰じゃないと思うんですよ、私。なんだか、体が痛くなってきますよね?
天然娘は気にしないようですが…。
対面で座る日和ちゃんは狭山茶を飲むことなく、煎餅に手をつけるでもなく。
食べないの?煎餅とお茶って美味しいよ?
とりあえず私から話し出すことにしたのです。
「朝起きたら、一面何もなくて…、久々にゲームやっちゃったよ!」
「えっ!?そーなの?日和も、そーなんだよ!昨日は調子が上がってきて…」
そんなことを抜かした日和ちゃん。
私は。
彼女の首元をナイフで刺していました。
「何、…で?」
「だって、…ヒッキーの日和ちゃんが家まで来るのも可笑しいし、久々にゲームをするわけがない。何時も電池が切れるまでゲームしているぐらいだから調子何てものもないのよ…」
上手く刺した頸動脈からドス黒い血液の噴射が見られ、室内を塗装していました。
「出直してきなさいな?ドッペルゲンガーさん?」
私はそう、宣言したのです。
掃除が大変だな…と思いながら。
□□□
気がついたら眠っていたようです。
いけない、いけない。
弛んだお腹の上に乗っている開いた本。
これじゃあ、本が痛んでしまいます。
「私の物語」
一体何が書かれていたか忘れてしまいましたが、とっても楽しいお話だったことは覚えています。
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そうすると筆者のMotivationが更にUpします。