はじめ
みっつめ
休みだ、と前日に言われても課外は全学年にある。どうせならば、課外の終了に終業式をすればよいのだ。
大学へ行くからと負荷をかけられて、そんな期待を背負えるような人間じゃない。
自らの呼吸を阻害する。こんなことならば、いっそ質量のある期待で押しつぶされて消えてしまいたい。
いつものように話は流れていく。置き去りにされていることを理解しながらも、思考が定まらない。
少しだけ進んでしまっている白い文字を目だけで追って、白紙を埋める。
次も同じ科目だっけ、確か。鐘の音でざわめきが広がって、白地を埋めきったことに安堵する。
「ねー、これわかんなかった。わかる?」
「ちょっとまってねー」
さっき解いた問題。解説まで先生がしていたのに何でわからないんだ。飲み込んで笑う。
この式を変数としてみて、缶詰だよ缶詰。あー、こう?そう、でそのまま範囲を変えて。範囲?計算の範囲。こうやってやるやつ。おっけー理解!そ?よかった。あーあ、なんてくだんない。
「志望校、どこだっけ?」
「来週模試じゃん、どうしよ」
みんなみんな、黙って。ふっと息を吐いて立ち上がる。
「どこ行くの?」
ほっとけ。うるさい。
「んー?ちょっとお花摘み」
じゃ、と手を振った。教室から不自然じゃない程度に速足で抜け出す。
もう少し、あそこにいたら、彼女にあたってしまったかもしれない。
なんとなく制御できていない感情に恐怖する。飲み込まれてしまったら、きっと私ではなくなってしまう。
トイレ、には向かわずに少し外へ出る。あと7分はある。
ドアを開けて、全身に夏らしい暑さを感じる。不愉快、不快。でもそれでいい。
背を預けてしゃがみ込む。どうして、私はこうなのか。視界の端がゆがんで熱が集まる。
ほほを弱くたたき、いつもの私になる。感じた涼しさに外以上の不快感を覚えた。
本当に、どうして私はこうなのか。