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Belief of Soul〜愛・犠の刀〜  作者: 彗暉
第七章 動き出す者達
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二十六話

 ヴィアドラの最北部。モノノフ達の守る石造りの堅牢な砦には浅くない雪が積もっていた。壱から肆の砦まで延々と繋がっている壁の回廊にも雪が積もっている。目の前に広がる白く染まった平原と、遥か先にも関わらずくっきりと見える白い山脈の数々が、氷土月の美しさと残酷さをもって青空の下に広がっていた。

 烈刀士が立つ壁の回廊は、西の山脈にある肆の砦から、東の海岸の壱の砦まで延びており、丸一日歩いても辿り着けない距離がある。そしてこれは南に広がるヴィアドラを護る防御壁として数千年も存在していた。

 防御壁の狭間から北を見張る一人の烈刀士は、積もった雪さながら静かに見張りを続けていた。その目は針に糸を通すかのような集中を見せていたが、突如驚愕に瞠いた。

 烈刀士は地面に設置されていた合図用の花火に向かって指をさす。その指から火が飛び出し導火線に火を点けた。

 花火が空に上がり、音と光が炸裂する。だが一つではなかった。回廊の続く東側にも西側にも同じように花火が上がっている。他の見張りの者達の物だ。花火の色は赤、音は強烈な破裂音。緊急事態を表すものだった。

 烈刀士は自分の将がいる肆の砦の方を見やる。篝火を持って報告へ走る仲間が間遠に見えた。同時に砦の方から警鐘の音が聞こえてくる。そして背後からも鐘が聞こえてきて、烈刀士は驚いて振り返る。西側に小さく見える参の砦からも鐘が鳴っているのだ。真っ白な平原と山脈が広がる北の地に不気味な警鐘の音が響き、重ねるように地鳴りが聞こえてきた。烈刀士は北側の平原を、地鳴りの正体である侵略者達の数を見て刀を抜いた。手が震えていることに本人も気づいていない。

 白い平原は雪が雪崩のように舞い上がりほとんど何も見えない。唯一見えたのは、幾千もの煌々とした金色の目をもつ黒い影たちだった。

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