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第31話 根掘り葉掘り

前話では"聞く"を"訊く"とあえて書いていましたが、今話は"聞く"に統一しています。


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 その後、一呼吸置いて、忘れないように聞いたことを振り返り尽くす。

 

 満足したところで魔力を迷宮核に再注入し、魔力を纏った手で迷宮核をもう一度包む。

 当然だがまだまだ聞きたいことはあるんだ。


 と言いつつも聞きたいこと全部聞く訳じゃない。今一番気になること、数点聞いていこう。



 一つ目。そもそもなんだけど、

「なぜ僕は子供の姿なんですか」


「実際の年齢である19歳の身体にはエネルギー不足で作ることはできなかった。だがその分しっかり健康体で作ったつもりだ。」


「零細迷宮ならではの理由……納得しました」


「零細!……確かに零細と言えば零細だが自由と言ってくれ自由と」


「はい、失礼しました」


「分かってくれたならいいんだ」


 あんまり零細とは言ってほしくないみたいだな。まぁ誰も零細と言われていい気分じゃないだろう。少し失言した。

 それに、健康体で作ってくれたならありがたいし、若返った分得をしているとも言える。


 後、地味な話なのだがこの世界、否、この星と言った方が正確か。この星では一部かも知れないが少なくも迷宮核に宿るロドアは19という数字を認識できた。これによってこの星には10進数という概念があることが分かった。も一つ言うならばエネルギーもそうだ。エネルギーなんて概念、江戸時代の人は持っていただろうか。それは分からないけど結構自分の中では進んだ概念を持っていると思った。もしかしたら地球のような文明があるのかもしれない。ただ期待しすぎて現実か落差あると勝手に落胆してしまうからあくまで可能性の一つにあるという程度で捉えておく。



 じゃあ次だ。

「ここってどこですか」


「迷宮だが?」


「あぁ、そういうことじゃなくて、うーん。何て言えばいいかな。この迷宮ってどこにあるんですか。地理的に」


「山だ」


「ああもうだからそうじゃなくて……この山って何て名前の山ですか」


「うーん、何だったかなぁ……おっ、思い出した。アルトト山という名前だったな。多分」


「多分って……」


「仕方ないだろう。こんなあちこちにぼこぼこある山の名前一つ、この迷宮がある山だからと言って特に見栄えが違う訳でも無く、そんなこと聞かれることも必要になることも無い知識だったんだから」


 「まぁ……そうですね」


 あなたがいる山なのに、と思わないでもなかったが、そう言われると何も言えない。

 自分だって今まで学校で勉強したことも(じき)に興味が無いこと、使わないことから段々思い出せなくなっていくんだろう。それに青い葉の木の精霊さんやロドアと会えなかったら他者と意思疎通を図ることさえ忘れてしまうかも知れない。明瞭な想像はできないけど時間が経てばどうなってもおかしくない。



 よし、気を取り直して質問をしていこう。


 これまた非常に疑問なんだけど、

「なんであなた、ロドアさんは日本語や英語が話せるんですか」


「それは迷宮の守護者ならできることだ」


 質問の答えになってない気がするんだが……まぁ迷宮に入る人はみんな同じ言語を話すと決まっている訳では無いし、多言語に対応できないといけないのは何となく理解できる気もするけど、やっぱり違う世界、星の言語に即興対応できるのは明らかにおかしいと思う。

 

「迷宮の守護者ならみんなできるんですか」


「あぁ、そうだ」


 どうなんだろう、もしかしたら話したくないのかもしれない。何で話したくないのかは全く分からないが、追及して拒絶されるのも怖いし、またもっと時間が経ってから聞いてみようとしよう。



 で、今からする質問が最後だ。

「迷宮を発展させることにどういう意味があるんですか」


「……それはもっと発展させてから教えられることになっている。今は話せない」


 これもだんまりか。発展させろとは言うくせに、発展させる意味は教えないのか。

 素直に何故何だと思うが、言葉から察するに、"教えられることに()()()()()"と、本人の自覚の有無は分からないが何か他者の存在、関与を臭わせている。誰が教えられないようにしているんだ?自然に考えて迷宮の守護者の上位に存在するものだろう。迷宮内には自分とロドア二人しかいないんだがそいつはどこにいるんだろう。

 迷宮って無意識に独立したものと思っていたが何かもっとでかい管理者がいるんだろうか。考えても知りもしない正解は分からないがそういうやつがいると分かっただけでも収穫だ。


「じゃあ質問終わります。答えてくれてありがとうございました」


「礼ありがとう。もうこれでいいのか?」


「はい。まだまだ聞きたいことはありますが、試してみたいこともあるのでそれが終わった後、また時折聞くと思い、否、まだ最後に一つだけあります」


「分かった。何だ?」


「なぜ精霊語のように感情だけじゃなく言葉も伝え合えるのですか」


「それは"念話"によるものだ。あなたは精霊語のスキルを持っているみたいだが私は念話というスキルを持っている。いわば精霊語の発展版のようなものだ。それを持っていると相手が念話を持っていなくとも念話スキル所有者が意思疎通を望めば互いに念話をすることができる。あなたがそのレベルで精霊語というスキルを持っていることからして念話の素質は十分あるだろうから、精霊語を鍛え続ければ直に取得できるだろう。」


 聞いたことで知らなかったことが分かったり、また更に疑問も湧いた。特にロドアの後ろにいる存在が気になる。それに念話スキルを得られればロドアが自分と念話で話したように何らかの理由で話せない存在と話すことができるかも知れない。青い葉の木の精霊さんとも、日本語を喋るとは思えないけど言葉で話せる可能性が出てきた。だけど至急試してみたいことがあるから、まずはそれを優先して、これらは後でじっくり考えよう。


 そして至急試してみたいことを試す為、結局これまたロドアに聞いてみる。


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