5.王都へ、そして変わり始めた心
転生─恋愛の日間37位にランキング入りすることが出来ました!!
評価やブックマークなどを付けてくれた方々は本当に本当にありがとうございます!!
PVも3000までいってとっても嬉しいです。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
朝の食事を摂り、その後は父と少しばかり婚約についての話をし、その後はそのまま特に何も無かった。只、父がかなり怒っていたのはよく分かった。
両親からは、気晴らしに王都にでも出かけてみないかと言われて、気を遣わせていることが分かっているので渋々了承。王都ってかなり疲れるから行きたくない、なんてことを考えつつも、クレーナが用意したドレスを着用していた。
「どう、かな?」
「とってもお似合いです」
「うん!!ありがとうクレーナ!!」
クレーナに着付けをお願いし、それが済んだ後にどんな感じかを鏡で見てみた。鏡に映っているのは、可愛いけれども、落ち着いた漆黒のドレス。簡素なデザインで、派手さは無いが、むしろ動きやすくて、こっちの方が似合っている。
「黒い色の服は心を落ち着かせる効果があるそうです」
「あっ、そういうの聞いたことあるわ」
然り気無くも相変わらずクレーナは気を遣っていた。分かっているから敢えて言わないが、変わりに、
「クレーナは赤い服を着ると、熱血漢になるってやつね」
「凄い誤報を聞いたようですね、お嬢様は」
そうからかうと、私が本当にそう思っていると思ったのか、こめかみに指を押し付けて、まるで哀れな子供を見るかのような目でこちらを見つめていた。
「一応今のは、誤報でも何でもなくて、私が考えたことだから」
「そうでしたか、一瞬本気でお嬢様の誤解をどう解こうかと熟考してしまいました」
「あはは……ごめん」
誤解が誤解で助かったと、言葉を放つ。クレーナは私の事を好きすぎだと思う。
「それで、ドレスのご感想は?」
「うん、いつもの堅苦しくて動きにくいようなドレスじゃなくて、ちゃんと機動力も視野に入れてるって感じでとっても良い!!戦闘力もこれで上昇間違いなし!!」
「そうでございますか、それは良かったです。お嬢様は前々からもっと楽なドレスが良いと仰っていましたから、良い機会だと思って、新調しました。……機動力と戦闘力に関しては全く視野に入れておりませんが……」
少しボケすぎた為に、本気で私がどうかしてるんじゃないかっめ感じになっている。機動性とか戦闘力がとかなんとかって言っちゃったから変な感じに見られてる気がする。胸に手をおいて真面目にそう話しているクレーナは、それこそ遠い目をしている。戻ってきて~!!
「兎に角、とっても気に入ったから」
「それは何よりですが……頭、大丈夫ですか?」
「その本当に心配している声のトーンで言ってなかったら馬鹿にされてるって思うわよ、多分」
と言って見るものの、イマイチ理解していないらしい。
「じゃあ、早速王都に行きましょ。たっぷり時間もあるわけだし」
「そうですね、行きましょうか」
王都に行くには、この公爵領から馬車を使って、数日はかかる。シルフのところに行くのに余り時間を要しなかったのには理由があり、我が公爵領と彼の伯爵領が隣接していることもあり、加えて会場も割りと国境沿いにあるお屋敷だった。思い出したくは無かったが、一応王都に行くには少しばかり長旅になるのだ。
「クレーナ、どのくらいかかるの?」
「馬車を使えばおよそ三日ほどかかりますが……どうせなんで私の転移魔法で移動しちゃいましょうか」
そうそう、言い忘れていたが、この世界には魔法と言う概念があり、使える人はバリバリ魔法を使える。実は意外にも私も魔法を使えたりする……内容は別として。
「それで良いかな、馬車の中で座りっぱなしってのは疲れるし」
そう言うと、クレーナは外に出ましょうと言って、そのまま二人で外に出た。公爵家の人間は皆、クレーナが転移魔法や重力操作魔法などが使えると知っているため、転移については自由に使って構わないことになっている。念のために屋敷の中では使わないという制限つきにしてあるそうだが、飄々としている彼女を見ながら、転移魔法が欲しいなぁなんて考えている。
「ではお嬢様、私の手を握ってください」
パッと差し出された右手に、自信の左手を差し出す。
「エスケープ!!」
クレーナがそう唱えると、回りは白い霧のようなものに包まれて、霧が晴れると、見覚えのない路地裏に居た。転移魔法と言われているものの、この魔法は戦争とかで敵から逃げるときに使うのが一般的だそうだ。転移魔法は使える者が少ないため、目立たないように、路地裏を選んで転移したそう。
「いつも思うけど、クレーナの魔法は便利よね」
「それは、誉め言葉として受け取っておきます」
顔を見合わせて、二人で控えめに笑った。
「クレーナ、先ずは何処に行こうかしら?」
「そうですね、お腹が空いているのであれば、私のお勧めがございますよ」
「じゃあ、決まりね!!」
路地裏から表通りに出ると、そこには無数の人が行き交いし、賑やかにザワザワとしていて、どこまでも続く道がそこにはあった。
「わぁ、凄いわ」
「お嬢様は王都に来たときは王城にしか、行ってませんものね」
「うっ、嫌みだ……」
「……違いますよ」
軽く冗談めかしたことを言い合いながら、歩みを進めていく。道幅はかなり広く、両サイドに出店のようなものがあり、長い列ができている店もある。
「クレーナのお勧めは何処かしら?」
「ここからは少し遠いですね、取り敢えず、お嬢様の気になるお店を見ながら、そちらに向かうっていうのが良いかと思いますよ」
「じゃあ、先ずはあそこ!!」
指差す方には、何かの肉が焼いてある屋台がある。香ばしい香りを漂わせながら、煙が風に舞ってかなり目立つ。
「あれは、レーナード豚をひと口台に分けて串に刺して焼いた串焼きというものですね。レーナード豚はレーナード子爵領の名産品で、小さい頃は私もよく食べていました」
「へ~、どんな味がするの?」
「普通に油が乗っていて普通の豚肉よりも歯応えがあってコリコリしてます。それから、あそこ秘伝のタレがお肉に合っていて、最高に美味しいですね」
クレーナの話を聞けば聞くほど食べたくなってくるのはきっと私に限ってではないはずだ。だれでも目の前で焼いている美味しそうな肉を、熱く語られたなら食べたくなってしまう。
「すいません、秘伝ダレと中辛ダレを一本ずつ下さい」
「あいよ、二本なら銅貨六枚な」
そう言われて、クレーナはごそごそとサイフからお金を出して、店の主人に差し出す。
「ああ、丁度貰ったわ。まいど!!」
因みに貨幣の価値だが、日本円を基準にして考えると、小銅貨が一枚十円くらい、銅貨が百円、小銀貨で五百円、銀貨で千円、小金貨が五千円、金貨で一万円、白金貨が十万円といった位の価値だ。
「お嬢様、どうぞ」
二本のうちの一本を差し出してくる。食べてみると、クレーナの言っていた通り、頬がとろけてしまいそうな位に美味しかった。それからクレーナはちゃっかり自分の分を買っていて、しかも私のとは別の味を買っていた。抜け目が無くて凄いと思います。
「美味しい……」
「それはそうですよ。私のお勧めですよ」
ウインクしながらそう自慢げに語るクレーナは、美味しそうに肉を頬張りながらそう言った。
「あっ、嬢ちゃんもしかして、あのクレーナか!?」
不意に気が付いたように屋台の親父さんが食い気味に尋ねてくる。あの、とは何なのか分からないけど……。
「ええ、そうですよ。お久しぶりですね、おじさん……いいえ、師匠」
「そうか、あれから六年か……えらく美人になったなぁ」
「ありがとうございます」
おじさんとクレーナは感慨に浸っているようだが、私だけ置いてかれたように話に着いていけてない。そもそもこのおじさんとクレーナが知り合いだなんて知らなかったし、クレーナは知っててこっちに来たのだろうけど。師匠ってのも気になる。
「お嬢様、紹介します。彼はドンペン、この屋台の店主で、私の魔法術の師匠です」
「……えっ?」
「いやぁ、そんな師匠だなんてよぉ、照れるじゃねぇか、がははははっ!!」
この人がクレーナに魔法を教えてた人だったんだ。正直そうは見えないほどに筋肉がついていて、魔法使う人っていうよりは格闘技とかやってそうな風格が感じられる。年齢は五十、六十くらいで、髪の所々に白髪が混じっている。しかも極め付きはその髪の毛の色、白髪があるのに髪色が蒼ってどうなのよ……いや、髪色に関してはどうしようもないのか……失礼しました。
「あの、本当にクレーナの師匠で魔法とかも使えるんですか?」
「ああ?当たり前だろ。師匠かどうかは置いておいて、俺は少なくとも並の魔術師よりは腕が立つと自負してるぜ」
「自負かいな……」
「なあ、クレーナよ。こいつなんか口悪くないか?」
つい、口が悪くなってしまった。クレーナの師匠という男に口が悪いと言われて、我に帰る。ついでに口に出そうとしてないことを言っちゃったのだから今後は気を付けよう。公爵家の品位が危うい。
「すいません師匠、お嬢様はつい昨日に失恋しているために、情緒が不安定なんです」
「失恋か……それなら仕方ねぇな、失恋の辛さは俺もよく分かる」
クレーナの説明に唸りながら、私の境遇に同情的なことをさも悲しそうな顔で言い、明らかに聞いてはいけないこと聞いちまったよ!!みたいな雰囲気がここに完成してしまった。
私、今はそこまで気にしてないんだけど……。
そんなアリスの心の訴えも、聞こえる筈もなく、お通夜のようなシーンと静まり返ったような感じになってしまったのだった。
文章などをもっと上手く書けるように精進していきます!!
投稿の時間などは19時を中心に予定しています。
評価数100以上またはブックマーク500以上で土日二本投稿をしたいと思います。
気長にお待ち下さい!!