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骨の王  作者: 三井崎瑞希
第一章 七つの大罪編、的な
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第一回円卓会議

 帰り道、おかしな集団に遭遇した。歩く人型っぽい木と、羽が生えた小さい女の子と、両腕と足首から先が鳥な女性達だ。

 彼女達は私達に気付くと、慌てて私の前に近付いてきた。

 当然のようにラメニさんがインターセプトし、ゴブリンが私を下がらせた。もう一体のリザードは辺りに抜け目無く視線を送っている。

 で、白ちゃんは普通に私の横。セフィロはおろおろしている。エスカリさんが感心したように光った。

『オリジンの妖精じゃねーか。珍しい』

『なんぞやそりゃ』

『全ての妖精の原点、あらゆる創作における妖精の大元、正真正銘本物の純然たる妖精。ここまで言やぁどれだけか分かるだろ』

 せやね。

 靴作ってくれるんでしょ?

『ちゃうわボケ』

 はい無視無視。

「こんにちは。私はプロメテ。貴女達は?」

 先頭で四枚羽の蒼っぽい妖精が、私の目の前で飛んだままぺこりと頭を下げた。

「フェアリー・トレント・ハーピー合同氏族、代表のアーシェですわ。ごきげんよう、新しい王様。三氏族の動けるもの全員で挨拶に参りましたわ」

「ごきげんようアーシェさん。こっちは村で狩猟団長をしてくれているラタ・メテ・ニオと狩猟団の部下二人、私の友達のアスリア、配下のセフィロ。ちょっとお出かけ中だから、取り敢えず村に戻りましょうかね」

 ラメニさんも白ちゃんも驚いた顔をしていた。何故だ。


「母様、お帰りなさいませ。……おや? その兎耳、我と同じ匂いがしますね。我が妹ですかな」

「多分違うけれどまあ良いや。ただいま皆さん。お客さんですよー。円卓会議すっから集合なー。ニルカさん、二十ぐらい建物の確保をお願いね」

 村に戻ると、団長と以下何名かが出迎えてくれた。私は合同氏族代表であり、フェアリーの氏族長でもあるアーシェさんと、トレント、ハーピーの氏族長以外には休んで貰う事にして、氏族長達には着いて来て貰う。

「母様、他にも氏族長が着いていますよ。母様の配下になりたいとか。殺されるのを恐れているようにも見えますが」

「へえ、一気に来たねえ」

 殺しゃしないよ。


 円卓のある私の横穴で、適当に座って貰う。私、氏族長十一名、円卓から外れた別枠で三名。

「じゃ、えーと。フェアリー・トレント・ハーピー合同氏族さん他、氏族長さん達。お話を聞く前に、それぞれの氏族長さんのお名前も聞かせて下さいな」

 すっ、とトレント氏族長が手を上げる。乾いた皮がぱりぱり音を立てた。念話を受け取る。

『では、まず私から。トレント氏族長、ステップトレントのリーシェと申します。植物などの事はよく知っております故、お役に立てると思います』

 リーシェさんは、木が人の形に育ったような姿をしている。どうやら、ユグドラよりも木に近い感じだ。ユグドラは肌の質感以外ほぼ人間だからね。

「じゃあ次、私。ハーピー氏族長、ナーリ・ティルルです。見ての通り飛べるけれど、人間のせいで高くは飛べない感じですね。お役に立つかどうかは分かりませんが、全力で頑張りたいです」

 ナーリさんは灰色の羽のハーピーだ。人間の女性の、腕と足を鳥にした感じの姿をしていて、服は着ていない。

 胸とか下半身とかモロ出しである。エロさの欠片も無いけれど。

 それを言うなら私だって全裸だ。骨だけれど。

「最後に改めまして、フェアリー氏族長アーシェですわ」

 他のフェアリーは羽が二枚なのに対し、四枚、二対の羽を持つアーシェさんは蒼い髪で、身長は十五センチぐらい。ぱたぱたしてて可愛い。

 次に、立ち上がったのは巨漢の鬼だ。二本角で黒い皮膚、超絶筋骨隆々。なんかもう、凄い強いと思う。どうやって入ったんだい。

「我、オーガの長、アルダハ。戦う」

「あ、念話使いましょうか?」

『有難き幸せにございます。我はオーガ氏族長アルダハ。戦うしか能が無い者どもの中で最も強いという、ただそれだけの氏族長であります。戦になれば役に立ちますが、それ以外は何一つ役に立たぬと思います』

『正直ですね。ま、何か考えましょう』

 次。犬の頭をした小柄な人型と、豚の頭をしたでかめの人型。

「わんっ」

「ぶもー」

 ……。

『コボルトの群れの長!』

『オークの群れの長!』

 はい、元気でよろしい。

 次。黒い……影? と、小さいおっさん。

『ファントム氏族の長、マリエド。闇属性の魔法のみを研鑚してます。以上です』

 さいで。

「ドワーフ氏族長シゴウ・カレハリ。儂等は鉄を叩かせてくれるなら何でも良い」

 鉄器ゲット。リザードさん達の時も言った気がするけれど。

 以上、総勢十一名+私。椅子は残り僅か三つ。案外埋まるものですね。

「私はプロメテ。僭越ながら王とか呼ばれてます。よろしくね」

 なんか、壮観ですねえ。

「取り敢えず皆さん、魔力的なあれで私の近くにいたいって事で?」

「可能であるならそれが最善ですわ。次善は、これまで通り森に暮らす許しを頂ける事。少なくとも、合同氏族はそのような意図で参っています」

『然り』

『空を飛べたらなお良いです』

『オーガ氏族も王に仕えたく』

『オーク同じ!』

『コボルト同じ!』

『ファントムは魔力が尽きると死にますので、そこいらにいさせて貰えれば』

「ドワーフは誇りとやり甲斐を大切にする。それさえ貰えれば、幾らでも働きましょうぞ」

 ふむ。

「なんとも自分勝手な……」

 ぽつりと呟いた緑鬼さんの言葉は、どうやら聞こえなかったようだ。

 あんたも大概だからな。

「成る程ね。魔力に関しては、森の外に出ないようにはしたけれど、森の中は引き続き同じぐらい放出されるようにはしてあると思う。住む許可とかは要らないから、これまで通りに過ごしたいならご自由にどうぞ。私はただの新参だし、口を出したりはしないよ。

 もし、私と一緒にどうのが望みなら、出来るだけこの村に引っ越して欲しい。村では氏族間の争いとかとかは考慮しない。得意な事、やりたい事で村全体、村に住む全ての氏族の為に働いて貰う」

 でもまあ、私は王様とか向いてないんだよね。

「基本はまあ、そんな感じ。細かいところは自分達で決めて貰うし、意見する事はあっても命令とかはあんまりしないから」

 ゴブリンとかリザード達も、私が命令すると何がなんでもこなそうとして怖いのだ。だから団長という形で権限を丸投げした訳だし。

 現代の知識があれば色々と凄い事になりそうだけれど、残念ながら私の知識は偏っているし、学校にも途中から行っていないから基本的な事も知らなかったりする。

「そういう訳で、王に仕えるとか嫌とか、他の氏族と仲良くするなんて! とかでこれまで通り自分達で暮らすっていうなら、帰りにお土産包むから立って貰える?」

 ……誰も立たない。

「別に反逆者め! とか言わないよ?」

 無言。ちょっと円卓が揺れた。

「謝罪、ぶつけた」

 オーガの……あしながおじさんにしよう。あしながおじさんが長い脚を円卓の脚にぶつけたらしい。

 やめてよね。ビビるから。

「皆、そういう事で良いんだね?」

 無言。

「では、これより第一回円卓会議を始めたいと思います。拍手!」

「よっ!」

「ユグドラうるさい」


 で、結論。また似たような流れになるので、最終的な結果を纏めたいと思います。

 戦いが得意、戦いしか出来ないというのがオーガ、オーク。頑張って聞き取った結果、オークの長老オークシャーマンは共用語も魔法も使えるらしいけれど、基本的には腕力と性欲の権化だとか。揉め事はごめんなので、その辺厳格にするように厳命した。

 ゴブリン達は計画的に出来ているし、大丈夫だろう。私の近くにいれば知能も上がるだろうし。

 オーガはリザードよりも更に極端な武人タイプ。武器は棍棒や鉄塊、服は辛うじて腰巻き、雄しかおらず、生活能力が皆無だけれど、魔力があれば飲まず食わずでも普通に過ごせる。

 寧ろ、それによる飢餓感に耐える事が強さへの道だとかなんとか。なら私には無理だ。

 そこそこ戦えるのがファントムとコボルト、ドワーフ。

 ファントムは実体を持たない影のような存在で、物理攻撃が一切効かない。魔力を散らす聖剣の類、魔力を切れる魔剣の類でなければやられないけれど(エスカリさんが『俺ならどっちも出来るぜ』とかなんとかうるさかった)、戦闘力自体はそうでもない。氏族全体が割と個性的な連中で、戦いを極めたのもどこかにいるらしい。

 コボルトはゴブリンをもうちょい土木作業とかに特化させた感じ。一応爪とか牙はある、でも土掘ってる方が楽しいよね、というノリ。犬みたいで忠誠心は高い。ごわごわもふもふ。

 ドワーフは、争い事は好まないけれど、いざとなれば鍛冶に使う大槌とかバトルアックスとかを振り回す強靱な戦士になる。が、鉄叩いてる方が面白いぜ、みたいな。

 最後に、戦いはそんなに得意じゃないのがフェアリー、トレント、ハーピー。

 フェアリーは精霊魔法と呼ばれる特殊な魔法を使うけれど、如何せん身体が小さい。普段から精霊魔法で暮らしているお陰か、その精度も威力も高くはあるけれど。

 トレントは、族長さんのように人型の歩く樹木族(ステップトレント)と、地面に根を張る歩かない樹木族(オールドトレント)という種別があって、オールドの方は危険が迫っても逃げられないから、普段は木に擬態しているとか。ステップトレントもやはり木だから、早く動くと樹皮が割れたりしてしまう。

 ハーピーは腕が無く、脚も大きな爪の付いた指が三本しかない。空を飛ぶ為に風の魔法を使うけれど、少しでも軽い方が有利なので骨は中空、戦うと簡単に骨折してしまう。

 戦える連中には力仕事も出来そうだし、覚えて貰おう。今の所、戦うといったら狩りだし出来そうなら狩猟団に入れる感じで。

 手に職が付いてる氏族。鉄の加工が好きなドワーフ、生活に使える魔法が得意なフェアリー、それと農業が得意そうなトレントには、それぞれそれをやって貰うとして。

 防衛とかはあんまり必要なさそうか。狩りの人数を増やした方が良いのかな。

「ま、取り敢えず。皆仲良く、なるべく楽しく、お腹一杯になれるならあとはご自由にどうぞ、という感じで。狩りはラメニさん、防衛は緑鬼さん、その他生活あれこれはニルカさんが担当してるから、そんな感じで」

 ニルカさんの負担でかい気がするけれど、まあ良いや。その辺は後から決めよう。

「私は魔法の練習するから、何かあったら来てね。何か質問は?」

 無言……かと思ったら、あしながおじさんが手を上げていた。……えーっと、アルダハさんね。

「はい、アルダハさん」

『王、我等オーガは強きものと戦う為に生きております。願わくば、手合わせを願いたいのですが』

『別に良いけれど、私そんなに強くないよ? 戦うのは苦手だし、あんまり経験も無いし。それでも良いなら良いけれど』

『有難き幸せ。無礼をお許し下さい』

『いや、無礼とか思わないけれど』

 別に、平身低頭で来られるのが好きな訳じゃ無いし。つーか王様なのも成り行きだし。

 という訳で、模擬戦をする事になった。

 ところで、作業効率的に考えてモニターは三枚あるべきだと思うんですけれど、二枚だった時は二枚で別に不便してなかった事に最近気付きました。作業効率って、そもそも椅子とか机とかクッションとか、充てられる時間の方が大事ですもんね。


 あ、僕は三枚無いと死にます。一枚はモニターアームで動かせるようになってないとなお死にます。つまり今、僕は死んでます。

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