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骨の王  作者: 三井崎瑞希
第一章 七つの大罪編、的な
19/31

久し振り(体感)の仕事

 それから、一日一回やって来るオーガさん達を手加減して叩きのめしながら何日か経って、ようやく完成した服を受け取った。黒と紫を基調にしたチュニックとズボンに、黒と金銀の豪華なローブだ。骨々な私の体型でもずり落ちたりしない、良い感じだ。

 ユグドラとセフィロの分も、後から言ったにもかかわらず同時に受け取った。装飾をしないとすぐにできるらしい。

 私のも装飾要らなかったんじゃないかな。

「いえ。王の衣類ですからそれなりには」

 そうですか。

 ユグドラのは緑っぽいチュニックとズボン。木に引っかからないようにか、裾が締まっている。

 セフィロのは白のチュニックとズボン。形は私のと一緒だ。装飾とローブが無いぐらいで。

 今のセフィロは原始人スタイルに襤褸布を纏ったような感じなので、可及的速やかに着せねばなるまい。

「セフィロー? お着替えしましょうね-」

「ふく? かあさまのとおなじ!」

「同じだねー」

 幸せそうで何より。ウサ耳がびょこびょこ跳ねている。

 娘がいたらこんな気分になるのかね。


 ユグドラにも渡した。

「母様に服を頂けるなんて!」

 まあ、腰巻きだからね。ほぼ人型がそれは良くない。

 女性も多い事ですし。

 以上。


 服も手に入れた事だし、挨拶回りでも行きますか。

 私は自分の目で民の生活を見る、良い王なのだ。

 ……。

 まあ兎も角。

 ゴブリン達が元々使っていた土地は切り開かれ、小屋が幾つも立っている。ゴブリン用の平べったいの、リザード用のは尻尾があるから広め。

 エルフは、通行の邪魔にならない程度に残された木の上にツリーハウスを作っている。高い所が気に入ったゴブリンとか、ハーピーさん達、フェアリーさん達も大体このエルフ式に住んでいる。

 木があれば簡単に作れるからね。

 そんなツリーハウスの上に、ゴブリンの肩を掴んでいるハーピーさんを見付けた。

「おーい、何やってんだーい」

 呼び掛けると、ハーピーさんはそのまま羽ばたいて浮かび上がり、ゴブリンと一緒に降りてきた。

「御機嫌よう、王様。どうかなさいましたか?」

 口調はなんというか、お淑やかな感じ。見た目はワイルドな感じなのに。

「いや、何やってるのかなって思ったんだけれど、一緒に飛んでる感じ?」

「ええ、氏族長が思い付いたんですよ。私達は氏族の中で唯一空の種族ではあるけれど、ただ飛べるだけでは王様の役に立てるか分からないから、と」

 へー、真面目なんだねえ。

「私なんか軽いから楽そうだね」

「いざという時はご命令下さいな」

「うん、いざという時はね」

 あるかは分からないけれども。ま、良いでしょう。


 中心部から少し離れた所に、やたらめったらでかい小屋が五つ程建っている。その前には広場のようなスペースがあり、やたらめったらでかいオーガさんとオークさんが喧嘩していて、それを見ながら棍棒を振り回しているゴブリン達がいた。

 少し奥では、枝を編んだような的に向かって、エルフさんとゴブリン、リザードが弓の練習をしている。

「かあさま、こんにちは」

「おや母様、ご散歩ですか?」

 で、ユグドラとセフィロが寛ぎながらそれを眺めていた。

 いや、セフィロは果物をもくもく食べてる。

「まあね。村がどんなものかなって、少し見て回ってる」

「それはそれは。ゴブリン、リザード氏族の中でも向上心のある者は、オーガやオークに師事して強くなろうとしているようです。また、一部はエルフから弓の技術を得ようとしているようですね。いつの間にやら、この広場が練兵場ですよ」

 兵ってなんだよ、とか思った。

「王には相応の武力があって然るべきでは?」

「王になったの初めてだし、他の王様を見た事も無いからねえ……」

 まあ、方針としては合っているんだろう。氏族に別れて別々に生きるよりは、集まっていた方が良いに決まっているし。

「そういえば、白ちゃん知らない?」

「アスリア殿でしたら、奥でオーガ氏族長に師事していますよ。なんでも、剣を預かる鞘としての役割が云々、とか」

「よう分からんね」

 ま、多分良い事だろう。うん。


 ……コボルト達とかトレントさん達とか、どこにいるんだろう。村中探しても、気配が無い。

 まあ良いか。



 それから、大体一週間ぐらい経っただろうか。村の方向性は、概ね良い方向に進んでいた。

「若い狩人の教育は大分進んでおります」

「防衛はさして問題無く。防壁と堀は大方完成を」

「数が増えて、今の畑の規模ではまかなえないかもしれません」

「炉がそろそろ完成じゃ。リザード氏族なりから手伝いを幾らか出して貰いたい」

 第四回円卓会議。形式も大体決まり、色々な種族が仲良くするという村の方針も固まっていた。

 全体の数も五百程になり、氏族がどうのではなく、個体として得意な分野の仕事を出来る。ゴブリン、オーガ、オークを中心に、時折現れる村への脅威であるでかい猪とかを撃退する。同時に、建築が得意なコボルト、土や水の魔法が得意なフェアリーとエルフも含めて木の防壁と堀を造っている。

 食料はユグドラを中心に、トレントと土弄りが得意なフェアリーとエルフが育てる果実と、ゴブリン、リザード、エルフなんかから出る狩人達が捕ってくる動物の肉で賄っている。

 家はコボルトが中心に、単純作業はゴブリンが。デザインはそれが得意なエルフとファントムが。

 そんな感じで、村は私の指示をほとんど必要としないまま、ゆっくりめに発展していた。

 氏族長は、それぞれの氏族に対する影響力というか、そういうのを少し抑えて貰い、『円卓会議』という、村全体の指導者のような立場になった。氏族毎に固まってしまうのを防ぐ為だ。王に対する議会のようなものというか、王の代わりに仕事をするというか、役割毎に全ての氏族に指示を出すというか。

 私がさぼる為の、というか。

 私が細かく口を出さなくても、方針さえあればそっちに進んでいけるものなのだ。私は時々、問題解決の為にか、技術の発展の為ににわか知識を披露するだけで良い。

 ニートみたいな感じだ。うん。

「暫くはドワーフ氏族の蓄えで鉄を造れるが、すぐに無くなります。鉄の鉱脈を探さねば、村全体に鉄器を行き渡らせるのは難しいでしょうな」

 ドワーフ氏族のシゴウさんが言った。

 うーん。

「そうだねぇ。この森に鉱脈とかあるのかな」

「死声の谷付近になら或いは。単に森の地下にもあるかもしれませんが、探すにも掘るにも苦労するでしょうな」

「なら、探そうか。坑道を掘る技術を持ってる氏族は?」

「ドワーフには坑道掘りを専門にしているのがおりますな。単純な力仕事も多いですし、ゴブリンやコボルトからも手を出して貰いたい。身体が小さい者の方が有利です」

「防衛は今の所手が足りてるよね? 幾らか手を分けて、鉄鋼掘りに出して欲しいんだけれど」

 防衛団長のラメニさんに視線が向く。

「堀が完成の後なれば、そちらに出せよう」

「ならそれで。死声の谷に住み込む可能性もあるから、ユグドラには食糧をちょっと増やせるように言っておいてね」

 と、ファントムのマリエドさんが手……らしき部分を上げた。

『死声の谷にはマンドラゴラがおりますよ。降りる数が増えれば、あれらが寄ってくるかもしれません』

「マンドラゴラって、顔みたいな模様がある根があって、自分で歩ける?」

『ええそうです。あれの鳴き声は、定命には毒ですから。マンドラゴラの住処である事が、死声の谷とそう呼ばれる所以でもあります』

 あの美味し……くはない奴か。

 知らなかったけれど、まあ良いか。

「対抗手段とかは?」

『その研究は遅々として進まず、といったところで。ファントムでもあの声はキツいので、中々ですね。王やツノウサギ、トレント達を含む植物等には効かない事が分かっていますが』

 まあ、今の今まで知らなかったぐらいだからね。

「じゃあ、私が魔法で守れるかどうか試してみるついでに、鉱脈が分かるドワーフさんと行ってみようか。セフィロも大丈夫だろうし、白ちゃんが大丈夫なのも分かってる」

 割と大所帯だった。

 繊維を編んで作るロープをたっぷり、皆で肩に担いで出発した。

 久し振りの仕事だ。ひゃっはー。

 ところで、僕は“僕”っていう一人称がすげー好きなんですけれど、ビジネス的には皆“私”を強制されるのどうにかして欲しいですね。ほら、アメリカさん見て下さいよ。皆“I”ですよ。というか敬語も無いっすよ。


 あ、僕はリアルでは私なので別に問題は無いんですね。アレだよ。自由意思の尊重を云々的な理屈で誰かに騒いで欲しいんですよ。僕の関係無い所で。クソだなコイツ!

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