4.公爵家の憤怒
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閉じたられた瞼から光がそれを通り越して、私の目に刺激を与えてくる。やむを得ず、私の目はゆっくりと開いた。いつもの自室、いつもの朝、変わっているのは私の心の中だけで、朝は相も変わらずやって来た。カーテンを閉めなかった窓からの日光は、とても輝いていて、昨日大雨だったのかというのを忘れさせる位のものだった。
窓から少し景色を見てみると、雲一つ無い快晴の空。只、昨日雨が降っていたのは、本当のように、地面には無数の水溜まりを爪痕として残していた。昨日あったことは、決して無いことにはならない。雨も浮気も変わってしまった心さえも……。
昨日のあれからおよそ十時間程度しか経っていないのに、心は昨日に比べて明らかに軽くなっていた。感覚が麻痺しているのだろうか?そんなことも頭の片隅に置きながら、寝癖の立った髪を鏡を見ながら櫛で解かしていく。いつもなら、使用人がやってくれるが、今日はまだ一人で居たいからと、使用人には部屋の外で待って貰っている。
「……眠い」
随分ときの抜けたような声に、思わず自分でもビックリする。昨日あんなことがあったのによくそんな抜けたこと言えるなと、我ながら感心してしまう。
「お嬢様、おはようございます。昨日はよく眠れましたでしょうか?」
私の身支度などが済んだことを察知したクレーナがすかさず部屋の扉を開けて部屋に入ってくる。
「ええ、よく眠れた。昨日は心配をかけたわね」
「いえそんな、お嬢様こそ、辛い思いをされていたのに……何もしてあげられず申し訳ないなと思っている次第です」
直ぐにペコリと頭を下げてくるクレーナは、その拍子にいつもは整えてある綺麗な金髪がさらりと前方に垂れてくる。
「クレーナは私を励ましてくれていたじゃない、感謝こそすれど、不満なんて一つも無いわ」
彼女の沈んだ顔を直視出来ない私は、何とか労いの言葉を伝えると、次第にクレーナの頬も緩む。一応今は落ち着いて居られるし、それもこれもクレーナのお陰と言っても過言ではない。
「それにしてもお嬢様、一人で身支度などを出来るのですね」
「そうよ、一人でも大丈夫なように練習したんだ」
冗談めかしたようにそう言う彼女に、私も苦笑して出来るだけ元気がありそうな感じで言葉を返した。
「お嬢様、早速お食事でも致しましょう。腹が減っては戦は出来ぬ……でしたっけ、お食事すれば幾分かは気分も晴れますよ」
「そうね……私そんなこと言ったかしら?」
「ええ、言ってましたよ。ご飯を三杯もおかわりした時に」
コロコロと笑い合い、一緒に朝食を食べるために一階に降りた。
「おはよう、アリス。昨日は大変だったそうね……」
食事をしようと一階に降りると、丁度お母様とばったり出会った。どうやら事の顛末をクレーナか話したらしく、母も私の事を知って抱き締めて慰めてくれた。大きな胸が……、中々に苦しいが、それでもやっぱり嬉しい。自分もお母様みたいな胸になれば……そう密かに思案する。
「お、お母様……くるじい……」
「シャゼル様、お嬢様が窒息してしまいます」
私がパタパタと手足を振って抵抗している様を見て、状況を把握したクレーナが私の意図を察したようにそう告げる。はっとした感じの表情になり、ぱっと解放された。
「それよりもどうするのアリス。いくら婚約者とはいえ、他の女性と浮気をしているような殿方に家の可愛い娘を出したくないのだけれど……婚約はどうする?」
問いかけるように母は、唇に指を当てて事実を織り混ぜながら重要なことについて指摘した。婚約はどうする?というのは、破棄する?破棄しない?という意味のものだろう。実際、私は彼にベタ惚れだったこともあったから、母もやはりそう聞いてきたのだ。私が彼に対して、そこまで惚れて居ないのなら、先ず間違いなく即刻婚約破棄をすることだろう。公爵家の位の方が伯爵家の位よりも高いことから、一方的に決めることも出来る。
「……そうですね、私もよく分からないのですけど、今は余り彼の事を思っても、そこまで恥ずかしくなったりしないですね」
これは本当のことで、きっとあの光景を見た衝撃で、私の中では彼に対する大切な何かがすり減って、今もすり減っている状態なのだろう。
「なら、セルワルドに相談して婚約破棄の話を進めるわね。……アリスを泣かせたことを後悔させてあげるわ」
最後の方に物騒な言葉が混じっていたが、私もクレーナも聞かない振りをした。因みに私は涙を流していない。クレーナがあの夜の出来事を話したあとに、流れに流れて、最終的に私がシルフ様に心に大きな傷を付けられて、泣かされたということに話が盛られているそう。とはいえ、彼は浮気をしているのだから相応の報いを受けるのは当然かもしれない。前世の日本でも、二股かけた芸能人とかが叩かれるなんてことは、よくニュースで見ていたし。
不穏な空気が漂う中で、アリスは特にその事を重要には考えて居なかった。
一つだけ言えることは、公爵家の力はとても強力であるということである。
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