六十八話
何度目の手紙だろうか。
國からの便りを運ぶべくやってきた荷車が、烈刀士と雑士達に囲まれている。手紙を運んでいる父親と息子が、幌が張られた荷車の中から忙しそうに手紙を出しては宛名を呼んで手際よく渡していた。
サンは砦から下りてくると、人混みの中を掻き分けて荷車を目指した。それにしても、すごい活気だ。だけど、これは嫌ではない。これは守るべき大切な人達からの手紙だからだ。それは、妖魔や鬼との戦いで緊張し疲弊した烈刀士の魂を癒す不思議な力がある。
「んなぁ、聞いたか。今年の新人達は大したことないそうだで」
人混みを掻き分けて進んでいると、隣にいた烈刀士が気さくに声をかけてきた。腕章があるところを見ると、俺と同じ班長らしい。烈刀士になってから二年は軽く経つのに、この人と話すのは初めてだった。
「そうなのか。俺にもようやく後輩ができるんだな」
「そういや、龍人様の班が一番若いんだっけか。ありゃー、そんな感じは全然せんかっただよ。あんたら鬼との遭遇率も高いし、誰も欠けとらん優秀な班だべな」
サンは肩をすくめて見せながら、便り屋の親子の元にたどり着くと、自分の名前やライガの名前を伝えた。ほどなくして息子が手紙を投げ渡してきた。手紙は、ライガに一通、カゲツに一通、鬼火に二通、俺に二通だった。二通のうち一つはロジウスおじさん達からだ。もう一通は道場からで、分厚さから見てカゲツ宛のものも一緒になっているに違いない。
「ガマドウってのは、ねぇか?」
先ほど話しかけてきた班長が便り屋の息子にそう訊いて、息子は手を上げて応えると忙しそうに中を探し始める。
「ガマドウって珍しい響きだ」
サンの言葉に、ガマドウははぐらかすように笑いながら首を傾げてみせる。
「巖亀の田舎の村出身でさ。知らないだろう。あんたは無色だろう? サンなんて珍しいからな」ガマドウはそう言って便り屋の息子の方を見る。「にいちゃんはなんていうんだい」
「僕はタヨリですよ」
ガマドウが、がらがらとした笑いを上げた。
「おめも変わった名前だな。そんな若いのに、俺達のためにわざわざ、ありがとうなぁ」
タヨリは一通の手紙を手にとって、顔を顰めながら荷台から降りてきた。
「いえ、僕達を護ってくれているあなた方にも故郷がある。その故郷とは繋がっていないと。じゃないと、寂しいじゃないですか」息子の揚々とした言葉に、ガマドウは目頭を赤くしている。タヨリは一通の手紙を手に取ると、目を凝らして荷台から出てきた。「このガマって宛名の物が巖亀ノ國の方から来ているんですけど」
タヨリが差し出した手紙をみて、ガマドウは手紙を掲げて喜んで見せた。
「これこれ、間違いねぇ。娘は俺のこと、蛙みてぇな顔してっからガマって呼んでくるんで」
「愛されてますね」
タヨリは、火季の強い陽射しをものともしない爽やかな笑みを見せた。
「あんたは、娘がいるのに烈刀士になったのか?」
サンの言葉にガマドウは笑うが、目には暗いものが落ちていた。
「俺にできることはこれくらいだかんな」
タヨリがガマドウの肩をぽんぽんと叩いた。
「立派なお父さんを持てて、娘さんは鼻が高いですね」
「そうだと良いでなぁ」ガマドウの笑いながら言う声音には、薄い喜びと否定の色が混ざっているようだった。だが、それも一瞬、ガマドウはケロッとした顔でタヨリを見上げると、「お前さんこそ若いのになんでこんな辺境におるださ?」
タヨリは肩をすくめて首を傾げてみせるが、サンとガマドウの答えを待つ顔をみて喉の奥で苦笑を洩らした。
「僕は、小さい頃にある少年と会ったのが理由なんですよ」サンとガマドウを見てからタヨリは再び爽やかな笑みを見せた。「その少年は必死に生きようとしてて、僕から水を奪っていったけど、僕を殺そうとはしなかった。でも、子供がそんなことをしなきゃ生きれない世の中って嫌だなって。少年の苦しみも、その苦しみを与える人も、それぞれに理由があって葛藤がある。それらの想いがちゃんと伝わっていないから、世の中がぐちゃぐちゃになるんじゃないかなって。それで、僕は便り屋の息子で、手紙で人の想いと想いの架け橋になれるんじゃないかなって。それで、父さんにわがまま言って、これをやらせて貰っているわけです」
サンとガマドウの感嘆に濡れそうな顔に見つめられて、タヨリは照れるように小さく微笑む。
「なんで烈刀士の便りかっていうと、それは、鬼が出たって言う話が噂が広まり始めて、そこから烈刀士に興味を持ったんです。それで、息子が烈刀士になったお婆さんと会ったんです。でも、その人は十年近く連絡を取れないでいた。だから、僕が砦に手紙を届けました。でも、息子さんには届けられなかった」
「そいつぁ、つまり」
「そうです。ヴィアドラを護っている人達が、大切な人達を守ってるのに、その人達と繋がれていないなんて、おかしいです。だから、僕はこうして皆さんと大切な人への架け橋になろうって決めたんです」
タヨリの目は今にも溶け出しそうなほどに熱を湛えて口を歪ませていた。ガマドウがタヨリの肩をがっしりと掴み、一つ揺さぶった。
「あんたの親父さんは、誇らしいだろうよ」
タヨリは「怒られてばっかですよ」と戯けて、人々の架け橋へとなるべく戻っていった。
あの時、奴隷の鉱山から逃げて最初に会った知らない世界の少年が、今こうして同じ北の地でそれぞれの信念を胸に戦っているんだと考えて、サンは目頭にたまろうとする熱いものを抑えた。
「なんだ、おめも家族からの手紙か?」
サンはガマドウを肩で突くと意地悪い笑みを浮かべる。
「あんたこそ、玩具もらった子供みたいにはしゃいでただろ。娘さんからなんだろう?」
「あぁ」ガマドウが手紙に目を走らせながら、次第に涙ぐんでいく。サンはガマドウの肩にそっと手を添える。
「大丈夫か……?」
「大丈夫なわけが、あるかってんだ」ガマドウは身を縮めむと、僅かに震える。そして、爆発でもするかのように両手を空に広げた。「娘に、息子が産まれた! 俺の孫だ! 初孫が産まれたぞぉ!」
ガマドウの予想だにしない手の動きに鼻を捉えられ、鼻血を流すサンのことを気にする様子もなくガマドウは跳んで喜ぶと、一言「救護室に行ぐんだぞ!」と行って颯爽と砦の中に手紙を掲げながら消えていった。
その日は朝だというのに、本格的な火季を彷彿させる生温かく重みを感じる風が吹いていた。
梯子守の横を通り過ぎて、鉄製の梯子を滑り降りていく。戦闘区域である妖魔の森側、すなわち北側から砦に上がる方法はこの梯子しかない。負傷者を引き上げるための滑車はあるが、頻繁に使うようなものではないのだ。
妖魔の森は、相も変わらず季節に関係なく鬱蒼としている。サンの班は見慣れた木の根を跨いで森の中へと歩いていく。すぐ先には窪地があるが、目を瞑っていてもその先の木の根を跨げるだろう。七日間という一週間のうち、一日だけの休みを除いて毎日歩いていればそうなるのは必然だ。
普段のように何気無く踏み出す足が、しかし止まる。横を見ればカゲツも眉間を強張らせて森の奥を見ていた。先頭を歩く二人の様子を見たライガと鬼火が素早く腰を落とし、それぞれが周囲に体を向けて警戒に入った。
「カゲツ」
「なんか変だね」
ライガが舌打ちをした。「なにも感じねぇぞ」
サンは凝らしていた目を閉じて、もはや石ころを拾うかのようにいつでも掴めるようになった気を周囲に張り巡らせて状況を探ってみる。風の流れを装って気を流すのだ。そうでなければ、鋭い感性を持つ生き物に気取られる。
「大丈夫、今は近くにいない。だけど、今日はなにか出そうだな」
「それはたまんねぇな」
ライガの鼻で笑いながらの挑戦的な言葉に、鬼火がいつものため息を漏らした。
「いつも通り、初動はライガを陽動に見せかける作戦で頼む。鬼火は援護で」
サンの言葉に三人は頷いて、警戒を怠らずに森の中を進み始めた。数時間森を進み始めた頃、森の奥の方で何か騒がしさを感じて、一行は耳を立てながら静かに腰を落とす。
そして聞こえてくる、細く甲高い金属の笛の音。
鬼だ。
サン率いる通称〝龍人班〟は音を立てずに互いに瞠いた目を交わし合う。その目に映るのは驚きと覚悟だった。
急がないと。烈刀士の笛の音は、鬼との遭遇、つまり危険信号であり、救援を求む声なのだ。どこかの班が窮地に陥っている。急がないと。
俺の目から覚悟を見て取ったのか、合図も出さずに木の根から飛び出して森を駆けているというのに、三人はしっかりと後ろをついてきてくれている。
三人の仲間達。その存在は壁にもたれかかるよりも確かにあり、感じることができる。仲間の存在が湧き上がる力の光を更に強くさせていく。力は気であり、気は剣気になり体を活性化させて獣よりも速く森を駆ける。
瞬きの如く過ぎ去っていく樹々の合間から気配を感じた。
九と三と四。九は人の大きさ、三は鬼、四は餓鬼だろう。
その半端な人の数に、サンは眉を曲げた。烈刀士は班で任に就くが、それは四人で一つの班だからだ。例外で新人烈刀士の班には、一人だけ先輩がつく。俺達の時は明水だった。だけど、今は新人はいない。それなのに、人は九人いる。
モルゲンレーテ星官か。
樹々を抜けて開けた場所に飛び出し、眼前に広がる状況を見て、サンは苛立ちを覚えて鼻に皺を寄せる。
鬼が三体、ガマドウの班が対峙して抑え込んでいる。サンはライガの名前を叫ぼうとするが、それよりも早くライガが横を通り過ぎて鬼に斬りかかる。最初の陽動、そして俺とカゲツが横から剣気の刃を飛ばして鬼を挟み撃ちにする。
だが、鬼も馬鹿ではない。ライガの攻撃が陽動だと察したのだろう。ライガを軽くいなすと、挟むように飛んできた剣気の刃を四本の腕で弾いて見せた。鬼の腕は、筋肉が隆起して黒い鏡のように光沢を放ち、岩を容易く切断できる剣気の刃をものともしないほどに硬化していた。
鬼は四本の内の二本の腕で、巧みに槍を回しながら跳躍しようと身を屈める。
次の瞬間、青白い雷を纏った刀が鬼の顔を貫いて、身を屈めた鬼はそのまま地面に崩れ落ちた。
「後ろがお留守だぜ鬼さんよ」
そう、最初のライガは陽動だが、俺達の攻撃も陽動なのだ。三段階目のライガの攻撃こそが本命の一撃。
一体は仕留めた。サンは汗を流して目をギラつかせているガマドウの横で刀を構えると、烈刀士の後ろで右往左往する五人の人間を睨んだ。黒い金属を少しばかり纏わせた異国風の軍服の者達、バルダス帝国兵を。
「ガマドウ、なんであいつらがいるんだ!」
サンの怒鳴るような声に、しかしガマドウは的外れな答えを返す。
「旗印がおるだ! んだが消えた!」
旗印……。サンはさっと周囲に目を走らせる。四体の餓鬼を率いる一体の鬼をカゲツ達が相手取る中で鬼を探す。鬼は三体、そのうちの一体は仕留めた。あと二体いるはずだが、一体がいない。その内の一体が、旗印だというのか。
旗印とは、烈刀士でいうところの班長だ。光沢をもつ銀色の動物の骨をびっしりと繋ぎ合わせた鎧を纏う鬼。対峙したことは一度もない。見たことがあるのは、儀式の時にシキという人物の記憶を体験した中で見たことがあるだけだ。先輩の烈刀士達の中で、旗印を知っている者は少ない。遭遇率が低いのもあるが、それ以上の理由がある。旗印と戦い、生き残るのが難しいからだ。
サンは背筋がおぞましい寒気に逆撫でされて、溢れる恐怖を殺そうと啀む。その嫌でも感じる気配がする方に向けたくない首を回す。それは帝国兵達がいる後方だった。
銀色の骨鎧を纏い、人の頭蓋骨を繋ぎ合わせた首飾りをつけた鬼が、漆黒の顔に浮かばせる黄金の双眸に無慈悲な鉄壁の色を湛え、己の獲物を大きく振りかぶっていた。鋒にいくにつれて先細り鋭さを増すその姿は、死の闇を垂らす欠けた月のように弧を描いている。あれは、人という雑草を刈る鎌そのものだ。
鬼の振り上げた大鎌が頂点で止まり、鬼の捻った体が漲る力を張り詰めさせる。そして大鎌が空気すら感じさせないほどに宙を滑り落ちる。
俺の横で、言葉にならない呻きから雄叫びをあげる声が聞こえた。それが飛び出してゆく。大鎌と、恐れ慄き死んだも同然の五つの肉塊との間に、ガマドウが飛び込んでゆく。
馬鹿、死んでしまう。あんたには娘さんと孫のために生きなきゃならないだろう。
帝国兵を守ろうと鬼へと飛びかかる後ろ姿は、肩が強張り、腰も高く、振りかぶりも浅い。武器を持った農民のようだった。
ガマドウの刀、体、五人のバルダス帝国兵達を、大鎌がするりと水を薙ぐかのように横に走り、再び頂点に止まる。漆黒の中に浮かぶ黄金の双眸は、すでに目の前の赤く濡れた肉塊を通り過ぎ、次なる獲物、俺を見ていた。
俺の背後で行われているライガ達は無事だろうか。地面を穿ち震え、樹々が裂かれて燃え上がる熾烈な戦いの音と匂いに振り返りたくても、旗印の黄金の双眸に握られた俺の命危険だと叫び振り返ろうとする俺の心を抑え込む。
目の端に入るガマドウの両断された姿を認識していくと、そんな恐怖も無くなっていった。数日前、娘からの手紙を貰ってあんなにはしゃいでいた揚々とした笑顔。初孫が産まれ、娘との関係に何かを匂わせていた暗い目に宿る希望の光。ガマドウは、これからだったというのに。
大鎌を高々と肩に担ぐように構える鬼に沸き上がる憎しみをサンは鷲掴んだ。そして噴き上がるほどに身を焦がす力に身を震わせる。
〝殺す〟
その自分の意思に混ざる、先代の龍人達の怨嗟と憎悪の黒い炎が俺を包み込んでいく。
ガマドウの姿を目に収め、仇はとってやると心に刻む。だが、黒い炎の中に疼く光を感じて鷲掴みにしていた力を緩めた。
俺は、憎しみのために力を振るうんじゃない。守りきれなかった先代達、戦神、それらの守りたかったという想いを引き継いだんだ。そして俺が守ると決意したじゃないか。ガマドウだって、恐怖に震えながら、救う必要もないはずの帝国兵を庇い斬られたのだ。俺が憎しみだけで力を振るったら、その純粋な想いを汚すことになる。
サンは力を込めすぎて震えていた手の力を抜いて深呼吸をする。
聞き慣れないガラガラとした笑い声に顔をあげると、大鎌を構えた旗印の鬼が笑っていいた。嘲りの目で俺を見下ろしながら。
その人間味溢れる姿は、シキの記憶の中で見た鬼と同じだった。こいつらに、心はあるのだろうか?
自分が戦いのことを忘れていたのに気づいたのは、旗印がこちらに跳躍してきたときだった。大鎌を二刀流で受け流すが、いなしきれずに吹っ飛ばされて思わず苦笑にもならない苦いものを顔に浮かべた。体勢を立て直すと、さっと顔を上げて鬼を見る。鬼の口が開き、思いもしなかったことにサンは目を丸くした。
「アル=アシャルは土塊にしてくれるわ。その脆い心と共に散れ」
鬼の言葉に、またもや戦いを忘れるところだった。再び接近してきて空気を斬って襲いかかってくる大鎌を躱しながら、サンは己の意思に水を打ちかける。
こいつらが人間のようだからってなんだ。こいつに負ければ、何も守れないのだ。
サンは心に鍵を差し込み解放する。瞬時に体を覆う白き光の焔が、狩衣と大鎧を合わせたような装束を象り、サンの白く変容した皮膚と顔に鮮血の隈取りが浮き上がると、眼は鮮やかな翡翠色に染まった。
龍人としての真価を発揮したその姿に、鬼は旗印といえども恐れ慄いたのか、飛びすさると硝子のように無表情な目で龍人サンを見る。
「アル=アシャルの狂気、復活か」
鬼はそう言うと、空気が震えるほどの咆哮を轟かせる。ライガ達が戦っている方からも同じ咆哮が返ってきた。
鬼はサンに不敵な笑みを浮かべながらも、何か悔しそうな色を見せてから森の奥へと走り始める。ライガ達と戦っていた鬼が、一体の餓鬼を連れてその後を追って逃げて行く。
ライガの怒声と共に、閃光と雷鳴が鬼を追撃せんと光の軌跡を描く。だが、鬼はライガの闘気である雷の攻撃が来ることを予想していたのか、振り向くと同時についてきていた餓鬼を蹴り上げて盾にすると、鬱蒼とした森の中へと消えて行った。
雷鳴の後に残ったのは、ライガ達の荒い吐息だけだった。サンは龍人の羽衣を解くと、ライガ達が無事な事を確認して胸をなでおろした。結局、犠牲になったのはガマドウだけだった。なんの恩義もない、ヴィアドラを脅かそうとしているバルダス帝国兵を守ろうとした、一人の真のモノノフだけが死んだのだ。
サンはやりきれない歯痒い息を長く吐き捨てるも、軽くならない胸のうちに首を振った。
それでも、ガマドウは俺に大切なことを思い出させてくれたのだ。憎しみで力を振るわないこと、先人達の想いを引き継いだことを思い出させてくれた。
「ガマドウが、死んでしまった」
サンのぽつりと発した言葉に、ガマドウの班員達が口を強張らせ、怒りを歯の間から漏らして目を拭う。
ガマドウの両断された体から溢れる血が意思を持ったかのように脈動して、一つの脇差を創り出していく。あれは烈刀士の儀式の時に体と一体になった脇差だ。死んだ烈刀士の信念が宿る魂の刃であり、遺してゆく記憶。ガマドウの班員が形見のそれを震える手で拾い、胸に抱いた。
サンは他の者達と同じように黙祷を捧げてから、憎い鬼達が逃げて行った方向へと目を向けた。鬼に心はあるのだろうか。それならば、俺達を殺すことに何を感じているのだろうか。アルアシャルとはなんだ。俺をアルアシャルの狂気と呼んだ。
サンは目頭を押さえて顔をあげると、ため息をついた。
わからない。わからないことと怒りが増えていく。




