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第1話 現状確認part1

説明回がここから二話続きます。

 うん。この後、風が吹いてくる方向、おそらく出口に向かうのは決定事項として、今の時点でできる限りの現状確認をしよう。現実逃避と一応の実利を兼ねている。


 まずは、呼吸。

 今までと同じように極自然に呼吸をしている。即ちこの世界、星には酸素か酸素と同じような気体が満ちていてそれを吸って生きている。ということは肺と同じような呼吸のための内臓が体にあるんだろう、恐らく。見た目は前世と変わらない1小学校高学年ぐらいの身体だが、中身は同じと限らない。思い付きで胸に手を押し当てれば自らの心音が聞こえる。確認を続けよう。


 次に髪の毛。前髪を目の前に引っ張ってみる。うーん。とても見辛い。よし、それなら抜く?嫌だ。じゃあどうやって髪の色確認しよう。一秒後頭を軽く掻いた手のひらを見ると髪の毛が一本ついていた。黒だ。そうか、黒か。気になって確認してみたが特にそこから発展することはなかった。


 では次に身体能力測定。どれ位の身体能力があるか知っておくのは大事だろう。握力は、林檎を潰すといった分かりやすい指標がないからはっきりと言えないが、衰えた感じがしない。今度は少し走ってみる。身軽だ。足の速さは以前より少し速いぐらいではないだろうか。地面にある砂利を払ってからやってみた腕立て伏せはいつもより格段に楽にできた。僕がこれぐらいの頃は全くできなかったのにできてしまった。腹筋とプランクは地面がざらざらしていて痛いからしなかったけど、調べた限り全体的に身体能力が維持または向上している。もしかして僕はホモサピエンスじゃないのかもしれない。



 その後は実は気になっていた柔軟性を測る。立った状態で足のつま先に手を伸ばす。難なく手のひらが地面にぺたりと着く。


「よしっっ!!」

 

 ガッツポーズを人知れず決める。人がいなくても嬉しいときは嬉しいと表現すべきだ。感情は表現しないと錆びそうな気がするからである。まぁ、うっとうしいほど騒ぐ必要はないと思うが、大事だ。おそらく今の自分の顔は確認できないが喜色満面だろう。なぜそんなに嬉しいかと言えば、以前は身体がガッチガッチだった。それに尽きる。小学校高学年まではスイミングスクールに通っていて、プールに入る前に広い部屋で全員、柔軟運動をしていた。そのおかげでそれまではそこまで固くなかった。しかし、それからだ。身体はどんどん固くなる。中学校を卒業するころには既にガッチガッチだった。少し突発的にやる気になるが続かず、もはや体を柔らかくすることは諦めていた。


 しかし、今、僕は得難い柔軟性を手に入れた。これからはこのかけがえのない柔軟な身体を大切に、もう二度と失わないように生きよう。形のない宝物だ。


 よし、このぐらいで身体確認はひとまず止めにしよう。次はどうするか。こんなところで時間を浪費するのは愚なのはわかっているが、本当は怖い。外に何がいるか分からない。もしかしたら出たらすぐに喰われて死ぬかもしれない。全く先が読めない。理想としてはすぐ周囲の環境を確認すべきだけど……そうだ。もしここが想像できる候補の一つの魔法が使えるような異世界なら、こんなこともできるかもしれない。何も賭けなくていいし、失敗したところで誰も見てないし、物は試しだ。やってみよう。


 そして、ある言葉を呟いた。


「ステータス」


 

 頭に直接文字が浮かぶようななんと言えばいいか、目に見えている景色の中にはないはずなのに確かに見えている。うーんややこしい。目を閉じてみればその文字の羅列がはっきりと見えた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


名前  :尾崎友斗

レベル :1  

種族  :人

称号  :迷宮から生まれた男

年齢  :10歳

性別  :男

職業  :なし

状態  :正常

加護  :なし


生命力 :30/30

魔力量 :10/10

攻撃力 :15

防御力 :15

筋力量 :20

体力量 :20/20

耐久  :20

敏捷  :15

魔法威力:10

魔法制御:10

精神強度:35

知力  :35


スキル :日本語

     剣術LV4

     大声LV6

     観察LV2

     暗算LV4

     早口LV6

     石頭LV5

     妄想LV6


スキルポイント:10

魔法  :なし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「……」


 言葉が出ない。いや有り得るかもとは言ってたけど、実際起きてしまうと……ま、まずは確認しよう。冷静になったつもりで見てみると気になるところはいくつかある。というか、いっぱいある。上から一つ一つ見ておこう。

 当然のようにあるレベルの欄。これはレベルの上昇条件が謎だ。テキトーに考えれば魔物的なものを倒せばいいのだろう。

 そして種族の欄で人となっているということは一応僕はこの世界における人であること、ほかにも種族なるものがあるということが分かる。そもそも前世では生き物の分類は体系的にわけていたが、当たり前だが人間の勝手でやっていて、犬は図鑑を作らない。そして生物は時ともに進化し、絶滅する。RPGでは種族と分けてもゲームだからの一言で済むが、この世界ではだれが分類していてステータスなるものに表示させて今自分に見せているのだろう。分からない。

 次に称号の欄だ。迷宮から生まれた男となっている。それを見てここは迷宮だったのかと知る。不意に湧いて出た疑問だが、人は迷宮から生まれるものだろうか。まぁここに生まれたって書いてあるんだから生まれるんだろうけど、多分人は人から生まれるのが自然じゃないだろうか。迷宮で魔物は生まれるイメージはあるけど、人が生まれるイメージはない。どこまで行ってもイメージだが、もしこういう生まれ方が珍しかったり、忌避される世界だったら、この情報はどう見られるかが分かるまでは隠しておくほうが得策だ。生まれでどうこう言われたくない。

 と、そういえばこのステータスによると、自分の生みの親はこの迷宮ということになる。父でも母でもないが僕を生んでくれた存在だ。見渡しても普通の洞窟にしか見えず変な気分だ。もしかしてこの迷宮も生きているのだろうか。

 その次に結構気になる欄は加護だ。小説とかでは神とか龍とか偉大な存在にもらっていたが、この世界にもそのような存在がいるかもしれない。面白そうだ。得体のしれない存在がいると考えると怖いけれど。

 そしてなんと言ってもこの次だろう。魔法とスキルがある。魔法は今のところゼロだが、スキルはたくさんある。結構地味なものばっかりだけど、数は大事だ。最初は日本語。日本語というスキルがあるということは他にも喋れる人がいるかもしれない。そして他の言語も存在するのかもしれない。というか他の世界なら全く違う言語が跋扈しているだろう。日本語以外も使えないと、この世界の人の社会では生きていけない。覚えたいがそもそも教わるには知り合いが必要だし、日本語が通じないと心が折れる自信がある。そうだ、日本語もスキルなら他の言語もスキルとして覚えられるかもしれない。まともな正攻法では英語も中途半端な自分にはこれまたできない自信がある。よし、次に剣術LV4と大声LV6だ。確かに剣道を小学校高学年ぐらいからやって今二段だ。そして大声は剣道で出しているからだろう。だからといって剣術より大声のスキルのほうがレベルが高いのは納得いかない。まぁ確かに、剣道と剣術は違うからそのままそっくりスキルには反映されないだろう。そういうことで納得しよう、うん。石頭っていうのも剣道の恩恵か。ありがたい。しかし、前世の身体の性質は受け継がれていないと思っていたが、うーん。精神面に影響するスキルということかな。観察のスキルがあるのは日頃の行いでしょう。ふふん。暗算は当然として、早口なのも自分本来の小さいころからの性分だ。スキルとして認められて得だと考えよう。

 と、ここらへんでスキル確認は終了。こっから実は気になっていたスキルポイントの確認に着手する。スキルポイントはおそらく、スキル獲得か、スキル成長か何かスキルの欄に変化を及ぼすことができるのだろう。妄想?自覚ないな~。



 というか、まず、スキルポイントってどう使えばいいんだ……?


 一分考えたが、考えるだけでは変わらないだろう。ということで……



「スキルポイント!」



 ふむ。直接口で唱えても反応なしか。まぁ予想の範囲内だ。なら、



 ステータスをパソコンの画面のように見立ててカーソルをイメージして、クリック!!!


 音もなくステータスの文字が変化し、新たな文字を紡ぐ。

 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 スキルポイント:スキルポイントを使えば取得可能なスキルがあり、それを取得

         するために使用する。レベルが上がる際にスキルポイントは獲

         得できる。本人がスキルポイントで取得できるスキルは個人そ

         れぞれの多様な要因によるものでおのずと決まる。スキルの取

         得に必要なスキルポイントは相性、強大さなどで変わる。


 取得可能スキル一覧


 柔軟-必要スキルポイント5

 投擲-必要スキルポイント7

 歌唱-必要スキルポイント3

 忍耐-必要スキルポイント10

 健脚-必要スキルポイント6


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 おぉ、成功した……まさかの説明まで…………至れり尽くせりでありがとうございます。何か非日常すぎてテンションが変になっている。高揚してふわふわしないようにしよう。今回の行為と結果からみると、選択するように念じればその部分の説明などの画面に切り替わるということか。さらにその下には、取得可能なスキルの一覧がある。この中で私情としては柔軟や、年がら年中、いろんな歌を歌っている自分としては歌唱スキルを取得したいが、いざこの世界で生き残るために必要なスキルとしては、その他の三つのスキルのほうが大事かもしれない。うーーん。どうすればいいか分からない。今は取得しないほうがいいのだろうか。あっ、そういえば今スキルポイントの説明を見たように、スキルの説明を見てそれから決めるべきだろう。よし、ではでは…………



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 柔軟:体が柔らかくなる。柔軟運動をすればレベルが上がる。

 投擲:物を投げる制御、威力が上がる。物を投げればレベルが上がる。

 歌唱:歌が上手くなる。歌を歌えばレベルが上がる。

 忍耐:精神強度が上がり、耐性スキルが得られやすくなる。耐え忍べばレベルが

    上がる。

 健脚:足が丈夫になり、長距離の歩行、走行が楽になる。長距離の歩行、走行で

    レベルが上がる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 


 ふむふむ。やっぱり迷う。それぞれにいいところがあって決められない。ならば、他の項目の説明を洗いざらい読んで考えよう。時間はかけないようになるべくしたい。

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