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骨の王  作者: 三井崎瑞希
第一章 七つの大罪編、的な
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働かなくても勝手に村がでかくなるの理想だよね

 芋虫は正直、じゃりじゃりするだけのえぐみのある液体が入った袋なので、私はいらないと宣言しておく。

 代わりに、木の実や、狩りで取ってきた兎もどきやイノシシもどき(足が三本だったり、やたらでかかったりする)を、ぶつ切りにして囓ろうとしていた偉い連中(ロード級というらしい)から強奪する。

 塩は無いし、香辛料も無いけれど、魔法で作った石の鍋で茹でたり、ミディアムレアに焼いたりして再分配する。鍋には美味しかった木の実とか、何故かゴブリンが好んでいる芋虫を投入した。私の鍋以外ね。なんでか、ゴブリン達は目を輝かせていた。

 それらは結構好評だったらしい。元々は強い雄が得物の大半を持っていっていたのだが、その辺りは上手い事適応していた。強い雄は最後に出汁を飲めるのだ。

 まあ、その辺は勝手に決め給えよ。私はその芋虫汁いらねえから。


 少し離れた所で木を切り倒す。根元を囓って強引に削り倒した様子を、休んでいるゴブリン達は大喜びで見ていた。

 恥ずかしいからやめてね。

 兎も角、それを平べったい板にする為に、風で切り裂く魔法を使った。最初の方は失敗して、三本程ずたずたの木屑にしてしまった(美味しく頂きました)けれど、段々慣れてきて、細かい操作も特に意識せず出来るようになった。

 その板を、私の身長と比べて測る。肉が付いている頃の私は確か一メートル四十九センチだったから、骨になったのを考慮しても大体一メートル半で良いだろう。

 綺麗に切った棒を作り、それを基準に同じ長さ、同じ幅の板を量産してゆく。

 そしてそれを炎の魔法で、何枚か犠牲にしながら試行錯誤して乾燥させる。中々良い感じだ。

 強くイメージすると、まったく同じように切り取れるので、上手く組めるように穴と出っ張りを作る。それを組み合わせ、取り敢えずそれっぽい小屋が出来た。

 ふと顔を上げると、子供のゴブリンが木の陰から恐る恐る覗いていたので、手招きして手伝わせる。

『こうやってこう!』

「ぎゃぎゃっぎゃ!」

 ふん、と出っ張りを穴に嵌め込むのを見せると、子供ゴブリンはすぐに覚えて、指示通りに作業をしてくれるようになった。

『お前頭良いねえ。名前は?』

「ぎゃぎゃ」

『ゴブリンは基本的に名前を持ちません』

 木を切ってくれていた緑鬼さんが教えてくれる。

『区別つかんなくなるでしょ?』

『いえ、これまで困った事はありませんね』

『不思議ですねえ』

 とはいえ私は困るので、緑鬼はリキ、子供はガガと名付ける事にした。

『名前を頂けるなんて……』

『あ、緑鬼さん。完成した板を広場に運んでね』

『あっはい』

 で、建築はガガガ達に任せよう。

 さあ建築を始めよう! と、盛大に宣言しようとして、日が暮れているのに気が付いた。

 暗視が付いているから、暗くなったのがよく分からないんだよね。

 建築は明日に回す事にして、洞穴で一晩を過ごす事にした。



「ひひひひひ。ああ、カワイソウ。[ERROR!]、ああ、[ERROR!]、本当に貴女は可哀想。助けて欲しい? そうでしょう? 助けて欲しいと貴女が言うなら、それを貴女が望むなら、私にも何か出来るかもしれないのに。ああ、可哀想、可哀想。ここまでなっても助けを求める事すら出来ないなんて」



 ……。

 こいつ食えるかな。不味そうだけれど。肉かどうかは兎も角、口に入れりゃ消化は出来そうな気がするんだけれど。



 ゴブリンの集落に来てから、はや一週間。私は王と崇められつつも、集落の料理係兼アドバイザー的な立ち位置を確立していた。

 雄ゴブリンが兎だの猪を狩って来て、雌ゴブリンが木の実や芋虫を拾って来る。それを使って、私の知る数少ない料理の知識からどうにか料理らしき形のものを作る。雌の採集に付き合って、一つとはいえ大きな塩の結晶を見付けたのはまさしく僥倖と言うべきだろう。

 何でやねん。ここ森やぞ。何ででかい木の幹に生えてんだよ。そうじゃねーだろ。

 完成したのは緑鬼やガガ、雌ゴブリンにレシピ(的な何か)を伝授する。

 暇な時間で軽く魔法の練習をしつつ、建築について考える。どんな風にすればまともな小屋になるのか、素人でも何とかなるのか、ゴブリンにも出来るのか。実験的に作った小屋とか柵は、勿体無いので取り敢えずそのまま使う。

『オウ! デキタ!』

 割と人間のように指が細くなったガガガ組んだ木の断面を見せてくる。完成度は私が作ったのより多分良い。

『おうおう、すげーじゃねーか』

 頭を撫でてやると、表情が分かりやすくなった顔で嬉しそうに笑った。

 ガガはこの一週間で拙いながら念話を覚え、意思疎通が可能になっていた。他のゴブリン達も、私の念話に意思を返す位は出来るようになり、指示が楽になった。

『王、若い衆がツノウサギを狩って戻って参りました』

 そんで、この緑鬼。ただでさえでかかったのが更に伸び、広がり、筋骨隆々のオーガみたくなっていた。

『おう、ご苦労さん。捌いたら氷室に入れてね。内臓は捕った子にあげて』

『畏まりました!』

 元気なのは良い事ですけどね、こんなにでかいとゴブリン用の家に収まらない。二メートルは超える巨漢だ。

『王様、魚も大漁ですぞ!』

 ついでに、野晒しだった若い雄ゴブリン達は、寝床が改善されたのが良かったのか、前の偉いゴブリンと同じぐらいに強くなっていて、前の偉いゴブリン達は超強くなって、緑鬼と同じく念話を完璧に扱っている。

 なんなんでしょうね、この進化っぷり。こわい。

『では皆さん、捌くぜー?』

 雌ゴブリンの中から、寝床係、つまり枝とか草を集めて敷く役割のを引き抜いて料理係に任命し、動物の捌き方を教えている。……あ、いや、私も知らないからバラし方というか、スプラッタの仕方というか。ゴブリン達は内臓も好んで食べるので、内臓も別で調理する。心臓美味しいです。

 塩を擦り込んだり、若いゴブリンに取ってきて貰った良い香りの草とかを挟んだりして、良い感じに料理っぽくする。

 教えて、やらせて、その結果を私が頂く。ああ、働かずに食う飯は美味しいぜ。

 とまあ、そんな感じでだらだら過ごしていると、物見櫓的に配置した塔の警備係が慌てた様子でやって来て、私の前に膝を突いた。

 教えた覚えは無いんですけれど。どこで覚えた、そんなの。

『オウ! りざーどノ群レガ近付イテオリマス!』

 おう、リザード。トカゲ?

 トカゲは美味しいんだよね。

 敵なら狩りですね。

『戦士は武器を持て!』

 集落のゴブリン達に向けて、高い位置から不特定に念話を放つ。届かないゴブリンには、近くで届いたゴブリンが教える事になっている。

『伝令、敵襲の可能性あり、すぐ戻れ!』

 狩りに出ているゴブリンに向けては、まあ届けば良いかなな感じで飛ばしておく。意識が触れられる程近くじゃないと届かない辺り、ちっとばかし不便だ。

 では、トカゲさんに会いましょうか。いやー、初めて王様っぽいというか、トップっぽい事するね。

 今までは半ニートだかんね。


 知識を総動員して何とか作った蝶番付き門の上にはしごで登る。三メートルぐらいの高さのそこから見下ろせば、木を切り倒した後、ゴブリン達が踏み固めてできた道らしきものの先に青い鱗が並んでいた。

 シルエットは人に近く、二足歩行。長い尻尾が付いている。片手には青く塗られた盾、もう片方には柄が青く塗られた槍を、石突を地面に突き立てて持っていた。

 というか、リザードマンだった。

『はろーこんにちははじめまして』

 柵に隠れたところでこっそり合図を出し、門の裏に待機させる。

 リザードの先頭で、一際大きな槍を持っているのが一歩前に出て、膝を突いた。

 へい、ブルータス(お前らもか)

『新たな王よ。龍鱗の氏族が首領ラタ・メテ・ニオ以下六名、馳せ参じました』

『あっ、どーも。プロメテです』

 敵対の意思が無いのはすごーくよく分かる。取り敢えず、門の外に出る事にした。ゴブリンがざわめくが無視。慌てて緑鬼さんが着いて来た。

 柵を乗り越えて群れの前に立つと、リザード達――先頭のラタ何とかさんを除く――の脚が、僅かに震えているのに気付いた。

『お、王よ。我等氏族、新たな王の下で使って頂きたく』

 何か言っているが、それよりも私の目(は無いけれど)を引いたのは、彼等の槍と盾だ。

 明らかに金属製だったのだ。

『その槍と盾、金属製だね』

『は? ……は、その通りです。我等はドワーフ族より、鉄鋼の扱い方を学びました』

『素晴らしい。皆引っ越してきたの?』

『いえ。我等氏族は二十三名おりまして、残りは離れた所におります』

『じゃ、ゴブリンさん達と仲良く出来るなら一緒に村作ろうぜ。取り敢えず、アレルギーとかあるかい』

 答えは想像していた通りだった。リザード達の間に安堵が広がっていた。

 あと困惑。アレルギーて何だよ的な。


 という訳で、多分スペースが足りないので、残りのリザード達が来る前に広げます。

 木を切り倒し、多少つまみ食いしつつ板を作り、できたスペースで組む。デザインはリザード達に任せた。

『白き王よ。鉄を作る為の窯を造る許可を頂きたく』

『構わん、やれ。……いや、待って。取り敢えず寝床の確保ね。造るのはその後で』

『ははっ』

 元ゴブリンの集落だったここは、最早村と呼んでも良いだろう。緑と青、白の住民が行き交う、食べ物があって、仲間がいる場所。

『ときにラメニさん。ラメニさんはなんで私の所に?』

『……失礼ながら、前の王と新たな王が同じ方針であるとは限りません故。御意思を確認し、出て行けと仰るならば新たな住処を探さなければなりません。何も言われぬからと勝手に住み続け、逆鱗に触れて全滅など笑えませぬ』

 なるほどね。

『皆大変なんだねえ』

 まあ、私にはあんまり関係無いけれど。

『この森、結構沢山の種族が住んでる?』

 今度は緑鬼さんに尋ねた。

『知能を持ち、前王にこの森に住まう許可を頂いた氏族は全部で十三です。残りの氏族も、新たな王に挨拶する為に来る事でしょう』

『へー。皆で協力すれば、凄く大所帯で美味しいものも作れるだろうね』

 仲間になれば。あと、途中で飽きなければ。

 出来れば人間の国にも行きたいね。見た目と言葉をどうにかしないといけないけれど。

 ところで、前述の通り、ある程度の誤字とか読み飛ばすタイプなので、後半ご都合主義が目立つとかレビューされてても全然気付きません。なんだったらそういうの大好物だったりするんで、ミステリとかは合いませんね。読むんですけれど。


 あ、自分が書いたら気になりまくって、そのままHDDの肥やし一直線なんですけれどね。ほら、時間空けたら凄まじいクソだったりするじゃないですか。前に投稿した奴消したくなったり、書き直したいのに時間がねえとかほら、ねえ。

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