うく
ふたつめ
長期休みが一番嫌いだ。学校がないならば、とたくさんの面倒がある。
「二年生はこの夏にオープンキャンパスに参加するのも」
「夏休みの過ごし方ですが、HRでプリントを配布してください」
「水難事故には気を付けてくださいね。先生の連絡先は」
何年も聞き続けている話。知っている話しかなく大して重要ではない。
水難事故、というと溺死。溺れるとどうしても体内のガスで膨張する。人間風船、水風船。
浮くのだったか。おもりをつけて落ちるのが正しいのか、コンクリートに詰められて流れる時はどうなるのだろう。コンクリートに詰めても中央は人間ならば、浮いてしまうのかもしれないな。
そう、高いところから落下し、海面水面に叩きつけられての死亡は水難事故なのだろうか。
直接的な死因が水による窒息の場合が水難事故なのか、水の中から死んだのが見つかれば水難事故なのか。
「いつもどおり、か」
返却された通知表はいつものように体育が3、英語と物理が4で他は5。大体4.6か。
どうだったと聞いてくる声にいつも通りだよと返す。まあ、そんなものか。
夏季休業、と銘打っての休みだがどうせ休ませてなんかくれない。宿題は小学校のように感想文なんて面倒なものがないだけマシだが、自由研究もどきがなくなっているのは少し残念だ。
去年、一年生の時の夏休みはいったい何をしたのか。今年は課外とそのほかで夏を感じないまま終わりそうだ。
「課外いくー?」
「もっちろーん」
当然だろうという気持ちはほっといて、君はいいねなんて醜い声は捨て置いて。
「えーやっだ、まじめぇ」
うるっさい。あなたに関係ないでしょ?
「なんだかんだ言って行くんでしょ」
「そうなんだけどねっ」
じゃ、ばいばい。なんてこっちの気も知らないで。ああ、死にたいな。
話しながら片付けていたものを眺めて、ひっくり返して無に帰したら面白い。
一学期最後だななんて、感じてもいない感傷を口に出して出席簿を閉じる。
あとはこれを提出して、終わり。何か楽しいことが起きないものか。