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15.貴方と私の決着をつけましょう1

本日は三本出します。






 現在、私達は囲まれている。

何に囲まれているかというと、端的に言えば多くの人に囲まれている。別に何か公共的に不味いことをしたのではなく、あまねく知られている常識を逸したこともしていない。

 


 ──私は、ただ戦闘中に敵に囲まれている真っ最中なのだから。





 どうしてこんなことになったか?なんてことは説明するまでもない。怪しい動きを見せる武装集団が危険だから駆除しに来たのだ……隣の領に。

 そして、歓迎はされるはずもなく、時軍の何倍もいる敵に完全に包囲されてしまった。これまでの悪しき行いを懺悔したりする暇もなく、気が抜けないような状態だ。


 万に一つとして、私は負けるなどとは思っていない。相手は自軍よりも脆弱な兵士達の集まりでしかない。こっちは経験が物凄い強者がズラリと揃っている。

 彼らの冴えた目がギラリと光っているからなお心強い。

 凄惨な状況になりそうなこの、にらみ合いを何時辞めるのかと思いつつも、声は出さずに、静かにその光景を眺めていた。




 ──馬車の中から。



「悪趣味ですねぇ?お嬢様ぁ~」


 なんとも失敬なことを、そもそもこの案を出したのはブラッドではないか!

 私は思う、ブラッドは貴族家の使用人になったとしても崩壊した感性は治らないのだと。

 心底深い溜め息をつくと、ブラッドが眉を潜めてジト目でこちらを軽く睨んでくる。いや、貴方が考えたことだから!


「ほら、ブラッドも外に出て手伝ってきてよ」


「はぁ?なんで俺が……大体この数相手に勝てると思うのか?」


「貴方の提案でしょ。責任とって早く終わらせてきて」


「へいへい、手筈通りに進めてやるよ」


 ガチャリと馬車の扉を開いて、ブラッドはふてぶてしく出ていった。

 クレーナも外に居て、中には私と使用人達、正直申し訳ない気分だが、いずれにしてもここにいる敵とは衝突するのは逃れられないと分かっていたので、ここで決めたほうが後々良いと判断した。

 だからと言って、敵地に堂々と派手に突っ込むなんてことを考えていた訳ではない。



 ──罠はちゃんと用意している。




「おい、諦めて降伏しろ。こちら側には帝国の兵が付いている。そちらには明らかに勝ち目はない」


「そうは言われましても、既に引き返せない所まで来てしまっているので、ここは譲れません」


「ふん、気の強い女だ。まあいい、皆殺しにしろ、一人辺り三人以上で掛かれ!」


 外ではそんなやり取りがされていた。馬車の窓ガラス越しに鈍く聞こえてくる声はそんな物騒な会話で、双方が既に剣を構えている。

 それから、ブラッドが岩影に隠れて、闇討ちしようとしている。最低な……いや、作戦の一つだけど。




 作戦とは、ある種の騙し討ちそのままだ。

 囲まれているものの、こちらには機動力に優れたクレーナとブラッドが居る。

 あちら側にいる兵士は完全武装の重騎士ばかり、正攻法でやれば確実にジリ貧になるような敵だからこそ、いろいろと知恵を働かせている。



 まず、囲まれている、私の馬車を中心とした輪形陣で、相手に対して背中をとられないようにフォローをし合う。

 次に、ブラッドが魔法を使って、味方に対して目を良くする魔法とスピードを上げる魔法をかけて貰う。それから目立つ魔法で気をそらして貰うことも任せている。

 時期を見計らって、私の固有魔法である、小麦粉を精製する魔法で辺り一面を真っ白にする。

 その後は至極簡単なこと。

 視界を奪われた敵に対して、一方的に殴りを入れて、馬車はそのまま正面に突撃する。

 クレーナ、ブラッドと数名の仲間を連れて、本陣まで一気に距離を詰める。で、残りの人には足止め(殲滅)をしてもらって、終わったら合流をする。

 

 これが作戦の一連の流れである。







「フル……ープ……リティ……ンハンス……、エクスプロージョン!」


 

 ボソボソと囁くような声で魔法を唱えたあとに、いきなり大きな声で爆散魔法を唱えたので、敵の目は、岩影から勢いよく立ち上がったブラッドに集中した。 

 彼の唱えた魔法は、フルスコープ、アジリティエンハンス、それからエクスプロージョン。実に三つの魔法を唱えていた。

 


 流石だわ、これで私の小麦粉系である最強魔法?フラウアースモークを使うことが出来る!


「フラウアースモーク!」


 そう唱えると、たちまち王都で使ったら魔法よりも明らかに規模が数倍はある小麦粉が散布され、真っ白で何も見えなくなった……本来ならね。


「よし、お嬢様とブラッドが作ってくれた機会を生かしなさい。総員、突撃!!」


「「「「「ウオオォォォオォォ!!!!!」」」」



 

 そうして、混乱に陥った相手方の兵士は面白いくらいにすんなり倒れていき、馬車に乗った私は、そのまま正面から脱出した。

 追いかけてきた少数の残党は、クレーナが処理するまでもなく、ブラッドが楽しそうに始末していた。


 さあ、いよいよシルフ様の居るであろう本陣。

 多勢に無勢だが、策を弄して切り開いて見せる。



 私達の未来は、私達で決めるのだから。






本日は完結に伴ってご報告がありますので、最後までよろしくお願いします。

二本目は十五時、三本目は十九時に出します。

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