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骨の王  作者: 三井崎瑞希
第一章 七つの大罪編、的な
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うさみみうさうさ

 取り敢えず蛮族スタイルになったユグドラは確かに木らしく、植物について本能的に理解しているらしかった。木として長く生きた経験とかもあるらしい。

 空いているスペースに案内すると、この木人は嬉々として土を手に取った。

「母様、この辺りは土壌も良いですし、作物を育てるのに最適ですよ。人間から麦なぞを手に入れれば、それも一緒に育てられるでしょう」

「良し。なら、農業担当に任命します。取り敢えず一体……一本? 一人? で、主食になりそうな奴を育ててね。今は三氏族+三だから規模はそんなにいらないけれど、将来的には拡張も視野に入れつつね」

「お任せ下さい」

 いつまでも狩猟民族している訳にはいかないし、農業と畜産をしないとね。あんまり狩りをしなくても暮らせるように。

 あと、雌ゴブリンが主体になっている木の実集めとかも止めさせて、別の仕事に就かせよう。

「では、試しに『イスギの実』を育ててみましょう」

 五本指の、色と模様に目を瞑れば人にしか見えない手で地面に触れる。と、突然何も無かった地面から芽が生え、若木を経て低木になり、葡萄のような実を付けた。

 ユグドラは無造作にそれをもぎ、差し出してくる。

「はい、ありがとう」

 ちょっと感謝すると、満面の笑みで喜んでくれる。良いんだけれどね。私も嬉しいよ、うん。

「毒味を、王よ」

「大丈夫大丈夫。こんなに美味しそうな見た目のものに毒が入っている訳が無いから」

 緑鬼さんは突如現れた人型の木に警戒感を露わにして真っ先に駆けつけたけれど、私が作ったと言うと一瞬で警戒を解いた。ユグドラが私を母様と呼ぶと、ラメニさんが警戒を強めた。ニルカさんは魔力に驚いていただけだ。

 とはいえ、その程度。私自身、完全にユグドラを信用した訳ではないけれど、それを言うなら緑鬼さん達だって、白ちゃん程信用している訳じゃない。毒味をさせたって意味は無いのだ。

「いただきます」

 葡萄の粒を口に運ぶ。濃い紫の皮は薄ら甘く、中身は僅かな酸味と強い甘みが絶妙だ。果汁が溢れて地面に垂れ、染み込まずに水玉を作った。

「甘くて美味しい。良いね」

「やった! 有難う御座います母様!」

 にこにこ嬉しそう。何粒か取って緑鬼さん達にも渡す。

「ほう。魔力が凝縮されていて、素晴らしい果実ですな」

「美味」

 ラメニさん、普通に食ってるけれど良いのかい。

 その後、ユグドラは林檎っぽいのとか梨っぽいの、桃っぽいの、レモンっぽいのを次々と育て、魔力さえあればすぐさま収穫出来ると言った。魔力を一杯に溜め込んだ、さっきのみたいな凄まじく美味しいのは、あまり数が出来ないらしい。ユグドラの魔力では一日に一つ出来れば良い方だという。

「魔力を他に使わず、一日の魔力を全て一つに注ぎ込めば確実に一つできます。ですが、普通の実は一つもできません」

 魔力がほぼ無い普通の実は沢山作れるというので、そっちは村に配分して、時々できる魔力が濃いのは特別な個体に報酬としてやる事にする。

 まあ、これまでの働きに報いるという事で、魔力を沢山分けて十個程作らせ、緑鬼さん達に渡した。後は好きに使うだろう。

 即席、第零・二回円卓会議により、彼は生活団、農業担当に決まった。魔力で果実を育て、同時に普通の栽培方法を纏めて部下に教える仕事だ。


 籠一杯の果実を両手に抱え、着いて来た白ちゃんとラメニさん+部下のゴブリンとリザードにも同じものを持たせ、遠慮無く口に放り込みながら森を進み、やって来ました死声の谷。エスカリさんは籠の外に吊してあるから、何かあれば念話するだろう。拒否ってるけれど。

 覗き込んだところで覗き返す植物も動物もいないこの場所で、最初に出会ったお肉(あいつ)が、第二段階の標的だ。

 嫌に長い角を持つ、二足歩行の兎。通称イッカクちゃんである。ゴブリンはツノウサギとか呼んでるらしい。正式名称は知らねえ。

「なるほど。この魔力が濃い王の実を餌にして、あの一角獣を誘き寄せるわけですね」

 ゴブリンが感心したように私の籠を覗き……お前流暢に喋るねえ。

「リキ様が王の果実をくださって、魔力が強くなりました。感謝です、王」

 こいつは緑鬼さんの腹心的な奴だったのか。

 この森の生物は皆、王の魔力を浴びている。植物は得た魔力を全て成長に使ってしまうし、動物も生きる為に必死だから、狩った所で得られる魔力は微々たるものだ。

 その点、あの葡萄っぽいのを始めとする特別製、総称して魔力の実(私命名)、通称王の果実(緑鬼さん達命名)は、強制的に成長を止められ、得た魔力は全て一つの果実に溜め込まれる。それを食べれば強くなれるとは思っていたけれど、まさか一つでこうなるとは。

 簡単に言えば、私が木に対して行ったのを多少遠回りにした感じ。大量の魔力を得られれば、進化なり成長なりに使えるのだ。

「王、では大量の普通の実は何に?」

「それはおやつ。食べても良いよ」

「なるほど!」

 成る程じゃねえよ。良いけれど。

 最後に二つ程作らせて持って来た林檎な魔力の実を、谷底に軽く投げる。ああ、勿体無い。

 五分程で、お誂え向きなやけに身体の小さいイッカクちゃんがこそこそふらふら走ってきて、落ちて若干潰れた林檎もどきをくんくんし始めた。

 身体は小さく、角は半ばで無残に折れている。左前足がだらりと下がっているから、そっちも折れたりしているのかもしれない。

 凄く美味しそう……じゃなくて、良い感じに弱っている。

『あんなので良いのか? もっとでかいのを強化して仲間にした方が強いだろうに』

『良いんだよ。弱ってる方が忠誠心的にも、他にもね』

 大きいと食べたくなるじゃない。

 兎も角、ここで念話の出番である。原稿は覚えた。

『力が欲しいか』

 仰々しく、荘厳な感じで。

 帰ってきた思念は、念話でさえ言葉にならないものではあったけれど、間違いなく肯定。生きたい、負けたくない、そして終わりたくない。

『耐えられなければ死ぬやもしれん』

 肯定。折れた角と前足の無念。力への渇望。

『宜しい。ならば呉れてやる。耐えて我が前に顕れよ』

 尚、台詞はエルフさん監修である。

 籠を持ったまま、崖を蹴って兎の元へ。勢い余って行き過ぎそうになりながらも何とか止めて、逃げられる前に胴へ触れて魔力をどかっと一纏めに送り込む。

 瞬間。ユグドラの時と同じく、変化は瞬間的なものだった。

 僅かに光を纏い、急激に形が変わる。胴は細く、指は五指に分かれ、毛皮が消える。角は短く細く鋭くなり、多少前へ。動物顔だった頭は人に近く、というよりもほぼ人に。ピンクの髪にピンクの兎耳が天辺からぴょこんと生え、開いた瞳は真っ赤に燃える。

 可愛いウサ耳少女になってしまった。服は無いから全裸だ。見た感じは十歳ぐらい。私よりも頭一つ、もとい頭蓋骨一つ分とちょっとぐらい低い。

 ……。

 なんで?

「あ、あ」

 彼女……は、自分の変化に戸惑いながらも、初めての言葉を発した。

「あり、が、とう。かあさま」

「どういたしまして。君の名前は……そうだね。セフィロだ。私はプロメテ。僭越ながら王などやっているよ。ま、取り敢えず私の村に行こうか。何か目的があるならそれからで良い」

「は、い。かあ、さま」

「が、その前に」

 右手で持っていた籠を置いた。

「食うかい。お腹空いてんだろ?」

「は、い!」

 両手の指をおっかなびっくり使いながら、両手でもきゅもきゅ食べ始めたセフィロに背を向け、崖の上でこちらを見ている白ちゃん達に手を振る。

『無事確保!』

 ……。

 上がる方法を考えてなかった。


「はい。では捕まって下さいね、っと」

 二人で食べていると、なんと驚いた事に籠の中身が綺麗さっぱり消えてしまったので、仕方なく崖の上に戻る事にした。上の籠にはまだ残っている筈だ。

 セフィロの細い身体をお姫様抱っこにすると、鎖骨の上から脊椎に腕が回される。

 どうせなら私がされたかったよ。生前に。

 さて、まだ弱っている彼女を抱いたまま跳んだりしたら、G的な何かしらで内蔵ズタズタとか破裂とかも有り得る。

 そうだ、飛ぼう。と思い立つまでに五分も掛かった。お腹が空いているから、頭の回転も悪いのかもしれない。

 イメージ。人型で空を飛ぶといえば真っ先にアンパンマンが思い浮かぶけれど、あの体勢は元とはいえ年頃の娘としての何かをかなぐり捨てるような気がするので、直立状態で浮かぶ感じにイメージだ。

 飛行機じゃなくてヘリコプターで良い。速度は要らない。調整し難くなるし。

「あ! あ!」

 飛んだ。

 普通に、ふわっと、ぐんっと。飛行じゃなく浮遊って感じか。

 セフィロも喜んでいる。はしゃぐなはしゃぐな。

 格好良く着地して降ろす。

「あ!」

 いえい。

「実験は成功です。ので、取り敢えず団長さんから魔力を分けましょうかね。帰るぞー!」

 いぇーい。

 ……魔法で飛べるならそう言えよ、錆剣。

『聞かなかったろ』

 ところで、僕ってば本文書かないで設定書き足しまくってるアレな奴なんですけれど、数か月かけて本文以上に膨れ上がったそれ、八割がた使えない設定なんですよね。七百年後の話の主人公の設定とか。


 あ、僕中二病が治ってないので、使えない理由の大半がそのせいです。カッコいい魔術の詠唱とかフォーマット作ってたら休みが終わるんですよねえ。

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