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2.結末が幸せとは限らない

本日は後もう一つ話を投稿いたします。

そちらもよろしくお願いします!!




 張り切って、小さめの箱を大事に抱えながら、外に待たせていた馬車へと向かう。馬車は雨に打たれていたが、馬にはカッパのようなものがかけられていて、可哀想にずぶ濡れということは無かった。


「足元にお気をつけ下さい」


 注意換気をしてきたのは、馬車を運転してくれる従者の男性。短期の契約らしく、名前などが分からない。


「ありがとう」


 簡潔にお礼を言いつつ、馬車へと乗り込む。馬車は左右両サイドに椅子があり、それぞれ右側に私が、左側には付き添いのクレーナが座る感じになった。クレーナと乗り込んだあとに少しばかり雑談をしていると、馬車の後ろ側にある入り口が閉じられて、ゆっくりと馬車が動き出した。


 窓から見える景色は、真っ暗な空ではなく、雲に覆われたややグレーの空。窓には水滴が上の方から流れて、窓についている水滴を飲み込みながら下へと落ちていく。町は雨のせいなのかあまり人はおらず、家の明かりのみが静かに火照っていた。


「クレーナ、なんだか雨だと憂鬱になるわね」


「そうですね、雨だとお嬢様はシルフ様と夜のお出かけデートが出来ないですものね」


「そうね、そんな計画はしてないけど!!」


 からかってくるクレーナはお姉ちゃんみたいな感じで私をあやしてくる。この世界では一人娘だったから、クレーナのような歳の近い使用人が居るのはわたしにとっては嬉しい。


「お嬢様、ませてますね」


「いきなりすぎて反応に困るんだけど!?」


 クレーナは首をちょこんと微妙に左側に傾けて、可愛らしい感じに口から溢す。


「だってお嬢様、サプライズでネックレスを送って、それは実は本当に渡したい物じゃなくて、本当に渡したい指輪(・・)を彼の指ににさりげなく填めるだなんて、なんてロマンチックなことをしようとしているんですか」


 サプライズの内容を口に出されて話されたことによって私の顔はタコのように真っ赤に染まっていることだろう。実際にやることを口に出して言われると、なんて恥ずかしいことをしようとしているんだと、悶えてしまいたくなる。そんなことはしないで、心のなかで悶えているのだけど……。


「そう言えば、お嬢様。確か指輪を指に入れるときのセリフは──」


「いやぁ~~~~!!クレーナ何言おうとしてるの!?」


「え?何ってお嬢様が考えて練習していたセリフですよ。日々あんなに顔を赤らめて練習している姿は本当に初な乙女って感じで毎日楽しみに見させて頂きましたよ」


 えぇ……毎日見てたって……クレーナ本当はヤバイ人なんじゃないかしら?少し彼女に対する私のイメージというか理想図というのが下方修正されてしまった。


「そう言えば、他の使用人も見てましたね、皆楽しそうに」


 本当にどうしようか家の使用人は……。なんでこんなにも愛娘みたいに扱われなきゃいけないのかしら?お父様やお母様は兎も角として、使用人がそれってどうなのよ。後で確認する必要があるわね。


 馬車の中では、令嬢と使用人の仲睦まじいお喋りが続いていた。この空間にはアリスとクレーナの二人だけ、馬車を運転する使用人はここの車体の中に居るわけではないので、実質馬と近いようなポジションに鎮座している。


「クレーナ、他にはどんなことしてるのかしら?」


「他にはですか、例えばそうですね。お嬢様が西階段の方を上がっていくときに──」








 そんなこんなで色々と私がしていることに関しての活動報告的な観察結果をまじまじと教えられた。心底恥ずかしいが、親二人がああなので無理もないことだろう。お陰でサプライズが成功するのかという不安は拭えて、その点に関しては、話をしてくれたクレーナにかんしゃをしている。只、話の内容については後程ゆっくりと話す必要がありそうだけど。


 アリスとクレーナが話をしていると、不意に馬車の速度が落ちることが体感的に二人に感じられた。体が前方に引っ張られる感覚を受けて、窓の外に目を向ける。どうやらシルフの屋敷に到着したらしい。窓の外にはやはり雨が無数の線になって地に向けて降っているのが分かる。


「さ、行きましょ、クレーナ」


「はい、お嬢様」


 馬車の扉が開いて、私が先ず降り、それに続くようにしてクレーナも馬車から下車した。降りた先では、馬車を運転していた使用人が傘を差しており、軽く会釈をしながらお礼の言葉を述べる。


 さぁ、ここからが本番よ!!絶対に彼にサプライズして、驚いて貰って、喜んで貰うんだから!!


 彼の驚く顔に胸を弾ませて、誕生日パーティーをしている屋敷の中に少し早歩きで入った。気持ちが高ぶって、早く行きたいという本能が自然と私の歩みを加速させる。


「すいません、アリス・シスタリアです。シルフ様の誕生日に出席させて頂きたいのですが……」


「勿論、お越し頂きありがとうございます。アリス様が来てくれるとは、きっとシルフ様も喜ぶことでしょう。ささっ、どうぞお入り下さい」


 屋敷の入り口の前に居た彼の従者の男性は、私の名前を聞いたとたんに笑顔になり、直ぐに私を通してくれた。シスタリア公爵家、この家名がある私は何処の貴族の方でも来てもらったら嬉しい存在。シスタリア公爵家との親交があれば、それだけで、他の貴族と差をつけられるのだ。


 加えて私はシルフの婚約者。容姿の方も前世なんかよりしっかりしていて、自慢になるが、可愛い方だ。シルフの家では私を無下になどするはずがない。


「ありがとう、クレーナ行きましょう」


「はい、お嬢様」


 会場には、多くの貴族たちが参列しており、およそ百人ほどの貴族たちがこのシルフの誕生日会に参列していた。中には、私の知り合いでもある令嬢も多く居て、軽く挨拶をして回っていた。


「ねえ、クレーナ。シルフ様は何処に居るのかしら?」


「確かに、見当たりませんね。他の方に聞いてみます?」


 張り切ったように聞いてくる。こんなに真剣なトーンで言われたら任せたくなる。私は彼女の厚意に甘え、微笑みながらコクりと顎を引いて了承した。


「お願い出来るかしら?」


「お任せ下さい」


 意気揚々にそう宣言をする彼女はとても頼もしい。とはいえ、私だけ何もしないというのはお門違いだし、クレーナがこの家の使用人に色々と聞き回りに行った後で、私は私で、友人の貴族の人達に聞いて回った。するとどうやら、此処には、我が国の隣の帝国の皇女がやって来ているらしい。我が国と隣の国とは最近余り関係が良好とは言い難い。そんな国にわざわざ、それも国の皇女が来るなんて、なにかしらあるのかも。そう思い、皇女とシルフが向かったらしい個室を教えてもらい、そちらに向かった。


 部屋の扉は数センチ程開いており、中から光が漏れている。一体何の話をしているのか、気が付かれないようにそっと覗き込む。








 ……皇女とシルフは熱い接吻を交わしていた。


















またご覧になってくれるとうれしいです!!

(*´∇`*)

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