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骨の王  作者: 三井崎瑞希
第一章 七つの大罪編、的な
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人が食われる話 1

 私は残念ながら、高名な骨の御方を存じ上げなかった。ので、そっちから名前を貰うのは無理だ。

 となると、次に思い浮かぶのは安直ながら神話の神。骨の逸話となると一人しか思い浮かばなくて、そのままだと男の名前だ。

 という、悩んでないような思考によって私の名前は決定した。

 骨の逸話がある神プロメテウスから、プロメテ。

 ……。

 プロメテウス以外に骨と関わった人いないんですかね。脂身巻いた骨とか美味しそうだし私にぴったりだけれど、だからってねえ。

 ま、良かろ。

『という訳で、私はプロメテです』

『どういう訳なのかさっぱり分かりません』

 でしょうね。

 それは兎も角。閑話休題、である。そういえば、話題転換的な意味で使っているけれど、合っているのだろうか。知的に見える言葉でも、間違っていたら意味は無い。

 調べられないからこのままで行こう。うん。

 閑話休題。白ちゃんと一緒に狼を焼いちゃ食い焼いちゃ食いを繰り返した結果、なんと驚くべき事に狼肉が無くなってしまった。

『全部食べちゃいましたね』

 はい。そうですね。

 という訳で、深刻な食糧不足です。

 ので、次の洞穴を攻めたいと思います。攻城戦です。

『白ちゃんはどうする? ここで待ってる?』

『いえ……ここにいたら死んじゃいそうですし、連れて行って貰えませんか?』

 ええやで、と二つ返事でオーケーし、第二次骨対兎大決戦が行われた洞穴の前に×印を付け、その隣の洞穴の前に立つ。隣と言っても数十メートルは離れていたけれど。

 特に隠されていない、前二つに比べて大きな洞穴だ。前のが半径一メートル半ぐらいで、こっちは大体五メートルぐらい。広々しているのは良いけれど、片方の苔を食べてるともう片方に届かない。

『ここにしよう。隣だし』

『やっぱり、暗いですね。全然見えないです』

 やっぱりそうですか。

『松明でも作る?』

 白ちゃんが背負っている肉焼き棒を見る。脂塗れだから、布でも見付けたら拭いて巻いて松明になるかもしれない。多分臭いけれど。

『いえ。私、灯火の魔法が使えます』

『じゃあそれで行きましょうね』

 毛皮を切って白ちゃんが作ってくれた紐を使い、エスカリさんとラビットランス一号を纏めて背負う。

 右手を壁に当てれば用意は完了だ。

『苔、美味しいんですか?』

『美味しくはないが、決して害は無い。……筈』

 なら食べる、というだけの話だ。お腹空いてるからね。


 三十分程歩いただろうか。ここの苔の味にも飽きてきて、ちょっと歩くのにも飽きた頃。

『おい……あー、プロメテ?』

『はい?』

 エスカリさんが突然震え、念を伝えてくる。割と焦ったような口調だった。

『前からやばいのが来るぞ』

『前からやばいの来るってさ』

『えっ、えっ?』

 微妙な下りの洞穴は妙に曲がっていて、先を見通すのが難しい。

 取り敢えずは伝説の聖剣なエスカリさんを信じるとして、背中から槍とエスカリさんを下ろす。左に聖剣、右に槍のスタンダードスタイル。

『こいやぁー!』

『グララララララララ!』

 念話の中で叫んだ途端、とんでもない咆哮が帰ってきた。耳は無いけど耳が痛い。これが幻肢痛(ファントム・ペイン)って奴かい。かっくいー!

 ざりざりと洞穴の壁を削りながらやって来たのは、巨大な蛇の頭だった。

 巨大な洞穴をぴったり埋める、黒い鱗の爬虫類。恐ろしげな二本の牙からは紫の液体が滴り落ち、ちろちろと出し入れされる赤い舌はそれだけで私達を絞め殺せそうなサイズ。というか私より太い。

 ……。

『ぷ、プロメテさん!』

『早く逃げろ、馬鹿野郎!』

 ……。

 ああ。

『プロメテェ!』

 美味しそうだ。

 ところで、「僕」って一人称が大好きなんですよ。僕っ娘でもそうでなくても。これもなんか、質の悪い奴で飽和して飽きられた感ありますけれど。


 あ、この小説もどきに僕っ娘は出ませんし、そこらに飽和してる質の悪い奴です。これを読んでるあなたは多分ゲテモノ好きの物好きですが、僕はあなたが大好きです。

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