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第23話 源泉探索開始

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タイトルを、源流探索開始→源泉探索開始にしました。

 今日も同じく"風防殻"に干渉して、まるで卵の殻を割って出てくるように体を外に出して、食事といつもの日課を済ませると、昨日できなかった沢の調査について考える。


 昨日は、サンプル調査を1日使って何とか終わらせて結局沢には行けなかった。なので今日行きたいのだが、今自分にはそれ以外でしないといけないこと、戦うこととかは置いておいて何があるだろうか。

 思い浮かんだ順から挙げていくと燻製器のタンス化改造とサンプルの整理、そのサンプルを採取した場所をもう一度まわって頭に覚えさせることと、あとは狩りに出ないとしても身体強化や魔素同調に魔力循環、精霊語の特訓など思い出したようにたまにやるんじゃなくて、それを習慣化させないとなかなか上達は望めないのでどう生活に組み込むか、朝やるのか何日おきにやるのかなどをそろそろ考えていかないといけないかも知れない。

 燻製器を収納にして何を入れるのかというと既に入れている迷宮核は勿論、香辛料としても使える赤黒い木の実と黒い木の実や食用のルビーのような色の木の実など食べられる木の実全般を入れておこうかと思っている。あと燻製器を改造するついでに作りたいのが、椅子などの家具だなって……今思ったが椅子とかならすぐ土魔法で作れるだろう。座るだけなら簡単だし、燻製器改造するついでにできそうだな。他にも机とか……おぉ、考えれば作れそうなやつ結構あるなぁ。まぁ、まずは椅子にしよう。


 それにしても、ずっと青空の下で生活してるけど、折角雨風しのげる迷宮という名の洞窟があるんだからそっちで生活する方が楽な気もするなぁ。でも、迷宮って常時薄暗いし、夜になったら本当に光魔法で灯さないと一寸先が見えないから怖いんだよなぁ。誰がつけてるか分からない松明が灯ってたり、光苔で薄暗くても光っていたり、蛍光灯とかLEDとかあってスイッチ押したら点きますよとかの快適設備だったら楽なんだけど、さすがにないものねだりしても誰かがつけてくれる訳でもなし。ずっと小さな光を出し続ける特訓でもするか。否ー、その為だけにそれをするモチベーションがそこまでない。うーん。

 だけど、このまま外で生活感全快のまま生活していいんだろうか。もし、ここを通りかかられたら完全に誰かがここで住んでるのがばれてしまう。通りかかる人なんているかどうかも分からないし、もうそのときはそのときだろうと高を括ってしまってもいいが、それでは未来の自分に無責任ではなかろうか。どうしたものか。結界魔法とか幻影魔法とかでこの周囲を隠したり、人除けの魔法とかで人を無意識に遠ざけさせるとかいろいろ浮かぶが、そんな魔法があるか分からないし、やり方も分からない。試行錯誤すれば、できる日が来るのかもしれないがすぐやれと言われても無理だ。現実的に今使える魔法でどうにかここを隠すことができないだろうか。思いつかない。椅子作るときにでも考えるか。


 閑話休題。沢の事を考えるはずなのに、即脱線してしまっていた。自分が沢で調べたいことは、その沢の源泉がどこにあるのかということと、沢の水が飲める水なのかどうかの水質と沢に蟹とか食えるものがいるかどうかだ。魚介類! こんな山ん中、魚介類が食べられる唯一のスポットといえば川、水辺ではないか。それを探さずにておられるか。この3つを調べたい。丁度、沢はサンプル採集の帰りに見つけたのだから、サンプルを取った場所を忘れないようにするために行く帰りに沢に行けばいいか。でもそうなると、すぐに行かないと日が暮れてしまうかもしれない。夜中の森は昼間の森も怖いけど、それ以上に怖いからなるべく避けなければいけない。では、携行用にしたバナナもどきを持って行きましょう。


 出来る限りの最速でサンプル調査をしたところを巡り、バナナもどきや赤黒い木の実を採集した後、沢に来たのだが、そこには角が何ともご立派な鹿が水を飲んでいた。こんな鹿も見たことが無い。逃げてすぐ帰ろうかと思ったが、これからここで住んでいく上で魔物に気づかれないように生きていかなければいけない自分にとって、見つけた魔物みたいな動物からすぐに逃げてばかりいてはその技術も成長しないのではないか。実戦でこそではないかと、少し戦闘馬鹿的なことを考えつつ、鹿から離れて沢を少し遡り、鹿から自分が見えない辺りで沢に近づく。まずは魚だ。魚がいれば食生活も大きく変貌を遂げることだろう。出でよ、魚様。


 ありがとうございます。自分の願いに誰かが答えたわけではないがそこに魚はしっかりと泳いでいた。だが、今ここで沢の中に入って魚を獲ろうとすれば、ばちゃばちゃと音がなって鹿に気づかれるのは必至。そこまでのリスクには飛び込めない。臆病風か良識に従った自分は水中を眺めるにとどめた。しかし、沢の水質ぐらいは調べられる。沢の水を両手で掬って口に運ぶ。煮沸は? との自分の声が聞こえないではないが、これぐらいでお腹を壊さないように今のうちに鍛えておこうという阿呆なのか褒められることは無いだろう謎の上昇志向で、そのまま水を飲む。ごくり、これまたうまい。これは昨日感じたものと同じ、ステータスを見ても変化はないが、この味からしておそらくこの水には魔力が含まれている。ぶっちゃけてしまえばこの世界で魔力が含まれていないものは厳密に言えばないのかもしれないが、あの肉やこのバナナもどきのように他より大量に含まれているものは存在するのだろう。この沢の水も流れている間に含まれている魔力はどんどん薄れてしまいもっと下流の方へ行けば感じられなくなるかも知れないが、このまま沢を遡れば更に濃く魔力が入った水を飲めるかもしれない。遡ってみよう。

 蟹の事は忘れていた。

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