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もうすぐ

こうして、時間が過ぎていく。

「今日のお稽古、覚えているでしょうね?」

「うん」

「遅れないようにしなさいよ。行ってきます」

「いってらっしゃい」

お母さんはずるい。だって行ってきますに返事がある。

さぼりたいけど、先生は好きなんだ。ただ、押し付けられている感じがとても苦手なだけ。

女の子らしく、なんて言って。もう受験も考えなくちゃいけないのに、毎日毎日習い事。

「練習してから行かなくちゃ」

お母さんは聞いてくれないとわかっていて、来年の誕生日に贈る曲を考える。

人形の夢と目覚め、なんてどうだろう?かわいいケーキを作って、プレゼントを用意して。ご飯は何がいいかな。お寿司ケーキとか、お花みたいに華やかにして。

「曲は、いいか」

きっと、ご飯とプレゼントのほうがよろこんでくれるよね。


お昼ご飯は適当に。冷凍していたご飯をあたためて、鶏がらスープの素をかけてお湯を入れる。

午後は珍しく予定がないのでお勉強をしよう。夏休みはあと一週間。

宿題はもう終わっているけれど、あと一年半しか受験までにない。

どこを受けるかなんて決まっていないけれど、きっとお勉強は大事。

私の選択肢を増やして、大人になったら育ててくれた恩返しをお母さんとおばあちゃんに。

二人が大切だよって大好きだよって伝えてもきっとあしらわれるから、少しでも楽しんでもらえるように旅行に連れて行ったり、おいしいものを食べてもらったり。楽しみ、だなぁ。


手元の暗さと文字の見にくさで時間経過に気づいた。

休憩と水やりと思って外に出る。夕方。

ずいぶんと涼しくなってきた。風が昇っていく。

太陽が消えていく。あいまいな紫が朱と群青に挟まれて居心地が悪そうだ。

「あ」

一番星。夜の先導者、なのかな。

わたしは、置いて行かれたみたいと思うけれど。

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